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アイナ、チッチ、アユニ・D、ハシヤスメ……BiSH、メンバー6人のソロ活動から見える個性

リアルサウンド

20/3/28(土) 6:00

 BiSHはパンキッシュであり個性が強いアイドルグループである、というイメージを持っている人は多いだろう。その認識はきっと正しいだろうが、それはグループを構成しているメンバーが個性的だからである。そんなBiSHのメンバーは今、個々のソロ活動が活発化している。そこでこの記事では、それぞれのソロ活動から見えてくる個々の側面に光を当てながら、各々の個性に迫ってみたい。

(関連:アイナ・ジ・エンド「死にたい夜にかぎって」MV

 まず、アイナ・ジ・エンドにスポットを当ててみよう。アイナはBiSHの歌声においても柱的な存在であり、声そのものに圧倒的な個性を宿している。聴けば一発でアイナの歌声とわかるそのハスキーボイス。その歌声からは独特の深みと説得力を感じさせられる。歌うだけで、どんな歌も自分のものになるような個性があるわけだが、アイナのソロ作品は必ずしも自分の個性そのものを武器にしているようには見えない。というのも、アイナはMONDO GROSSOやジェニーハイを始めるとする外部アーティストとコラボをしたり、企業のTVCMソングなども担当している。つまり、意図的に外部と混じり、場合によっては擬態するような周到さも持っているのだ。ここでポイントなのはアイナの場合、仮に擬態をしたとしても個性がにじみ出てしまっているところにある。演じていても個性になるし、演じることそのものが、すでに個性になってしまうような部分があるのだ。

 次は、アイナとある種、コントラスト的な立ち位置にいるセントチヒロ・チッチについて見ていきたい。チッチがソロ活動としてリリースした作品は一曲のみだ。「夜王子と月の姫」という銀杏BOYZのカバーである。現状、このカバー曲だけしか音源が発表されていないので、この曲でチッチのソロ活動の個性を見極めるのは難しいが、注目したいのは、この曲に対するスタンス。チッチ本人は、この曲が自分の人生においてとても大切なものであると公言している。つまり、銀杏BOYZのファンであり、原曲を聴きに聴きまくった人間なのである。その気になれば銀杏BOYZに寄せることもできた中で、チッチの歌い方はわりと原曲と距離を置いたものになっている。サウンドも、同じロックバンドのアレンジではあるものの、チッチの「夜王子と月の姫」はノイジーで、どこか幻想的なものを感じさせるのである。00年代の青春パンクロックというよりも、90年代UKロック的な部分があるのだ。これは演奏・アレンジをリーガルリリーに手掛けてもらったところが大きいだろう。思えば、チッチは自分の主催イベントに、リーガルリリーをはじめ、GEZANや突然少年など、同じ「バンド」の中でも、流行りとは違う方向に進む“尖端”のバンドを積極的に招聘している。開拓の精神がそこにあるように感じるのだ。そしてその精神こそが、チッチのソロ活動の個性に繋がっているように思うのである。

 アユニ・DはPEDROというバンドを結成して、ソロ活動を行っている。PEDROの圧倒的な目玉はサポートギターにNUMBERGIRL、toddleの田渕ひさ子を招聘しているところだろう。田渕がギターを担当していることからも分かる通り、PEDROの音楽性のベースにあるのは90年代のオルタナティブロックやガレージロックである。ソリッドなギターが空間を塗りつぶすような荒々しい音楽を志向しているように感じる。アユニのソロ活動は(他のメンバーと比べて)もっともジャンルを意識しているように思うし、一番わかりやすく、自身の趣味性や指向性の追求しているように感じる。

 ハシヤスメ・アツコのソロ楽曲はアユニの作品と対比的である。ハシヤスメ・アツコがリリースした「ア・ラ・モード」はBiSHのコアな部分であるロックやパンクから距離を置いたような楽曲となっている。ジャケットもピンクが主体で華やかだし、サウンドも打ち込みが主体の「踊れる」ナンバー。ロックよりもダンスに近い趣きであり、コミカルなキャラクターが生かされたような楽曲だ。

 モモコグミカンパニーとリンリンはソロ活動での音源リリースこそ行っていないが、モモコグミカンパニーは書籍『目を合わせるということ』を発売して、多彩な才能を発揮している。リンリンはメンバー初となる公式Instagramを開設して、モデル的なアーティスト性を開花させている。存在感のあるファッションセンスを示すことで、BiSHでのパフォーマンスとは違う個性を提示していることがわかる。

 このように、6人それぞれがベクトルの違う個性を発揮していることがわかる。ざっくり言えば、アイナは擬態しながら個性を発揮させているという意味で“女優”的に、チッチは常に新しいものを取り入れて「今」を更新していくパイオニア的に、アユニは自分のこだわりを追求するロックシンガー的に、ハシヤスメ・アツコはグループの外側にあるものを使って表現する“アーティスト”的に、モモコグミカンパニーとリンリンはそもそもBiSHのジャンルと違う分野で自分を表現する“作家・芸術家”的にそれぞれ活動をしている。各々のソロ活動はどこか重なるものがあるようで、まったく違う個性を発揮しているのだ。ただし、こういうスタンスこそが、BiSHのコアなものをより研ぎ澄ます結果に繋がっているように感じるのである。(ロッキン・ライフの中の人)

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