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藤原千花「翼をあげたい」はキャラクターの心情を捉えた名曲に 杉山勝彦手がける歌詞やメロディから考察

リアルサウンド

20/6/3(水) 6:00

 現在放送中のTVアニメ『かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~』より、5月27日、キャラクターソングシリーズ第2弾として藤原千花(CV:小原好美)の「翼をあげたい」がリリースされた。

(関連:『ダーリン・イン・ザ・フランキス』ED曲に隠された仕掛けとは? 6曲を手がけた杉山勝彦に聞く

 第1弾である四宮かぐや(CV:古賀葵)の「答え合わせ」に続き、作詞・作曲・編曲を手がけるのは杉山勝彦。乃木坂46など多数のアイドルへの楽曲提供や、アニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』の全エンディングテーマを担当するなど、今のJポップシーンを幅広く支える音楽作家である杉山。その武器である、女性ボーカルを活かした透明感のあるメロディと心情を丁寧に掬い上げる詞が、今回も光っている。

 原作である漫画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦』は、秀知院学園生徒会メンバーによるラブコメディだ。秀知院学院生徒会長の白銀御行と副会長の四宮かぐやは、双方ずば抜けて頭の切れる天才で、かつ両想い同士でもある。にもかかわらず、お互い「自分からは絶対に告白したくない」という謎の意地により、その知能を「いかにして相手に告らせるか」に使った高度な恋愛頭脳戦を繰り広げている。

 そんな二人の間に立つのが、生徒会書記の藤原千花だ。藤原の性格は天真爛漫、そして「空気が読めない」。素直で打算がないからこそ、藤原は知略を巡らせる白銀と四宮にとって予想外の状況を引き起こし、二人の恋愛バトルを引っかき回す存在となっている。

 そんな藤原のキャラクターソングと言えば、アニメ第1期の時にリリースされた「チカっとチカ千花っ♡」だ。藤原の茶目っ気ある魅力が詰まったナンバーで、楽曲がアニメのエンディングに使われた際に公開された滑らかなダンス映像でもそのかわいらしさが炸裂し、「チカダンス」としても話題になった。

 そんな藤原の2曲目のキャラクターソングとなるのが、今回リリースされた「翼をあげたい」だ。無邪気な藤原らしさを前面に押し出した「チカっとチカ千花っ♡」とはがらりと趣が変わり、「翼をあげたい」は藤原の内面の心情を描き出す、しっとりとしたミドルナンバーとなっている。

 「翼をあげたい」のイントロには、ショパンの「ノクターン第2番」が使われている。この演出は、ピアノコンクールで金賞を受賞するほどの腕前を持つ、藤原のちょっと意外な側面を表現したものだろう。曲は厳かなピアノの音色から始まり、杉山によるボーカルを聴かせる繊細なメロディへと移っていく。

 〈my girl あなたが笑うと もうハッピーでとろけそう〉や、〈my boy 頑張るあなたが もう心配でふやけそう〉という詞からは、いつも無邪気な藤原とは少し違い、白銀と四宮の恋を見守る大人びたまなざしが感じられる。

 公式で「空気が読めない」と称される藤原だが、それは彼女の、いつも自然体で平等な姿勢が作り上げた美徳だろう。〈空気を読むの定義は ひとりkeyman見定め ご機嫌をとることみたい 納得よ そんなことできないもん だってみんなが私のkeyman〉という詞が、藤原の普段は見えづらい優しさと、したたかな前向きさをよく表している。

 白銀と四宮による天才同士の高度な頭脳戦が『かぐや様は告らせたい』のおもしろさの肝なのはもちろんだが、そこに一石を投じるように配置された、打算のない藤原千花という存在が、白銀と四宮の間でバランサーとなり、作品に深みを与えているのも間違いない。

 さらに、「藤原千花」の声音のまま、心情の機微を表現してみせる小原好美の歌唱も見事だ。「チカっとチカ千花っ♡」でも、藤原のあどけない口調が歌の中で一切崩れることなく表現されていた。今回の「翼をあげたい」で描かれているのは、表立っては見えない藤原の内面の想いだが、そんな「新たな表情」を見せながらなお、小原の歌声はきちんと「藤原千花」を感じさせてくれる。

 アニメも第2期となり、生徒会の解散、生徒会長選挙、新メンバーの加入など、新たな局面を迎えていく。はじめはぎこちなかった生徒会メンバーも、限られた高校生活を共有していくことで絆を深め、その関係性を徐々に変化させている。杉山勝彦が描いた「翼をあげたい」が藤原千花の新たな魅力を見せてくれたように、物語もまたさらなる広がりを見せてくれることだろう。(満島エリオ)

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