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平辻哲也 発信する!映画館 ~シネコン・SNSの時代に~

アジア映画に特化して13年「シネマート新宿」 劇場発信型映画祭「のむコレ」は36本上映!

隔週連載

第23回

19/11/3(日)

韓流ブームは下火になったものの、今も根強いファンを持つアジア映画。なかでも韓国映画、中国語圏の映画をよく上映するのが「シネマート新宿」だ。2006年12月にオープンし、来月で丸13年。熱いファンのリクエストに応えるラインナップを常々提供してきた。11月15日(金)からはシネマート新宿、シネマート⼼斎橋の番組編成担当する野村武寛(たけとも)さんがセレクトする「のむコレ3」を開催。ここだけでしか観られないラインナップが見どころだ。

東京メトロ丸の内線「新宿三丁目」駅 B2 出口より徒歩1分。新宿文化ビルにあるのが「シネマート新宿」。6階のスクリーン1は座席数335 (うち車椅子2)、スクリーンサイズ横11.0m。7階のスクリーン2は座席数60、スクリーンサイズ横 4.0mと小ぶりだが、イベントではゲストを間近にみることができ、ものすごい熱気を生み出す。6階にはオリジナルグッズ、DVD・CD、専門雑誌などの物販スペースに売店もある。

スクリーン1
スクリーン2

新宿文化ビルの前身は、1937年オープンの東宝直営館「新宿映画劇場」。戦前のニュース映画専門館、戦後の新宿文化劇場を経て、1962年にはアート・シネマ・ギルト(ATG)の封切館「アートシアター新宿文化」としてリニューアル。1974年には新宿文化ビルが建て直され、4つのスクリーンを持つ「新宿文化シネマ」となった。このうち2館を、アジア映画に特化して事業展開する独立系映画会社「株式会社エスピーオー」が引き継ぎ、「シネマート六本木」(06年3月開館、15年6月閉館)、「シネマート心斎橋」(06年4月開館)に次ぐ3号店とした。

支配人の中根春樹さんは自身も韓国映画ファンで、劇場勤務13年。シネマート六本木、シネマート新宿のオープンを手掛けてきた。「動員1位は昨年上映した(光州事件の実話を基にしたソン・ガンホ主演の)『タクシー運転手 約束は海を越えて』です。3か月間興行し、イ・ビョンホン主演『夏物語』(2007年1月公開)の記録を11年ぶりに更新しました。今年は『工作』がNo.1です。日韓関係の悪化は言われていますが、日本では政治と文化を切り離して考える方が多いように感じます。目に見えての影響はありません。ブームは終わり、ジャンルとして定着したんだと思っています」と話す。

支配人の中根春樹さん

興収ベスト5は『タクシー運転手 約束は海を越えて』『夏物語』『工作 黒金星と呼ばれた男』『哭声 コクソン』『1987、ある闘いの真実』と韓国映画が並ぶ。客層は作品にさまざまなだが、男女比は5:5。最近ではアジア映画だけではなく、ウィリアム・フリードキン監督の『恐怖の報酬 オリジナル完全版』、約30年を経て、初めて日本公開されたオランダのサイコ・サスペンスの傑作『ザ・バニシング -消失-』、『ストリート・オブ・ファイヤー』や『さらば青春の光』など旧作のデジタルリマスター版の人気も高い。

『さらば青春の光』に合わせた館内展示

また、金曜以外の平日は、全てサービスデイというのもうれしい。月曜メンズデイ(男性1200円均一)、火・木曜TCGカード会員サービスデイ(カード提示で1100円)、水曜レディースデイ(女性1200円均一)。ほかにも全国共通の毎月1日の映画サービスデイ(1200円均一、12月1日は1100円)はもちろん、毎月25日のシネマートデイ(1000円均一)もあるのだ。

17年の「のむコレ」では、中国歴代興収第1位を記録した『戦狼 ウルフ・ オブ・ ウォー』を上映し、在日中国人の映画ファンも多数来場する大ヒットに。昨年は、ヨークシャー地方の自然を背景に男同士の恋を描いたイギリス映画『ゴッズ・オウン・カントリー』が毎回満席を記録。その後、2作は劇場公開されるなど「のむコレ」は年々、規模も反響も大きくなっている。

6階のロビー、売店

今年はイ・ジュンギ主演による王朝ロマン『王の男 デジタルリマスター版』を始めとする韓国映画、2019 年タイでNo .1 ヒットのホラーコメディ『祟り蛇ナーク』などをラインナップ。LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クエスチョニング=性自認や性的指向を定めない人)映画も4本。聴覚障害を持ち、聴覚障害者向けの映画で多数の受賞歴を持つ今井ミカ監督が、初めて音声付きの映画に挑戦した『虹⾊の朝が来るまで』も注目だ。これはLGBTQのろう者の人々が織り成すヒューマンドラマだ。

SNS上で前評判がいいのは、『王の男』、ドニー・イェン主演の『スーパーティーチャー熱血格闘』、マ・ドンソク主演『ザ・ソウルメイト』、リュ・ジュンヨル主演の『金の亡者たち』など。「期間は来年2月までと長いですし、特集上映というよりも、日替わりでいろんな映画をやっている風に思っていただければ。新宿はエンタメの街。アジア映画に強い映画館という位置づけを維持しつつ、よりエンタメ感のあるエッジの効いた作品をお届けできれば、と思っています」と中根支配人。今後も、1997年の韓国の金融危機をテーマにした『国家が破産する日』(11月8日公開)や北欧のヘビーメタルバンドの活躍を描く『ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!』(12月27日公開)など話題作が続く。

映画館データ

シネマート新宿

住所:新宿区新宿3丁目13番3号 新宿文化ビル6F・7F
電話:03-5369-2831
公式サイト: シネマート新宿

プロフィール

平辻哲也(ひらつじ・てつや)

1968年、東京生まれ、千葉育ち。映画ジャーナリスト。法政大学卒業後、報知新聞社に入社。映画記者として活躍、10年以上芸能デスクをつとめ、2015年に退社。以降はフリーで活動。趣味はサッカー観戦と自転車。

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