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『エール』に集ったミュージカル出身俳優たち 第13週は山崎育三郎と古川雄大の邂逅に注目!

リアルサウンド

20/6/22(月) 6:00

 連続テレビ小説『エール』(NHK総合)第13週では、“福島三羽ガラス”の一角、佐藤久志(山崎育三郎)と「ミュージックティーチャー」御手洗清太郎(古川雄大)がコロンブスレコードのオーディションを受ける。

参考:山崎育三郎は私たちを“新しい世界”へ導く 『エール』久志役に通じる、周囲に影響を与える求心力

 山崎演じる久志は「頭脳明晰、眉目秀麗、神が与えし美しい声」と称される音楽学校のプリンスだ。ドラマでもモーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』から「La ci darem la mano」(手をとりあって)を披露するなど歌の実力は随一。山崎自身、20代で『モーツァルト!』や『レ・ミゼラブル』、『エリザベート』に出演し、華々しい経歴を誇る「ミュージカル界のプリンス」である。ミュージカルの舞台では、満員の観衆を前にして、歌、演技、ダンスの全てにおいて高い表現力が求められる。山崎も舞台で培った経験を生かして、映画にドラマに変幻自在の活躍を見せる。

 『下町ロケット』(TBS系)で佃製作所をガウディ計画に橋渡しする元社員や、『あなたのことはそれほど』(TBS系)で主人公の夫に思いを寄せる同僚を演じると、『あいの結婚相談所』(テレビ朝日系)で待望のドラマ初主演を飾った。同作は各話に山崎演じる結婚相談所所長・藍野の歌とダンスが挿入され、最終回では総勢50人のキャストによるミュージカルシーンを披露。山崎育三郎という俳優の個性を全面に押し出した意欲作だった。

 古川も舞台出身のミュージカル俳優だ。音(二階堂ふみ)に歌の指導をし、裕一(窪田正孝)の公演を手助けする御手洗はドイツ帰りの音楽教師。トランスジェンダーであることで辛い経験をしてきた御手洗が自らを「ミュージックティーチャー」と称するのは理由があり、オーディションでは久志と火花を散らす。

 長身でミステリアスな雰囲気も漂う古川は、プリンシパルキャストとして6年連続で帝国劇場に出演するなど長らく舞台を主戦場としてきた。並行して映像の分野にも進出し、連続ドラマでは『下町ロケット ヤタガラス編』(TBS系)や、最近では『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』(日本テレビ系)のバーのオーナー来島役が記憶に新しい。

 山崎と古川は2018年のミュージカル『モーツァルト!』の主役をダブルキャストで務めた実力伯仲の盟友であるが、歌ひとつとっても両者の個性は異なる。『エール』での2人に共通するのは登場時のインパクトだ。ウインクで悩殺する神出鬼没な久志と、音楽への情熱が止まらない「ミュージックティ」御手洗は、ともに画面からはみ出しそうな存在感を放つ。

 古川は御手洗を演じるにあたって「オーバーにやりすぎないよう、なるべくナチュラルに心がけました」(参考:『エール』古川雄大、“跳んでるキャラ”御手洗役を語る 「自然に受け入れてもらえるような人物に」)と語っている。舞台で鍛え上げた山崎や古川の演技は「シアトリカル」という言葉が似つかわしく、良い意味での異化効果をもたらしている。朝ドラを舞台にした2大スターの対決は過去最大級のインパクトを生むはずだ。

 2人のほかにも『エール』には多くのミュージカル俳優がキャスティングされている。「船頭可愛いや」を歌う藤丸役の井上希美は劇団四季出身で『美女と野獣』のヒロイン・ベルに抜擢されたほか、『やすらぎの刻~道』(テレビ朝日系)では根来家の長女・信子を演じた。関内家の職人頭・岩城としていぶし銀の魅力を放つ吉原光夫も劇団四季の出身。吉原は2011年に帝国劇場開場100周年記念公演『レ・ミゼラブル』で本邦最年少のジャン・バルジャン役を射止めた。第57話で披露した鼻歌は「三河男児の歌」で、『エール』公式サイトでは練習風景を見ることができる。

 音のライバル夏目千鶴子を演じる小南満佑子はジュリアード音楽院の声楽オーディションで最優秀賞を受賞した俊栄。『Endless SHOCK 2016』のリカ役などを経て『レ・ミゼラブル』でプリンシパルキャスト(コゼット役)を担う。また昭和の名歌手・藤山一郎をモデルにした山藤太郎を柿澤勇人が演じている。柿澤も多くの舞台で主演を務める傍ら、映画・ドラマへの出演を重ねている。

 作曲家・古山裕一の歩みを描く『エール』の、もう一方の主役は歌だ。まさに「歌が響くドラマ」と言えるが、主人公のモデルとなった古関裕而は、日本のミュージカル黎明期に劇作家の菊田一夫とのコンビで多くの作品を世に送り出した人物。古関が築いた舞台で育まれた次世代のスターたちが、時代を超えて『エール』に集結している事実は感慨深いものがある。

 才能豊かな歌い手は『エール』に欠かせない存在であり、作曲家にとって二人三脚で進んでいくパートナーでもある。ミュージカル出身俳優たちの本領発揮はこれからだ。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。

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