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『文豪少年!』で開く“新しい扉” 明日のスターを目指す少年忍者の姿と重なるもの

リアルサウンド

21/3/26(金) 17:00

 ジャニーズJr.の人気ユニット 少年忍者が、文豪たちの傑作小説を現代的な視点でドラマ化した『WOWOWオリジナルドラマ 文豪少年!~ジャニーズJr.で名作を読み解いた~』(以下、『文豪少年!』)がスタートした。

 すでに、3月21日に第1話「クモの糸」がオンエアされたが、文豪作品と聞くと「難しいのでは?」「作品を知らないと楽しめないのでは?」と身構える必要は全くないことがわかった。

 『文豪少年!』は原作の小説をただ単に実写ドラマ化するのではなく、「現代的な視点」でドラマ化したというのがポイントなのだ。ドラマは、不思議なブックカフェに少年たちが迷い込むところから始まる。彼らがドアを開けた瞬間から「すでに読むべき1冊が決まっている」と説明する、ミステリアスなマスターを演じるのはイッセー尾形だ。

 彼らが抱える悩みや葛藤を踏まえて読むと、文豪の小説がオリジナルのストーリーとして紡がれていくという。どんな物語が繰り広げられるのか、それはマスターさえもわからない。

 例えば、原作の『蜘蛛の糸』のあらすじは、地獄に落ちた悪党・カンダタが、地獄の底で蜘蛛の糸を掴んでよじ登る。それは、過去に1匹の蜘蛛を救ったことから、お釈迦様が垂らした一本の蜘蛛の糸。これで地獄から這い出ることができる、と必死で登るカンダタ。だが、彼の足元には後から後から多くの罪人が続いてくるではないか。このままでは糸が切れてしまうと焦ったカンダタは「これは俺の糸だ! 下りろ!」と喚くのだが、その瞬間に蜘蛛の糸は切れて、再び地獄へと真っ逆さまに落ちてしまう……というお話。

 一方、「クモの糸」では蜘蛛は出てこない。代わりに“クモ“という名の可愛らしい猫が登場する。主人公の名前もカンダタではなく、神田(黒田光輝)。そして神田は今、地獄のような少年刑務所の中にいる。そんな神田も過去に一度だけ猫を助けたことがあった。そこからクモの糸=ロープをつたって塀の外へと出られることになるのだが、神田もまたカンダタと同じように、その糸を自分だけのものだと優しさを失ってしまう。

 たとえ悪いことを繰り返した人でも、何か1つでもいい行ないをしていれば、地獄から救われるチャンスがある。しかし、そのチャンスも自分の欲だけが先行してしまっては、途中で切れてしまうということ。文豪作品の本質的なテーマを抽出し、さらに現代を生きる私たちにも身近なエピソードとして語りかけるのが、この『文豪少年!』最大の魅力。

 また、第2話「メロスを待つ男」は、メロスの代わりに人質になった親友・セリヌンティウス(ヴァサイェガ渉)が主人公になる。『走れメロス』では、命をかけて親友のもとへと走るメロスの心境が描かれているが、本作では太陽のようにいつも光り輝くメロスに対して、月のように太陽の光を受けてようやく存在を見つけてもらえるセリヌンティウスの本音が語られる。

 どんなに努力をしても、歴史に名を残す人は一握り。実際にメロスの名前は誰もが知っているけれど、その人質となって物語を成立させたセリヌンティウスの名前がすぐに出てくる人は少ない。そんなふうに原作とはまた違った角度から、物語にスポットライトを当てていくのも、このドラマならではの取り組みだ。

 また、「クモの糸」の黒田光輝も、「メロスを待つ男」のヴァサイェガ渉も、この作品がドラマ初出演にして初主演という、今後エンターテイナーとして活躍していく彼らにとって大きな節目となるのも感慨深い。

 明日のスターを目指す“ジャニーズJr.”という大きな集団の中から、それこそクモの糸を掴む思いでチャンスを逃すまいと駆け抜けている彼ら。ときには仲間のほうが先に晴れやかな舞台に立ち、セリヌンティウスのような挫折を味わうこともあるだろう。

 そんな悩み多き等身大の彼らだからこそ演じられる、みずみずしさがある。文学作品とはその時代に漂う瞬間を閉じ込めたタイムカプセルのようなものだ。そのタイムカプセルをあけて、再び現代を生きる彼らのピュアな姿をそのままパッケージしたのが、この『文豪少年!』という作品なのだ。

 『文豪少年!』を観た後に、気になった原作小説を手に取るのも良し、また主演の少年忍者メンバーのその後を追うも良し。“過去”に、“未来”にと、興味が広がっていくのも他の作品とはまた違った楽しみ方ができるドラマだ。

 第3話「注文が多い店には気をつけろ」には小田将聖と田村海琉が、第4話「罪と罰の散歩者」には川崎皇輝が、第5話「二百十日の二百十段」には安嶋秀生と檜山光成が、第6話「稲荷坂の秘密」には深田竜生が……と、まだまだ続く『文豪少年!』。モチーフとなった小説に想いを馳せながら放送・配信を待つのも、また一興だろう。

 「かつて教科書で読んだ記憶はあるけれど、あんまりおぼえていない」という人はもちろん「名前は聞いたことがあるけれど、なかなか自分から手に取るタイミングがなかった」という人も、きっとこのドラマをきっかけに新しい扉が開くはず。そして、少年忍者と共に「今あなたが読むべき1冊」を見つけてみてはいかがだろうか。

※川崎皇輝、木崎ゆりあの「崎」は「たつさき」が正式表記。

■放送情報
『WOWOWオリジナルドラマ 文豪少年!~ジャニーズJr.で名作を読み解いた~』(全10話)
WOWOWプライム、WOWOW 4Kにて、毎週日曜23:00~放送
WOWOWオンデマンドにて配信
脚本:小松屋たから
監督:本多繁勝(OP・ED・2話・9話)、中尾浩之(3話・5話)、松井夢壮(6話・10話)、保母海里風(4話・8話)、鯨岡弘識(1話・7話)
<出演>
第一話「クモの糸」:黒田光輝、豊田陸人、小市慢太郎
第二話「メロスを待つ男」:ヴァサイェガ渉、金児憲史
第三話「注文が多い店には気をつけろ」:小田将聖、田村海琉、堀部圭亮
第四話「罪と罰の散歩者」:川崎皇輝、冨手麻妙、青木健
第五話「二百十日の二百十段」:安嶋秀生、檜山光成、ふせえり
第六話「稲荷坂の秘密」:深田竜生、木崎ゆりあ
第七話「外科室のある洋館」:織山尚大、中村ゆり
第八話「少年と舟」:北川拓実、徳永えり、佐藤アツヒロ
第九話「雪おんなの風」:元木湧、長谷川純、平塚翔馬、青木滉平
第十話「冬の青い日傘」:内村颯太、野波麻帆
全話出演:イッセー尾形
プロデューサー:井上衛、渡邉浩仁、柳内久仁子
制作協力:AX-ON
製作著作:WOWOW
(c)WOWOW
公式サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/bungoshonen/
公式Twitter:https://twitter.com/bungoshonen

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