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吉柳咲良「私の感情は出さない。ミサミサとして舞台に存在したい」

ぴあ

吉柳咲良

2020年1月から、3度目のミュージカル上演がスタートとなる『デスノート THE MUSICAL』。誰もが知るこの大作に、弱冠15歳で主要キャラクターの1人・弥海砂(通称:ミサミサ)役で出演するのが、吉柳咲良だ。2017年には最年少タイの13歳で、ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』で初舞台・初主演をこなしている彼女。キャリアは短くとも若さと情熱、そしてキャラクターへの積極的なアプローチを武器に、先輩たちと舞台を作り上げる心意気を語ってもらった。

「ミサミサを演じるプレッシャーは、本当に大きいです。今まで演じてきた『ピーターパン』とは全くかけ離れた役なので、培ってきたものをというよりは本当に新しい挑戦という気持ちです。でも私でやってみようと決断していただいたんですから、稽古場では期待にお応えできるくらい、頑張りたいと思っています。初演と再演の『デスノート THE MUSICAL』でミサミサ役だったのは、私の大好きな先輩の唯月ふうかさん。また違うミサミサになると思いますが、変わらずみなさんに愛されるようなミサミサになれたらという気持ちで演じたいです」

舞台の上ではマイナスな感情を一切出さない決意をしている。

「舞台を見に来てくださっている皆様に、私の迷いをお見せすることはできないので、一歩一歩、確実にステップアップして準備をしようと思っています。新しい挑戦に戸惑うことは多いですが、ワクワクする気持ちも確実にあります。小さな共感を積み重ねて、理想のミサミサを演じたいです」

吉柳さんは2004年生まれ。漫画『DEATH NOTE』は2003年に連載がスタートしたので、彼女にとってはクラシックな部類に入る作品だった。

「漫画の『DEATH NOTE』は、連載開始が私の生まれる前で、連載終了が2歳の時。お父さん、お母さんの方が世代なんじゃないかな。私の『DEATH NOTE』のイメージはドラマからですね。『DEATH NOTE』の面白さは、悪の正解も正義の正解もないということだと思います。個人が持つ正義が少しずつ曲った方向に行ってしまっていて、じゃあどの方向が正解かと言えば読者・視聴者にもわからないんですけど、思想の絡み合い、ぶつかり合いがスリリングな作品だと思います。そして『DEATH NOTE』という架空のノートがあったら本当にこうなるだろうなっていう、リアリティが怖いです」

その怖い世界の中で、月に恋するミサミサの情熱は、吉柳さんにとって別世界の事柄のように感じることも。

「アイドルというたくさんの人の愛を一身に受ける存在のミサミサが、なぜキラに執着するのか、恋をしてしまうのか、自分の身を滅ぼす寸前まで守りたいと思うのか……。恋愛に命を懸けるって、なかなかできないですよね。両親の敵を討ってくれたとはいえ、自分の身を顧みずに相手を想い続ける実感がわかなくて。でもまだ私にはわかりきれていないミサミサの考えが沢山あるので、これから少しずつ理解していきたいです」

理解している途中にいるとはいえ、ぼんやりとしたミサミサ像は、心の中で徐々に形になりつつある。

「私はミサミサがアイドルとして魅せる陽の部分よりも、抱えている闇の部分のほうが、たぶん出せるんじゃないかな。私自身が深い闇を抱えているとかではないんですけど、『かけ離れているな』と感じる部分はミサミサの陽の部分なんです。女の子らしいという言葉には縁遠かったので、私にとって海砂の衣装や可愛い仕草もまた挑戦なんです。だからミサミサのアイドルとしての、可愛い女の子としての部分よりも、内側にある部分の方が、私は共感できるものが多いと思います。この3年間、舞台や映画と色んな経験をさせていただいて、楽しいことはたくさんあったけど、もちろん悩んだことや辛いこともたくさんあったので、きっかけは何にせよ、何かを秘めていることに関しては、共通点があると思うんです。そんなことを頭に置きながら、台本や譜面を読んでいくつもりです」

役柄への理解は、歌の理解・表現にももちろんつながる。

「ミサミサの歌って、歌詞の意味が深くて。どれだけ思いが込められているかが、伝わってくる歌なんです。アイドルとしてミサミサがステージで歌う歌と、レコーディングの歌と、最後に出てくる歌はまったく路線が違うので、アイドルとしてのミサミサと、闇を抱えながら生きる弥海砂との違いが、すごくわかると思います。衣装を着て、セリフが入ったら、たぶんもっともっと感情移入できると思うので、よりリアルなミサミサをお届けできると思います。私自身、アイドルのキラキラしている姿を見るのが大好きなので、アイドルとしてミサミサが歌うシーンはすごく楽しみ。アイドルになったつもりでステージにいられるんだなって思うと、嬉しくなります(笑)」

今回の出演者の中では断トツに最年少だが、あくまで対等を目指す。

「『私で大丈夫?』って内心弱気になってしまうこともありますが、やっぱり同じ舞台に立つ以上は、同じくらい、それ以上で頑張らなければいけない。本格的な稽古が始まったら、絶対に悩むと思うんですけど、ミサミサという役柄を通していろいろ学べることが楽しみでもあります。『DEATH NOTE』は、今まで自分が関わってきた作品の中で一番テーマが重いのですが、その重さの中で演じる私を、見てくださる皆さんにいかに共感していただけるか、感情移入していただけるのかっていうのが、最大の課題です。頑張った成果を爆発させて、ミサミサとしてステージで存在したいです」

ミュージカル『デスノート THE MUSICAL』は2020年1月20日(月)の東京公演を皮切りに、静岡、大阪を経て、福岡で千秋楽3月8日(日)まで上演。吉柳咲良の闇を抱えた愛らしいミサミサに、ぜひ会いに行きたい。

撮影/奥田耕平、取材/藤坂美樹、構成/中尾巴

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