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佐久本宝、引く手数多の俳優に 『エール』裕一の弟・浩二はそろそろ爆発!?

リアルサウンド

20/5/4(月) 6:00

 朝ドラ『エール』(NHK総合)にて、主人公である兄・裕一(窪田正孝)の影に隠れてしまっている弟を演じる佐久本宝。いま非常に勢いのある俳優の一人として、彼のことを認識している方も多いことだろう。次から次へと、立て続けに話題作に姿を見せている。

 佐久本の活躍ぶりを直近からさかのぼっていくのならば、『ひとよ』や『孤狼の血』の白石和彌監督が香取慎吾を主演に迎えた映画『凪待ち』が挙げられる。同作で佐久本は、物語のメインとなる主人公のパートナー(西田尚美)の娘・美波(恒松祐里)の同級生役を演じた。見た目こそ不良然としたものではあったが、美波の抱える孤独と喪失感にそっと寄り添う役どころだった。硬質な演技に徹する香取に堂々と噛み付いていく姿なども記憶に新しい。ストーリーの核となる部分とは離れたポジションながら、本作への彼の貢献度は大きかったように思う。

 さらに昨年は、次世代を担う若手俳優が数多く名を連ねた『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)での佐久本の姿も鮮明に記憶に残っている。彼が演じたのは問題だらけの「3年A組」の中でも目立つ人物で、ある種のムードメーカーであり、喧嘩っ早い乱暴者でもあった。しかしそれだけでなく、仲間想いな一面も。作品のトーンを左右するようなシチュエーションでも、果敢にトップに躍り出た。大きな話題を集めたドラマだったとあって、本作で彼を知った方も多いはずである。

 だが佐久本が演じられるのは、いま『エール』でも示しているように、“ワル”や、荒っぽい少年役ばかりではない。昨年公開された『惡の華』や『あの頃、君を追いかけた』では、主人公である少年たちのクラスメイトに扮し、群像劇である後者では盛り上げ役を大いに買って出ている。そして何より、忘れてはならないのが、彼の俳優デビュー作となった『怒り』である。主演を務めた渡辺謙をはじめ、現在の日本映画界を牽引する錚々たるメンツが揃っている中、1200人が挑んだオーディションを勝ち抜き、重要な役どころ獲得。相手役の広瀬すずとの出会いの場面や健気な交流、もちろん、彼の見せた涙や、声にならない叫びは忘れがたい。映画初出演にして、本作が文字通りの転機となった。

【写真】『エール』に集結した『3年A組』卒業生たち

 さて、『エール』内での佐久本について話を戻そう。彼が演じる古山浩二は、冒頭で述べたように兄の影に隠れてしまっている、まるで尻ぬぐい的なポジションだ。家業である老舗呉服屋「喜多一」を立て直すため、兄である裕一に代わって日々奮闘。ところがだ、そんな彼をよそに、理想主義者である兄や、それを後押しする姿勢を取る父(唐沢寿明)、なんだかんだで夫のあとをついていく母(菊池桃子)……現実主義者である浩二にとっては悩みのタネばかりである。危機感を抱える彼は、そろそろ爆発してもおかしくないのではないかと睨んでいる。

 現在レギュラー出演しているメインキャストの中で最も若い森七菜もそうだが、佐久本もキャリアとしてはまだまだこれから。しかし両者共々、そのキャリアに比してこれまでの作品で重要な役どころを担ってきた存在とあって、自身の見せ場ではきちんと魅せる。その術をすでに体得しているのだろう。

 主人公である裕一の恋愛や将来にばかりスポットが当たっているのは当然だが、その中で、弟としてどのようなサイドストーリーを展開していくのか、浩二の動向からも目が離せない。朝ドラ初出演で、“主人公の弟”という大役を手にした佐久本宝。まだ出演作は少ないが、これからも引く手数多の俳優となっていくことだろう。

(折田侑駿)

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