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パク・ジニョンが明らかにしたTWICE誕生秘話 “評価されること”の過酷さ、プレッシャーを乗り越えて

リアルサウンド

20/5/13(水) 12:00

 冒頭で聞こえる少女のあどけない歌声。その主が、現在ではTWICEのボーカルを力強く支えているジヒョであることに気づくまで少しかかった。

(関連:TWICE、異なる出発点から現在まで続く“歌って踊ること”への喜び ドキュメンタリー第1回を観て

 デビューの切符をつかむまで10代のほとんどを練習生として過ごしてきた彼女の声は、メインボーカルとしてはもちろん、リーダーとしてグループの指針となる頼もしい響きを持つ。

 TWICEのデビューメンバーを選抜するオーディション番組『SIXTEEN』で自分がスターだと思う理由を問われた時、「私は、練習に長い時間を費やしました。人生の半分以上をかけたんです。ここまで頑張ることが出来たのは、自分自身に可能性があるからです」と堂々とした笑顔で答えたことからも分かるように、彼女の頼もしさは、そのたゆまぬ努力によって裏付けされる確かなものだ。

 しかし「その間ずっと幸せで充実していたとはとても言えません。くじけそうになっては何度も諦めかけました。苦しい時ばかりでした」というジヒョの言葉は、練習生時代の過酷さが9人に与えた痛みの存在をうかがわせた。

 ナヨン、ジヒョと共に別のグループでデビューする予定がうまく運ばなかったジョンヨンは「もう終わった」と本気で考えたことで、一時はパン屋のアルバイトをしていたこともあるという。またミナは、日本の高校を中退し韓国へ渡る大きな決断をとった当時のことを「正直とても辛かったです」「進むべき道を失ってしまうので本気でした」と振り返った。

「この道しかありませんでした。(芸能以外の)新しいことをするにも遅すぎました(ジヒョ)」
「毎日、同じことの繰り返しです。“いつか本当にこの状況が終わる日が来るのかな”と思った(モモ)」

 まるで退路を断たれたかのような不安とプレッシャーを抱えながら、出口の見えないトンネルを進む苦しみ。

 それは例えば、練習生時代に歌っていた発表曲「Santa Tell Me」について「この曲は評価されている気分になるのであまり好きじゃないんです。上手く歌わないといけないという重圧を感じるから」と打ち明けたナヨンや、現在放送中の『Nizi Project』(TWICEが所属する芸能事務所・JYPエンターテインメントが主催するオーディション番組)を見て「胸が痛くなる。人が評価されているのを見るのは辛い」と話すモモからも伝わるように、見事デビューを叶えた後も現在の9人の心に未だ刻まれる傷となっている。

「彼女たちが払う犠牲に心が痛み、“本当にこれが望み?”とよく尋ねました」「多くの犠牲を払っている彼女たちに申し訳なく思います」

 プロデューサーのパク・ジニョン(J.Y.Park)は正直な胸中を語った。

 9人が練習生として払った犠牲は、ファンとしてもどう捉えたらいいものか分からないほどに深刻だ。だからこそこのドキュメンタリーで語られる言葉は、感動と共に大きな戸惑いを残すものである。

 しかし練習生時代の経験が彼女たちに残したのは、傷だけではないことも紛れもない事実だ。日本出身メンバーのモモ・サナ・ミナ、台湾出身メンバーのツウィが乗り越えたのは異なる文化や言語の壁だった。

 今ではネイティブレベルと称されるほど流暢な韓国語を話しファンの間では“キム・サナ”という愛称で呼ばれるサナは、練習生として韓国に渡った当初のことを「意思疎通ができず、相手の言うことが分かりませんでした」と振り返ったあと、前向きにこう続けた。「会話を通して繋がって笑いあいたかったんです。だから一生懸命、韓国語を勉強しました」。言葉が通じない環境の中で抱えていた葛藤。それは、どんなに疲れている時にもメンバーとのコミュニケーションを第一に考え、グループのムードメーカーとしての役割を果たすTWICEのサナらしさへと至っていることを知った。

 また、周囲との環境の違いに悩んでいたというチェヨンは「私は幼い頃からこの世界に入ったので、友達と共通の話題があまり多くないんです」「友達が将来の進路を考えているとき、私は自分がしていることをあまり話しませんでした。学生である友達と私では、どうしても違いが出ますから」と語った。

 しかし当時のチェヨンが感じていた孤独は、独創的な感性を持つことで知られる今の彼女の魅力へと確かに繋がっている。以前TV番組で「絵を描くのが好きだが、自分より上手い人を見て現実を知って以来進むべき道が分からなくなった」という学生の相談を受け「他人と自分を比べないことが大事です。やりたいことをやろう。周りと比べてプレッシャーを感じなくていい」という言葉を投げかけていた彼女。自分と他者の主体性を尊重するその姿勢は、当時の経験が糧となったように思えた。

「彼女たちを選んだ基準は、自然に個性を出すことが出来るかということ。話しているときだけではなく歌やダンスにも個性は表れますから、そういった個性が光る子を選びました」

 プロデューサーのパク・ジニョンが明らかにしたTWICEの誕生秘話は、メンバーの一人ひとりの個性こそがグループの特別さに繋がっていることを物語っている。「激しかったあの日、9人の練習生たちの話」と題されたEp2は、彼女たちの持つ個性がいかにして磨かれ、TWICEの魅力となっていったかを明らかにする内容だった。

 余談だが、先述したナヨンの「Santa Tell Me」にまつわるエピソードには続きがある。彼女は、昨年改めてこの曲をカバーした際にこんなことを話していた。

「ONCE(TWICEのファン)に聞かせてあげる前はこの曲と仲良くなかった。でも、こうして今回で私にとっていい記憶に変わった気がしてとても感謝しているんです」

 “評価されること”のプレッシャーを乗り越え、いま自分のもとに集まった人々に届けるようにして歌うナヨンは、あの頃とは違って心から幸せそうに見えた。その姿から微かな希望を感じたとともに、彼女たちの払ってきた犠牲の全てがこのようにしていい記憶へと変わっていけばどんなに良いだろうと思ったのだった。(菅原史稀)

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