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『アシガール』アンコール放送で再確認! 黒島結菜&伊藤健太郎の飛躍に繋がった重要作に

リアルサウンド

20/7/4(土) 6:00

 2017年にNHKで放送された連続ドラマ『アシガール』。リアルタイムで放送されていたときも、主演を務めた黒島結菜と、実写化不可能では……と言われた若君・羽木九八郎忠清に扮した伊藤健太郎(放送当時は健太郎)の爽やかさが大きな話題になったが、改めてアンコール放送された本作を観て、二人の俳優としての魅力に気づかされた。

【写真】伊藤健太郎が黒島結菜をお姫様抱っこ

 本作は、テレビドラマ化もされた『ごくせん』(日本テレビ系)などを世に送り出した森本梢子の人気コミックの実写ドラマ化。脚力だけが取柄の女子高生・速川唯(黒島結菜)が、弟の作ったタイムマシーンによって、突然戦国時代にタイムスリップしてしまう。そこで偶然出会った羽木の若君・忠清(伊藤健太郎)に一目惚れしてしまった唯は、女子の身分を偽り足軽隊に志願し、若君を守ろうとする物語だ。

 女子高生が戦国時代にタイムスリップしてしまうという設定からしてファンタジー要素満載の本作。実写化ということで、どこまでリアリティを持って表現できるのか……ということが大きな焦点になっていた。本作が実写化されることが報道に出た際、原作ファンからは「あまりにも美しい若君を実写で演じられる俳優がいるのか?」という声が上がった。ある意味で非常にハードルの高さで注目される作品となった。

 実際、唯に黒島、若君に伊藤が起用されることが発表されたときも、少なからず不安視する声はあった。

 唯は猪突猛進で“若君ラブ”を貫く一直線な女の子。多少落ち込むことはあっても、楽観的で困難に突き進む強さが魅力だ。黒島と言えば、映画『ストロボ・エッジ』などで、恋に一途な高校生を演じたことはあったが、どちらかというと、やや影のあるおとなしめな役を演じることが多く、唯というキャラクターをどう演じるのか……想像がつかなかった。

 しかし、放送がスタートすると、まずは躍動感ある走りに目を奪われ、さらに物事をあまり深く考えない楽天的な佇まいが、非常にハマってみえた。特に戦国時代にタイムスリップしたあとの足軽スタイル、泥にまみれた顔は妙にリアリティがあり、黒島の“動的”な魅力が垣間見えた。

 『アシガール』を境に、NHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の村田富江、NHKの連続テレビ小説『スカーレット』の松永三津、『行列の女神~らーめん才遊記~』(テレビ東京系)の汐見ゆとりなど、黒島の芝居に瞬発力を伴う軽快さが感じられるようになり、役柄の幅が大きく広がったように感じられる。

 一方、原作ファンの支持が非常に高い若君を演じた伊藤も制作陣から、大きなプレッシャーをかけられていたという。しかも時代劇初挑戦であり、所作を含め現代劇とは勝手が違うことも多々あるという厳しい現場。そんななか、難易度の高い原作コミックのキャラクターに臆することなく、清潔感溢れる凛とした佇まいを見せた伊藤のポテンシャルの高さに驚かされた。口数がそれほど多くない役柄だけに、間や表情の芝居が重要だったが、とにかく目の芝居の説得力がすごかった。語らずも、若君の内に秘めた思いが伝わってくるシーンが多々あった。

 本作後、連続テレビ小説『スカーレット』では、戸田恵梨香演じる川原喜美子の息子・武志に扮した伊藤。物語の終盤に大きな病におかされてしまったあと、自身の運命に対して悲観する思いや、家族や周囲への感謝、さらには厳しい状況のなかでも前を見つめる強さなど、複雑な感情が入り乱れる胸の内を、相手に向ける眼差しだけで表現する場面も多く、視聴者の涙を誘った。

 伊藤は2020年、現在発表されているだけでも5本の劇場公開映画が控える。ビジュアルの人気はもちろんだが、確かな演技力を評価する製作陣は多い。黒島も、前述したドラマ以外にも、2019年に公開された映画『カツベン』では100人のオーディションからヒロインに抜擢され、名匠・周防正行監督のもと、駆け出し女優を瑞々しく好演。現場で黒島は周防監督からかけられた厳しい言葉で、より能動的に役柄に向き合うようになったと話していた。

 『アシガール』出演から、大きな飛躍を遂げた黒島と伊藤。改めて作品を観返してみると現在の魅力となっている黒島の“瞬発力&躍動感”、伊藤の“静的な間の芝居”の魅力が『アシガール』の演技に詰まっていると強く感じられた。

(磯部正和)

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