Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

くじら、syudou、TOOBOE……音楽シーンの鍵を握る存在に? yamaやAdoら楽曲手がけるクリエイターに注目

リアルサウンド

21/2/21(日) 12:00

 サブスクリプションサービスが普及し、古今東西の様々な音楽に誰でも簡便にアクセスできるようになった昨今、注目される音楽の傾向も徐々に変化しつつあるように思う。その中で近年顕著なのが、詳細のよく知られていない歌い手たちがチャートに頻発するようになったことだ。たとえば、先日一発撮りのパフォーマンスを配信するYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』に登場し、その抜群の歌唱力と謎めいた姿で話題になったyama。昨年「春を告げる」で注目を集め、現在も各種チャートで上位を維持している。また、目下バイラルチャート上位で猛威をふるっている「うっせぇわ」を歌うAdo。yama同様に、今年の台風の目となりそうな予感だ。

 忘れてはならないのが、こうした作品を作り上げているクリエイターたちの存在である。言うまでもなく歌い手の正体が不明だからといって、作品が必ず注目されるわけではない。そこには必ず注目を集めるに値する楽曲のクオリティがある。現在音楽シーンを賑わせる作品を生み出したクリエイターたちに注目してみたい。

くじら

 yamaの「春を告げる」をプロデュースをしたのがくじらだ。2019年にオリジナル曲「アルカホリック・ランデヴー」をYouTubeとニコニコ動画に投稿して以来、ボーカロイドを使った音楽と写真をメインに活動している。作った曲をボーカロイドに歌わせることもあれば、歌い手を迎え入れることもあり、昨年リリースしたアルバム『寝れない夜にカーテンをあけて』にはAdoやyamaといった歌い手の他にめいちゃん、ねんねといったボーカリストたちをフィーチャーしている。

yama – 春を告げる (Official Video)

 自身のブログに掲載されているプロフィールに「普段の辛いこととか、理不尽とか、生きてて苦しいと思うような時、あなたと一緒にいてくれる曲を書いています」(※1)とあるように、くじらの音楽は人間の暗い一面に着目したものが多い。

〈濁った泥を抱きしめる毎日でした〉(「ひぐらし」)

〈正義は必ず勝つって 正義って何なの?〉(「ねむるまち」)

〈狂気は何も音を立てずに次から次へと吐かれる煙と猶予だ〉(「Night Candy」)

 こうした歌詞が若い世代に広く共感を呼んでいる理由のひとつだろう。ただし、それ以上にサウンド面でのテクニックも大きい。一見言葉だけに注目するとダウナーになりかねない作風だが、それを伝えるお洒落なリズム〜コード感と、お洒落すぎないポップさも感じる。そのバランスが絶妙なのだ。だからこそくじらの作品は、多くの人びとに寄り添うことができるのだろう。

ひぐらし feat.水槽(Official Video)

syudou

 Adoの「うっせぇわ」によって一躍注目を浴びているのがsyudouである。2012年よりネット上で音楽活動を始めたsyudouは、「邪魔」や「ビターチョコデコレーション」、「コールボーイ」といった楽曲が人気を集め、2019年には1stアルバム『最悪』を発表。syudouの音楽は人を突き刺すような攻撃的な歌詞が特徴だ。たとえば、昨年11月にリリースした3rdアルバム『必死』の表題曲には以下のようなフレーズがある。

【Ado】うっせぇわ

〈どいつもこいつもマジうるせぇ 他人がどうこうとか知らねぇカス〉

〈誰かの力で偉そうにしている テメェよりよっぽどいい〉

 こうした刺激的なリリックをダークなサウンドに乗せている。人間の暗部を曝け出すような暴力性が魅力だ。

TOOBOE

 yamaが昨年10月にデジタル配信した「真っ白」や、今月リリースしたCDシングル『麻痺』の全収録曲を手がけたのがTOOBOEだ。TOOBOEは音楽クリエイターjohnによるソロプロジェクト。当サイトのインタビューで彼は、“TOOBOEらしさ”について「負の感情」と答えている。(※2)

〈よれたTシャツの裏 隠した弱い心 見えないフリをしていたよな〉(「麻痺」)

 こうした人の心の負の部分にフォーカスを当てる歌詞に対して、ホーンセクションが活躍するサウンド面は迫力充分。また、高い音程から低い音程までyamaのボーカルワークを余すことなく堪能できる曲作りも秀逸だ。メロディメイカーとしての才能にも注目したいところである。

yama 『麻痺』Music Video

 どこか共通する部分もありながら、それぞれに違った個性を持つ3人のクリエイター。今後も楽曲の力で音楽シーンを盛り上げていってほしい。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。Twitter(@az_ogi)

<参照>
(※1)くじら公式ブログ:https://whale0302.fanbox.cc
(※2)yamaへの楽曲提供も話題 クリエイター john=TOOBOEに聞く、ソロプロジェクト始動の背景と創作活動の原点:https://realsound.jp/2020/10/post-646770.html

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む