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『レッドアイズ』最終回は意味深なラストに 亀梨和也の涙の演技に圧倒される

リアルサウンド

21/3/28(日) 11:35

 「その事件から、目を離すな。」ーー『レッドアイズ 監視捜査班』公式サイトのキャッチコピーだ。言われなくとも、目を離す隙をまるで与えなかった全10話だった。

 第9話で、美保(小野ゆり子)の殺害を自白した小牧(松村北斗)。やはり鳥羽(高嶋政伸)が、裏で糸を引いていた。小牧の腕の傷もタトゥーも、自白もすべてフェイク。夜の闇に、伏見(亀梨和也)の叫びーー「Roar」が響き、怒りに燃える眼ーーレッドアイズが光る。

 伏見は、小牧を撃ったと思われる真弓(TAK∴)を追っていた。しかし現場の状況から、発砲したのは伏見と判断され、長久手(川瀬陽太)、姉川(長田成哉)ら捜査一課は、伏見を確保すべく取り囲む。そこへ飛び込んできた湊川(シシド・カフカ)は、伏見に加勢。KSBCメンバーはみな、伏見を信じていた。長篠(趣里)は真弓の情報を、島原(松下奈緒)は、奥州(矢島健一)のPCから盗み出した「B2ファイル」のデータを、伏見のもとへ向かう山崎(木村祐一)に託す。

 鳥羽の妻・梓(磯山さやか)はかつて、暴行事件の被害に合い、のちに自殺していた。梓を暴行した犯人として逮捕されたのは、外務大臣・下関(山田明郷)の息子・悟(佐久本宝)。しかし「大臣の息子」を守るため、警察は監視カメラに残っていた証拠をもみ消した。悟は罪に問われるどころか、事件ごとなかったことにされたのだ。

 小牧の命と引き換えに、鳥羽の協力を命じられた伏見。真弓と伏見の手にかかれば、ターゲットを誘拐することなど造作ない。鳥羽の狙いは、梓を暴行した悟と、隠蔽を主導した奥州だった。事件後、SNS上でのいわれのない中傷を苦に自殺した梓。その原因となったでっちあげ記事を書くよう指示した人物こそ、奥州だったのだ。

 ロアー劇場にて二人を手にかけ、今度は湊川へと銃口を向ける鳥羽。目的はもはや復讐にあらず、鳥羽はとっくに怪物になっていた。伏見のなかに眠る「復讐に憑りつかれた怪物」が、自分を食い殺しにくるーーそうしたスリリングな「快楽」のために伏見の大切な人をもっと傷つけ、奪うのだと、鳥羽は恍惚とした表情で恐ろしい真意を語る。

 真弓の服用する薬が切れるタイミングを狙い、一気に勝負をつけた伏見は、いよいよ鳥羽と対峙する。そこで明かされた、美保殺害の真相。出版社につとめていた美保は、上司から「恋人が警察官である」ことを脅しに、梓を貶めるでっちあげ記事を書かされていた。その事実をもって鳥羽は、美保が「俺のために」殺されたのかもしれないと、伏見の心にとどめをさす。さらに美保の人生を下劣な言葉で形容し、伏見の怒りを煽る鳥羽。「殺してやる」ーー鳥羽の首にかけた伏見の手に力がこもる。「ずっとあなたを見てる」「自分を見失わないで。いつまでも、強くて優しいあなたでいて」

 美保の携帯電話のなかに残されていた、伏見へのメッセージ。奇しくも、小牧が商売のために入手したデータが、伏見を引き留めた。伏見を襲う究極の怒り、そして究極の悲しみと、愛。数分間にわたる、亀梨の涙の芝居は圧巻だった。

 人生は、大切な存在をいつ失うとも分からない恐怖と、戦い続けることでもある。ならばいっそ、誰とも出会わず、関わらず……そうすれば、悲しみを知らずに生きていけるのだろうか。けれど人は出会ってしまう。鳥羽側の内通者でありながら、おそらく無意識に身を挺して長久手を守った姉川もそうだ。信じたい、守りたい……生きているかぎり、懲りずに生まれてくる感情に葛藤する。それもまた、人生なのだと思う。

 親に捨てられ、決して裏切ることのないプログラミングの世界にのめり込んだ小牧。息子を守るため、夫を手にかけた湊川。同じく息子のため、詐欺に協力した山崎。恋人を失い、復讐のためだけに生きてきた伏見。傷つけ傷つけられ、「もう誰も要らない」と思った日もあっただろう。それでもいつの間にか、こんなにも信じ合い、守り合いながら生きている。島原もまた、かけがえのない人を失った。けれど、憎むでも逃げるでもなく、今そこに生きている大切な人ーー妹・はるか(高橋ひかる)と向き合い、想いを伝える選択をする。信嗣(笠原秀幸)の一件以降、互いに接し方が分からなくなってしまっていた二人は、ようやく心のうちを伝え合うことができた。

 ラストシーン。晴れ晴れとした空の下に映るトートバッグ。バッグチャームには、鳥羽の患者たちが身に着けていた“あの”マークが刻印されている。バッグを手にとり、青いコートを羽織って歩くはるか。明るく元気な「石’s kitchen」の看板娘の顔ではない、どこか冷めた目。防犯カメラが、作動中の「赤いランプ」を光らせ、はるかの姿を捉えている。

 KSBCは解散したが、今このときも「レッドアイズ」は、危険がひそむ街と人々の心の闇を見つめている。

※高橋ひかるの「高」はハシゴダカが正式表記

■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。Twitter

■配信情報
『レッドアイズ 監視捜査班』
Huluにて配信中
出演:⻲梨和也、松下奈緒、趣里、シシド・カフカ、松村北斗(SixTONES)、高橋ひかる、木村祐一
脚本:酒井雅秋、福田哲平、まなべゆきこ
音楽:カワイヒデヒロ
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:尾上貴洋、茂山佳則(AX-ON)
演出:水野格、長沼誠ほか
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/redeyes/
公式Twitter:@redeyes_ntv
公式Instagram:@redeyes_ntv

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