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菅田将暉と山田孝之の間に不穏な空気が流れる 『dele』が描いた“人間の裏の顔”

リアルサウンド

18/9/8(土) 10:20

 『dele』(テレビ朝日系)第7話が9月7日に放送された。主人公・坂上圭司(山田孝之)と真柴祐太郎(菅田将暉)は「デジタル遺品」を内密に削除する仕事を請け負っている。これまで、さまざまなデジタル遺品に触れることで、依頼人やその周辺にいる人々の人生を垣間見てきた。その人生は愛を伝えるものや真実を伝えるものが多かった。しかし、今回垣間見たものは、真実だったかさえ定かではない。ただ1つ確実なのは、人々のもつ黒い”裏の顔”が暴かれてしまったことだ。

参考:菅田将暉の“共感力”と山田孝之の“優しさ” 『dele』互いを補完し合う最高のバディに

 祐太郎が依頼人・笹本隆(西ヶ谷帆澄)の死亡確認を取った時、その名前を聞いて圭司の姉・舞(麻生久美子)がデータ削除を引き止める。依頼人は、8年前にバザー会場のジュースに毒物を混入したとして逮捕された死刑囚・笹本清一(塚本晋也)の息子だった。「無罪を主張する笹本に関係するデータかもしれない」と考える舞。そのデータを開示すると、笹本とは別の男性が不審な粉末をジュースに加える映像が残っていた。

 結論から言うと、この動画をきっかけに複数人の容疑者が浮上するが、笹本の死刑が執行され、真相は闇の中へ消える。事件の真相に近づこうとすればするほど容疑者が増えていく描写は「どんな人にも裏の顔がある」と突きつけられているようで薄気味悪いものだった。その空気を、圭司も祐太郎も感じ取ったことだろう。その町の住人たちの裏の顔に触れれば触れるほど、事件を追求する2人の表情に影が落ちていく。

 第7話の終盤で語られたのは、圭司が依頼データを開くことなく削除する理由だった。笹本が犯人ではない可能性も浮上する中で、「この町の人々の裏の顔を暴かなければ、彼らが今までどおりの日常を過ごすことができる」と話す圭司。自分がデータを開かないのは、築きあげてきた日常を崩すかもしれない責任を負えないからだと言う。しかし祐太郎は、真実を証明するかもしれないデータを消すことも同様に、強い覚悟がいることなんじゃないかと圭司に問う。祐太郎に対して圭司は答えない。互いの意見に返事を返すことのできない2人の立ちすくむ背中が印象的だった。

 今回の演出は、表の顔と裏の顔で印象がガラリと変わる、ある意味極端な演出だ。しかし、圭司と祐太郎が事件の真相に近づかなければ、その両面が表に出ることもなかった。表に出るはずのなかった裏の顔、それをそれとなく覆い隠そうとする空気を感じさせる演出だったからこそ、裏の顔が一切見えない表の顔すらも不気味に感じられる。

 笹本が死刑を執行された時、町では8年前から中止されていたバザーが再開される。このとき1人の少女が、8年前に見知らぬ人物から「ジュースを飲むと死んじゃうよ」と注意されていたことが判明する。その直後、圭司と祐太郎によって裏の顔が暴かれた市議会議員や飲食店経営者たちの表情が映し出されるが、彼らは一様に笑顔である。圭司の言う「裏の顔を暴かなければ、彼らは今までどおりの日常を過ごすことができる」ということの表れだ。ジュースを飲むことを拒否した少女に、ジュースを配布している主婦は「大丈夫よ」と彼女の肩を掴んで促す。このとき、少女の肩を掴む主婦の手に力が込められているところが映し出される。笹本が刑に処されることで、町は平穏を取り戻したのだと言わんばかりに。

 エンディングで、祐太郎は今回の一件に対して「気持ち悪い」と漏らした。今回の真相を探る中で、毒物混入事件で孫を失った人や自殺した依頼人が唯一心を開いていた人物に共鳴した祐太郎は、その目に優しい光が灯していた。しかし「気持ち悪い」と発し、「dele.LIFE」を出て行った祐太郎の目に映るものは空虚だった。どことなく絶望を感じさせる目にゾッとさせられる。圭司はその後、通常通りデータを削除するのだが、一瞬だけ削除を躊躇うような間を見せる。“y”まで打って、一度手を止めた圭司は何を思ったのだろうか。

 これまでも何度か後味の悪さを感じさせる演出はあったが、第7話は「デジタル遺品」という題材の重さを感じさせる回だった。デジタル遺品に遺された意思を、故人に問いただすことはできない。第7話の舞台となった町において、圭司や祐太郎は平穏をかき乱す“部外者”でしかなかった。事件の真相を掴もうとすればするほど、空ばかりつかまされるような演出が歯がゆかった。後味の悪い結末となった第7話で、圭司と祐太郎の間に流れるようになった不穏な空気は最終回にどう影響するのだろうか。(片山香帆)

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