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倉木麻衣、純粋に音楽と向き合った20年の歳月 ファンと駆け抜けた“薔薇色の人生”はこれからも続く

リアルサウンド

19/11/29(金) 12:30

 倉木麻衣が、12月8日にデビュー20周年を果たす。8月14日には20周年YEAR記念オリジナルアルバム『Let’s GOAL!~薔薇色の人生~』をリリース。『20th Anniversary Mai Kuraki Live Project 2019 “Let’s GOAL!~薔薇色の人生~”』と題して、全国15カ所でのライブを完走した。2019年は、まさにこれまでのキャリアの集大成とも言えるステージを披露してきた倉木。デビュー日を控えた今、彼女の誕生日直前(10月26日)に行なわれた東京国際フォーラム ホールAでの公演の模様を振り返るレポートをお届けする。

参考:倉木麻衣が語る、“出会い”が育んだデビュー20周年の軌跡「音楽を発信していくことこそ私の使命」

■20年前と変わらぬ姿でサプライズ登場

 開演時間になると、会場に流れていたBGMとライトがフェードアウトしていく。暗くなった客席ではローズ型ペンライトがキラキラと輝き、アニバーサリーアルバムのタイトルにある“薔薇色の人生”とは、この光=ファンの愛情に満ちた倉木の人生そのものだと痛感する。

 そして聞こえてきたのは、この20年、多くの人が耳にしてきた「Love, Day After Tomorrow」のイントロだ。スクリーンに流れた映像は、懐かしのMV。透明感のある歌声、ミステリアスなビジュアルで、鮮烈デビューを飾った倉木麻衣の姿が、そこに映し出された。

 感慨深く眺めていると、ステージ中央のセットが回転。ハーフアップのロングヘア、グレーのハイネック&ノースリーブのニット、そして黒いタイトなパンツ姿で椅子に腰掛け、MVをそのまま再現した倉木が登場したのだ。そのあまりに変わらぬ姿に、会場から大きな歓声が上がった。

 「皆さん、こんばんは! 今日は最後までLet’s Singing!」そう客席に声をかけると、一緒に「L・O・V・E」の手振りをして盛り上がる。確かに、人としての年輪を重ねているのだが、倉木の印象がこれほど変わらないのは驚異的だ。もちろん、同じ髪型と衣装を身につけたからといって、人間は変わらぬ印象を作れるわけではない。

 この夏、倉木に直接インタビューをした際、彼女自身が変わらない理由をこんなふうに語っていた。「きっと音楽に対する想いが、変わらないからかもしれませんね。大好きな気持ちだったり、もっといろんなライブを皆さんに見ていただいて、元気をお届けしたいっていう気持ちだったり」(参照:倉木麻衣が語る、“出会い”が育んだデビュー20周年の軌跡「音楽を発信していくことこそ私の使命」)

 音楽に対するピュアな気持ち、ファンとまっすぐ向き合う姿勢……倉木麻衣とは誰もが変わってほしくないと願う部分はそのままに、挑戦と進化を続けてきた歌姫なのだ。「いつか夢は叶う 歌が大好きで 歌手になったあの日から20年…」黒いスクリーンに白い文字が浮かび上がる。それは直筆で綴る感謝の言葉たち。倉木の表情に、仕草に、言葉に、20年変わらない純粋さが透けて見えるのだ。

■“様々な楽器とのセッション”の夢も実現

 ときどき胸に手を当てながら、またその手をファンへと掲げながら、「Stay by my side」「Secret of my heart」と往年のヒットソングを丁寧に歌っていく倉木。唇に左手の人差し指を当てて“シークレット”な仕草をしてみせるチャーミングな一面も。歌うことが好きな女の子が叶えた夢が、20年の時を経ても色あせない奇跡を体感する。

 これまでのシングルジャケットが次々と出てくる華やかなVTRを経て、再登場した倉木は白いロングシャツを腕まくりしたアクティブな姿に。「皆さん、楽しんでいきましょう」と観客をリードしつつ「Delicious Way」では〈Oh Delicious Way〉の歌詞に合わせて手を挙げる動きを楽しむ。

 続く「Long distance」ではオープニングアクトを務めた期待の新星ボーカルデュオall at onceをコーラスに迎えるなど、周囲を巻き込んでライブを盛り上げていく。「Your Best Friend」は、大空に飛んでいく風船の映像に乗せて伸びやかに歌う。まるで、この会場に来られていない全国のファンにも届けるようだ。

 薔薇の模様のドレスに身を包み、サックスとピアノのシンプルな演奏に乗せて、1音1音紡ぐように歌った「Missing You」など、倉木の多彩な歌声を堪能できる曲が続く。そして、夢だったという“様々な楽器とのセッション”へ。

 ストリングスカルテットの奏でる音色にのせた「冷たい海」。デビューシングルをはじめ多くの名曲を生み出してきた大野愛果の弾くピアノに合わせて「Tonight, I feel close to you」をデュエットで披露。さらに社会貢献活動にも精力的に参加している倉木が感銘を受けたという、難病から再起を果たしたピアニスト・西川悟平と「あなたがいるから」を熱唱。

 そして、親友を思って作ったという「happy days」などを、デビュー当時から倉木のライブを支えてきたバンドメンバーたちの演奏で、しっとりと歌い上げる。また一つ新たな夢を叶えて、清々しい笑顔を見せる倉木だった。

■『名探偵コナン』との贅沢なコラボ&SAWAGE☆LIVE!

