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『まだ結婚できない男』『まんぷく』『愛がなんだ』……深川麻衣、2019年は変化の一年に

リアルサウンド

19/11/19(火) 6:00

 深川麻衣にとって、2019年は変化の年であったように思う。それは、乃木坂46としてのキャリアを超えた知名度だけでなく、女優としての演技力を含めてだ。

参考:『まだ結婚できない男』深川麻衣が語る、ファンとしての思いと挑戦 「遠慮せずに自信を持って」

 2018年、映画初出演にして初主演を務めた『パンとバスと2度目のハツコイ』(以下『パンバス』)で「第10回TAMA映画賞 最優秀新進女優賞」を受賞した深川は、2019年多くの作品に出演した。

朝ドラ『まんぷく』(NHK総合)(2019年1月)
ドラマ『日本ボロ宿紀行』(テレビ東京系)(2019年1月)
映画『愛がなんだ』(2019年4月)
映画『空母いぶき』(2019年5月)
ドラマ『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)(2019年10月)

 『パンバス』で共演した山下健二郎がパーソナリテイを務める『ZIP!』(日本テレビ系)で深川が特集された際、「乃木坂46だったんですよ」「え、知らなかった!」という街頭インタビューが流れた。2016年にグループを旅立った深川は、自身にとって卒業シングルとなる『ハルジオンが咲く頃』でセンターを務め、地元・静岡で華々しく卒業コンサートを開催した人気メンバーだった。

 アイドルから女優へと転身する道は決して平坦な道ではなく、橋本環奈や川栄李奈など誰もが認めるほどに大きく飛躍した人物はそれほど多くはいない。その飛躍したかどうかの指標は人によって様々だが、作品に出続けられているか、視聴者の記憶に残っているかが、活躍を図るパラメーターの一つではないだろうか。2人の出演回数には及ばないまでも、彼女たちに次ぐ位置に深川の名前が挙げられるはずだ。

 初の朝ドラ出演と深夜ドラマ初主演を決めた、今年1月。幅広い層から圧倒的支持を受ける『まんぷく』。『孤独のグルメ』『昼のセント酒』の制作陣が揃うカルト的人気の『日本ボロ宿紀行』という両輪での出演は、“朝も夜も深川”というまだ新人の女優としては異例と言える露出頻度だった。深川は乃木坂46に所属していた頃、絶対に怒らないその温厚な性格から“聖母”と慕われていた。おっとりとした雰囲気、滲み出る優しさは、『パンバス』から一貫して深川の個性として表れている。

 『まんぷく』ではドラマ終了後にも、公式パロディとして好評を博した日清の袋麺シリーズに松坂慶子らとともに出演。『まんぷく』で演じた香田吉乃同様、気づいたら主役の脇にいるという朝ドラの枠を超えた見事な“助演”だったように思う。『日本ボロ宿紀行』では、亡くなった父の後を継いだ芸能事務所の社長という立場で、売れない演歌歌手・桜庭龍二(高橋和也)のマネージャーを熱演。ふてくされ顔、しかめっ面の連発という『まんぷく』との対比、新境地の役柄でありながらも、最終的には桜庭と一緒にニヒヒと笑い合う終わり方は、疲れて帰ってきた金曜日の深夜に癒しを与えてくれた。

 4月、5月には映画2作品への出演が続く。中でも、特筆したいのが『愛がなんだ』での葉子としての演技だ。『ボロ宿』は深川にとって新境地の役柄ではあったものの、どこか『パンバス』にも通ずる癒しの部分があった。しかし、『愛がなんだ』での深川の初登場は、自分に好意を持つ仲原(若葉竜也)に、キャミソール姿で「仲原、ビール買ってきて」と投げかけるというもの。

 『愛がなんだ』という作品自体が男女のあいまいな距離間をテーマとしており、「28歳、女優、深川麻衣」としての等身大の女性、かつて“聖母”と呼ばれた彼女が膜を破り、妖艶さを纏った深川がいるように思えた。監督を務めたのは、『パンバス』に続き彼女をキャストに迎えた、深川をよく知る今泉力哉。初の茶髪、でこ出しというビジュアル的にも大人の女性を演じた作品である。

 そして、現在放送中の『まだ結婚できない男』では、主人公・桑野(阿部寛)の隣人で女優の早紀を演じている。深川にとって、初のプライムタイムのドラマ出演。吉田羊、稲森いずみに並ぶ役どころからも、深川の女優としての現在地、期待値が垣間見える。早紀はコメディドラマという枠組みで、深川の明るいキャラクター性をそのままそのまま役に落とし込んだような人物。少々ぶっ飛んでいる部分もあるが、深川自身も「辿ってきた境遇が似ているんです。早紀は、もともとアイドルだったのですが、いまは女優を目指して頑張っているところです。その境遇がまったく私と同じなので、そこはすごく共感できる部分です。あとは、食べることや動物が好きなのも一緒ですね」とインタビューで多くの共通点を話している。

 物語は第7話を迎え、桑野と女性陣との付かず離れず、それでいてどうしようもない関係性が、各々板に付いてきている。それは、深川についても言えることだ。今回の出演を経て、深川の女優としてのパブリックイメージは、ある人にとっては『まだ結婚できない男』の早紀に、またある人にとっては『まんぷく』の吉乃でいるのかもしれない。けれど、そこに『愛がなんだ』のような意外なイメージが混ざり合うことで、女優としての個性となっていく。2019年の出演作を経て、2020年、深川が多くの人の中で飛躍していくことを期待している。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。

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