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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

セックスはもう数えるくらいしかできない

毎週連載

第112回

ちょっと前、ファンの女の人からメールが届いてさ、「私はこういうセックスが理想です」みたいなことが書いてあってビックリしたことがありました。箇条書きで「理想のセックス」が書いてあったけど、縛られたりしてドッチャクソ、ドッチャクソにヤラれまくりたいんだって。でも、そんなことを他人に言ったら引かれるから「何も知らない自分」を装って日々暮らしてるんだって。

このメールを読んで、僕は結構なショックを受けました。男って、女の人に対して処女性とかさ「何も知らないままでいて欲しい」みたいに求めるところがあるでしょ。でも、男でも色んな性癖の人がいるように、女の人だってすごいことを考えてる人がいるのは当然で、その現実を突きつけられた感じ。「なるほどなぁ」と思った。さらには「峯田さんも自分の欲望に忠実になって、ハードなことをして良いと思います」って言われたりしたけど、言う通りだとも思ったな。

同時にさ、男も女の人に、どんどんぶつかっていかないとダメだし、性癖とかを恥ずかしがらずにどんどん話さないとダメだとも思った。「こんなことをしたいけど、女の人に言ったら『こいつ変態だ』と思われる」みたいなことも、あえて言ったほうが良いんだよね、きっと。そういうとき、仮に男が悪者になったり、恥をかくことはあるかもしれないけど、それはしょうがない。裸になるときくらいはさ四の五の言ってないで、ぶつかり合わないとダメ。その点、さっきのメールの女の人は偉いとも思った。僕にどう思われようとも、そうやって言ってくれたんだからね。

僕は去年12月で43歳になったんだけど、よくよく考えてみると、セックスって生きている間、無限にできるもんじゃないってことも最近考えててね。仮に「60までがピーク」だとしても、もう残り17年間しかない。そうなるとさ、もう数えるくらいしかセックスできないんですよ、これ。体は年々衰えてくるし、昔みたいに1日何回も射精できるわけでもないんだから。だからこそ1回1回のセックスを大事にしなくちゃいけないよね。

こういう「時間」に関わることもさ、男なんてノンキなもんだけど、女性は敏感に考えているんじゃないかと思う。やっぱり赤ちゃんを産むってこともあるから、「時間」で物事を考えるところがある気がするね。

前回喋った動画投稿サイトにはさ、カップル同士の行為の動画もたくさん投稿されてるんだけど、50代の女の人とかもうすごいよ。20代の女の人のあえぎ声って、まだ「人の声」だけど、50代の女の人のそれは、人間を飛び越えて「生命体の声」を出してる。

でも、こういう感度の高い人との行為は男の人も嬉しいだろうね。声を出さない人との行為よりは。声を出さない人だとさ「あ、俺とのセックス良くないのかな」とか思っちゃうけど、声を出してくれたら安心できる。女の人はギャンギャン声を出して良いと思います。

若い頃の僕は「オッサン、オバサンになったらセックスなんてしなくなるんだろう」と思ってたの。でも、今は逆に「若い子はセックスなんてしないんだろう」「セックスってオッサン、オバサンしかやらないんじゃないか」みたいに考えが変わってきてる。だって、ラブホテルに出入りしている人って、若い子よりも圧倒的にオッサン、オバサンばっかりなんだよ、マジで。昼間っからいい年こいた男と女が、気持ち良いことしようと出入りしてる。本当にすごいなと思うけど、でも良いことだよね。だって時間には限りがあるわけだから。

またさ、50代の男女ってさ、若い頃の衝動的に「ヤリたい」ってことともちょっと違って「俺まだ勃つんだ」とか「私で興奮してくれる人がいるんだ」みたいな確認作業としてのセックスもあるんじゃないかと思う。歳を取ってからのセックスによって男は自分に自信を持てるだろうし、女の人も「私はまだ女性として見られるんだ」って安心できる。だとしたら、これも悪いことではないし、人間としてごく普通の、当たり前の営みだと思います。

本当に50代以上の営みはすごいですよ。

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。


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