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仲里依紗がドラマで見せる“2つの顔” 『エール』は喫茶店の奥様、『美食探偵』では殺人鬼に

リアルサウンド

20/5/22(金) 6:00

 『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)で驚異の殺人鬼を演じながら、NHK連続テレビ小説『エール』では喫茶店の奥様と2つの顔を見せる仲里依紗。常にその演技力の高さが評価され、最近はYouTuberとしてもブレイクするなど、多彩な才能を発揮している。

参考:【ほか場面写真多数】『美食探偵 明智五郎』では血まみれの殺人犯に

 『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(日本テレビ系)の女子生徒役でドラマデビューを果たし、『ハチワンダイバー』(フジテレビ系)ではコスプレ姿の女真剣師や、声優を務めた劇場アニメ『時をかける少女』の真琴役、2010年実写版『時をかける少女』の芳山あかり役など、かつては等身大で明るいイメージの役で主演を演じることが多かったが、2010年の映画『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』のゼブラクイーン役で、セクシーな黒のボンデージファッションを身に纏い、全てを悪に染める狂気の演技で女優として一目置かれて以来、“怖い女”の役がハマる女優としてのイメージが定着。

 特に、一見普通で地味な人が精神的に追い込まれたり、逆に追い込んだり、極限状態に陥ったときの演技は、今の女優界ではトップクラス。2017年の『あなたのことはそれほど』(TBS系)での浮気される妻役では、じわじわと夫を追い詰めていく怖さがリアル過ぎると話題を呼んだ。いつかピンとはった糸がキレそうな緊張感を醸しだし、豹変する怖さを演じるのが実に巧い役者だ。

 今回の『美食探偵』について仲は、「最近は、明るい役が多かったので、久しぶりに地味な役をいただいたかなと思ったら、すごいことをやってしまう人でした」(参考:仲里依紗、中村倫也主演ドラマ『美食探偵』出演 小池栄子の指示で夫の“解体”を試みる主婦に)と言うように、自分が狂気に追い込まれていく怖さを見事に演じている。第4話に登場した、マザコン夫を持つ妻・みどりは、愛する夫のために心を込めて料理を作ろうと、期待を膨らませる心優しい妻という役。しかし、現実は姑から届く煮物などのおふくろの味詰め合わせが冷蔵庫を占拠する日々で、自分の料理が作れず、夫への我慢が限界に達したみどりは、マリア(小池栄子)に相談し、殺人に手を染める。

 精神状態が極限にまで追い込まれ正気を失くした表情、そして悲しみから殺意の衝動に駆られる演技は仲の得意とするところで、その狂気の目覚めは多くの女性が共感できるもの。しかし、ここからが地上波ドラマでは前代未聞だろう。物語の前半を夫の解体作業に費やすのだ。最初は恐怖に慄くも、だんだんと慣れて、料理をするのに肉を切るような感覚で麻痺していき、最後はラップに包んで冷蔵庫に詰めていく。いつもは豹変し相手を追い込む怖さというものが仲の得意なイメージだが、もう引き返せない罪悪感に怯える恐怖、そこから感覚が麻痺していく姿は、まさにその究極とも言える演技。とにかく哀しくて切ない。物語では最後、マンションのダストシュートに身を投じたが、あれは粉砕型なのか、それとも逃走したのか、気になるところだ。

 一方『エール』では、喫茶バンブーで夫の梶取保(野間口徹)と働く店主・梶取恵役を演じている。主人公である、古山裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)に店の裏に物件を紹介し、2人が何かと相談や作業に使う場所として、喫茶バンブーは度々登場。当初は物語の成り行きを視聴者目線で見るような、久しぶりに落ち着いた役だと思われたが、突然語り出す自分自身の過去の経歴は夫も知らないことが多いという謎の女性だ。

 回を追う毎にエスカレートしていき、音が裕一のライバルの話をすると突如「ライバルか……最初の旦那もあの子に取られたから別れたのよね」と語り出したり、裕一が八丁味噌の愚痴を言ってると「味噌饅頭を届けにいったな、網走に。最後の面会なんて俺のこと忘れてくれって鉄格子の向こうで涙してたな」など、妄想なのか事実なのか、自分の世界に入り込み、過去の男について語り出す恵劇場が始まる。 

 仲が「私の登場シーンは、少し空気が変わります。みなさんの癒やしになれたらいいなと思って演じています」と言うように(参考:野田洋次郎、仲里依紗、三浦貴大、加弥乃、朝ドラ初出演 『エール』東京編の新キャスト発表)、夫婦関係が悪くなったり、作曲がうまくいかずドラマが息詰まっている状態のときに“恵劇場”が始まることで、物語の休憩場所としての期待に見事に応えている。

 喫茶店と言えば、2008年の主演映画『純喫茶磯辺』の、ダメ親父を叱りながらも暖かく見守る高校生の娘であったり、2013年のドラマ『ラッキーセブン』(フジテレビ系)では、大泉洋演じる淳平にツッコミを入れまくるなど、もともと気さくな演技も得意としている仲。最近ではYouTubeチャンネル「仲里依紗です。」で、スッピンからのガングロコスメや、「インスタ映えじゃなく、もっと自分を喋って表現してみたかった」と足をおっ広げるなど、気さくな一面を見せている。恵役は、そんな素の仲に近いキャラなのかもしれない。

 恵劇場は、『美食探偵』で見せるような自分の世界に入り込んだ演技を、『エール』というコメディタッチのドラマの中で見せているとも言えるだろう。もし『エール』の中で、みどり役のように私は過去に夫を殺したと言っても、おそらく面白く見えてしまうのではないだろうか。それができるのは、やはり今まで様々な役で培ってきた確かな演技力と、そこから深読みしてしまうミステリアスさが、仲のイメージにあるからこそ。突如ミルクセーキの作り方映像が登場するなど、『美食探偵』同様に先が読めない展開のキャラとなっているだけに、この先も目が離せない。 (文=本 手)

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