 倉木のキャリアを語る上で、決して欠かすことのできないのがアニメ『名探偵コナン』とのコラボだ。突然、会場に聞き覚えのある、あのコナンの声が響き渡ると、これまで倉木が歌ってきた同番組のテーマソングが一挙に紹介される。

 2000年の「Secret of my heart 」から、2019年の「きみと恋のままで終われない いつも夢のままじゃいられない」(以下、「きみ恋 いつ夢」)まで。さすがギネス世界記録にも登録されるだけあって、これだけ並ぶと圧倒的だ。

 「Thank you&To be continue」というコナンからのメッセージが届けられると、スクリーンに『名探偵コナン』のアニメ映像と共に「Time after time ~花舞う街で~」「渡月橋 ~君 想ふ~」、そして「きみ恋 いつ夢」の生歌が披露されるという、ここでしか味わえない贅沢な演出が待っていた。さらに、倉木が声優に挑戦した「キュンキュンしちゃうよ」のシーンも流れて、最後の最後までファンを喜ばせるのだった。

 観客のテンションが上がったところで、さらに衣装チェンジ。デニムや染め物など様々なテキスタイルが組み合わせられた衣装は、アルバムの仕様に繋がる5大陸のエッセンスを感じさせる仕上がり。日本のみならず、これから世界に向けて音楽を発信していこうという気合を感じさせる。披露された楽曲も「Let’s Go!」「Change」とくれば、その勢いはさらに加速していく印象だ。拳を突き上げ、ファンのクラップに合わせて、ダンサーと共に行進していく倉木。歌う倉木自身も、そして聴くファンのことも鼓舞するような楽曲が続く。

 「SAWAGE☆LIFE」では、よく見るとスクリーンに映し出された文字が“LIFE”から“LIVE”になっているではないか。ちょうど、この日は土曜日。〈SAWGE☆LIFE サタデーナイト! 思いっきりハチャメチャに〉の歌詞にリンクする盛り上がりっぷり。 〈明日は〉と声をかけると、客席からも〈日曜日〉と大合唱が返ってきた。

■3時間超に及ぶライブでも伝えきれない感謝の想い

 「まだまだ熱く、楽しんでいきましょー!」そう叫ぶと、倉木はステージを縦横無尽に動き回る。「Stand Up」「ベスト オブ ヒーロー」「Feel fine!」「薔薇色の人生」を歌いながら、「一緒に!」「もっともっと!」と声をかけ、そんな倉木に応えるように、ファンも叫び、跳び、会場が大きく揺れる。

 ステージ上のダンサーと波乗り風に踊ってみたり、「ダダダ、トゥルトゥトゥトゥトゥ……」とサックス奏者とコラボしてみたり、アニバーサリーライブという特別な空間を楽しみ尽くす倉木。そして、「東京の皆さん、20周年どうもありがとー」と叫ぶと同時にゴールドの紙吹雪が会場に舞う。端から端まで走り回って、何度も何度もお辞儀をする。その健気な姿勢にまた、次の20年も応援せずにはいられない。

 「L・O・V・E」の手振りを胸に一度はステージを去るも、アンコールを求める声は大きくなる一方。もちろん、まだまだこの場を楽しみたいのは倉木も同じ。すぐにライブTシャツに身を包んだ倉木が再登場し、彼女自身がアルバム制作時に励まされたという曲「JUMP! JUMP!」を披露。

 また、両手でハートを作りながら「幸せの扉」を愛情たっぷりに歌い、「傷つくことを恐れず、一歩踏み出す勇気を」とエールを込めて「chance for you」を熱唱すると、「ZARDの坂井泉水さんの想い、皆さんへのエールが届きますように」と「負けないで」のカバーも噛みしめるように歌い上げた。

 拳を胸に当てて、何度も口で“負けないで”とつぶやく倉木の表情は真剣そのもの。歌の力で様々な困難に直面している人に少しでも勇気を、元気を届けたい、という切なる願いが伝わってくる。そして、ずっと歌い続けてきた「always」と共にスクリーンには、2001年の1stライブから、今回の20周年アニバーサリーライブまでの映像が流れる。その倉木の願いは、変化の多いこの20年で変わらずに貫かれてきたものなのだ。

 すると、どこからかバースデーソングが聞こえ、10月28日に37歳の誕生日を迎える倉木のためにスペシャルケーキが登場。「倉木麻衣、ハタチになりました(笑)」と20周年にかけた冗談を交えながら、ファンと記念撮影を楽しんだり、共にステージを創り上げたバンドメンバーやダンサー、スペシャルゲスト、1人ずつ丁寧に紹介していく。

 「皆さんの想いを重ねて! Let’s! GOAL!」ライブグッズのタオルで作ったゴールテープめがけ走り抜ける倉木。3時間を超えてもなおファンへの感謝を伝えきれないと言わんばかりに、会場を駆け巡り、できる限りファンに近づきハイタッチをしていく。なんてポジティブで、ピュアで、美しい空間なのか。倉木麻衣のライブに来ると、そんなキラキラと美しいものに改めて触れたような気持ちになる。

 「これからも前向きに。体に気をつけて。笑顔でお会いしましょう」

 変化の多い現代。悲しいニュースも絶えない。だからこそ、ずっと変わらずに元気や勇気を届けようと活動を続ける歌姫の存在が必要なのだ。また次の20年も、倉木の歌から元気と勇気をもらいながら、一歩一歩また歩み続けようではないか。そして、また次のライブに笑顔で会えるように。(佐藤結衣)

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