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クィーンの人生を“生きる”。映画『ボヘミアン・ラプソディ』キャストが語る

ぴあ

18/11/9(金) 7:00

(写真左から)ラミ・マレック、ジョー・マッゼロ、グウィリム・リー

現在も圧倒的な人気を誇る英国バンド“クィーン”の軌跡を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』が本日から公開になる。本作は、クィーンのメンバーが自ら製作総指揮を務め、スタッフが徹底的にリサーチを行なって、彼らの物語を描いているが、メンバーを演じたラミ・マレック、グウィリム・リー、ジョー・マッゼロは伝説的なロック・スターを“コピー/マネする”のではなく“役を生きる”ことにこだわったという。来日した彼らに話を聞いた。

彼らの物語は、インドから移民としてやってきたファールク・バサラが、ブライアン・メイとロジャー・テイラーが在籍していたバンド、スマイルに加入したところから始まった。オーディションでベーシストのジョン・ディーコンが加入し、ファールクは“フレディ・マーキュリー”に、バンドは“クィーン”に改名。彼らは破竹の勢いでスター街道を駆け上がっていくが、フレディは孤独やコンプレックスを抱え、残りのメンバーもエゴや想いを制御できずにメンバーはぶつかるようになる。

映画は、彼らの軌跡を描きながら、バンドが1985年7月の大規模コンサート“ライヴ・エイド”に挑むまでが描かれる。フレディを演じたマレック、ブライアンを演じたリー、ジョンを演じたジョーは撮影前にクィーンのライブ映像やインタビュー、資料を徹底的にリサーチした。しかし、あくまでも準備は準備でしかない。リーは「実は“ライヴ・エイド”のシーンから撮影が始まったんだ。本当に気が重かったよ」と笑顔で振り返る。「事前に映像を徹底的に観て、何度もチェックして“この曲のこのフレーズではブライアンのギターはこの位置にあるな”と繰り返し確認したよ。ブライアンの見た目や身体的な特徴を習得して、バンドの関係性も理解した。でも何よりも大きかったのは、撮影の初期の段階からブライアン本人がいてくれたことだね。彼は僕に『君はロック・スターなんだ。つまり自分のスピリットとソウルで演じてくれ』って言ってくれた。本当にうれしかったし、大きな助けになったよ」

マッゼロも事前に多くの映像や資料をチェックした。しかし「どれだけ本人に近づけたとしても必ずギャップはあるもので、俳優は学んで似せようとする部分と自ら作り出していく部分がある」という。「ライブやインタビューの映像をたくさん観ても、彼らがプライベートな時間にどんな風に過ごしていたかはわからない。それは記録映像には絶対に写っていない部分だからね。そこをどう演じるかで本人を“コピー”しているのか、“役を生きる”のか、違いが出ると思っていたんだ。例えば、ライヴ・エイドのシーンでは事前に僕たちはステージ上のバンドの動きをすべてマスターしていた。だから、次の瞬間にどんな動きをして、どんな出来事があるかは完璧に把握していたんだ。次の瞬間に僕は演奏しながら左を向いて、ギターを演奏しているブライアンと目が合うんだ、ってね。では、その瞬間にふたりの間にどんなフィーリングが生まれるのか? そこは映像には写っていない。それぞれの俳優が“役を生きる”瞬間が訪れるんだ」

マレックは、ふたりと同じ準備を積んだ上に、さらに役を深めなければならなかった。本作にはフレディが成功したにも関わらず孤独や哀しみを深めていく場面や、自分が両性愛者であることに気づく場面、自身のキャリアについて考え、苦しむ場面が丁寧に描かれているからだ。「多くの俳優にとって、自分を捨てて、役に“なりきる”ことはゴールだと思われているけど、僕は自分とフレディを結びつけて演じたかった。でも、彼が大きなステージに立っている映像を見ると“絶対にこんな風にはなれない!”って思ってしまう(笑)。でも、彼が抱えている葛藤は、僕にも理解できると思ったんだ。彼は移民であり、マイノリティであり、あの時代の空気や常識と対立し、やがて克服した。僕はそんな“人間としてのフレディ”を理解したかった。それはもしかしたら、フレディ・マーキュリーではなくファールク・バサラを見つめる営みだったのかもしれないな」

本作は、フレディの人生を主軸にしながら、クィーンの名曲誕生に隠された秘話や、メンバーが時に衝突しながら成長し、世界中のファンを魅了していく様が描かれる。リーは「彼らは“音楽が生み出されること”が、他のどんなことにも勝る関係にあった」と分析する。「僕が劇中で好きなのは、メンバーがぶつかり合いながら『地獄へ道づれ(Another One Bites the Dust)』が出来上がっていく場面だ。彼らは4人とも強烈なエゴがあったと思うけど、それらが衝突し、葛藤の頂点で新しい音楽が生まれ、そのことが他のすべてに勝ってしまう。そこが素晴らしいんだ!」

しかし、マッゼロ曰く「他の人には嘘をつけても、バンドのメンバーには嘘をつけない」状況で、彼らは追いつめられていく。さらにフレディは愛する女性メアリー・オースティンと交際するが、自身の性的指向に悩み、ド派手なパーティを開いても孤独や哀しみを癒せず、深い闇を彷徨うことになる。「フレディがあそこまでの成功をおさめるためには、相当なエゴが必要だったと思う。そしてスターダムを登ったことで、同時に心に大きな“穴”が開いてしまったと思うんだ。結果として彼はアートや音楽や周囲の人々で穴を埋めようとする。でも、あそこまでの栄光と引き換えに生まれた空虚な気持ちは、栄光と同じぐらい巨大なものだった。だから、彼は簡単には地に足をつけて生きられなかったんじゃないかな」(マレック)

幾度かのピンチを乗り越えるも限界寸前まで悪化してしまったメンバーの関係、どれだけ成功しても満たされないフレディの哀しみと彼にもたらされた“病”の知らせ。あまりにも過酷な状況に置かれた4人はいかにして再結束し、ライヴ・エイドのステージに立ったのか? 役を“生きた”者たちが描き出す、記録映像には写っていない“知られざるドラマ”がいよいよ明らかになる。

『ボヘミアン・ラプソディ』
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