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ヒトリエ、無観客でも圧巻の演奏を響かせた7周年記念ワンマン 迫力の映像演出&濃密なグルーブで新作への期待も満載に

リアルサウンド

21/1/26(火) 17:00

 メジャーデビュー7周年を記念して、1月22日にEX THEATER ROPPONGIで開催されたヒトリエのワンマンライブ『HITORI-ESCAPE 2021 -超非日常六本木七周年篇-』。当初は、有観客ライブをリアルタイムでも配信するという形で開催する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を受け、急きょ無観客での開催にシフト。バンドとしてはやりきれない思いもあったはずだが、それすらもぶっ飛ばすような熱演は、力強く前へと進み続けるヒトリエの姿を見せつけるのに十分だった。

 シノダ(Vo/Gt)の鮮烈なギターリフ、イガラシ(Ba)の唸るようなベースライン、そしてゆーまお(Dr)のドラムが叩き出す高速ビートが1曲目「センスレス・ワンダー」から全速力で走り出す。動き回りながらメンバーにぐいぐい寄るカメラワークがライブのダイナミズムをこれでもかと映し出す。そのまま昨年12月にリリースしたばかりの新曲「curved edge」へ。シノダが作詞作曲を手掛けた同曲だが、ドラマティックなメロディと重厚な3ピースのアンサンブルが、3人体制で本格的な第一歩を踏み出したヒトリエの今を力強く描き出していく。「私には見えます。このEX THEATERを満員にしている無数の念が。心が爆発するようなパーティチューンを次々とお届けしたいと思います」。そんなシノダの宣言から「イヴステッパー」に突入すると、インディーズ時代の楽曲「るらるら」へ。大胆に横長に切り取られた画面がシノダとイガラシの絡みを切り取っていく。

 「2021年の初仕事がEX THEATERでの無観客2デイズっていうのはなかなかにイカれてると思う……」。シノダが画面越しにそう語りかける。前日のファンクラブ会員限定ライブから一夜明けての疲労感に「絶望した」と言いながら、いざライブを始めると「頭がバグって元気が出てくる」とバンドマンならではの心境を語る。そしてハンドマイクで「SLEEPWALK」へ。ステップを踏んだりドラムのライザーに腰掛けたりしながら、難しい譜割りのこの曲を軽やかに歌いこなす。

 アニバーサリーライブということはもちろんだが、2月17日に現体制で初のアルバム『REAMP』のリリースを控えているというタイミングもあるのだろう、3人の生み出すグルーブはどこまでも濃密で、演奏のテンションは高い。いわゆるバンドとして完全に「仕上がっている」のが伝わってくる。なかでも目を見張ったのがシノダのボーカル。壮絶なシャウトから美しいハイトーンまで、曲の情景を何倍にも増幅させて伝えてくるその歌声には、いよいよボーカリストとしての個性を発揮し始めたような手応えを感じる。

 彼がボーカルをとる形で新たなスタートを切ったヒトリエだが、言うまでもなくそこには複雑な感情が渦巻いていたはずだ。だがこの日のライブで見るシノダは、まごうことなきフロントマンとしてのオーラを纏い、自信たっぷりにマイクを握っているように見えた。「RIVER FOG, CHOCOLATE BUTTERFLY」に「カラノワレモノ」など、ヒトリエがこれまで生み出してきたバラエティ豊かな楽曲たちが、新たな息吹を得て躍動する。タイトでエモーショナルな演奏に表情豊かな歌、そこにレーザーライトや映像エフェクトを駆使した配信ならではの演出も相まって、グッとアップデートされたヒトリエの今が立ち上がる。控えめにいっても「圧倒的」である。

「世の中はどんどん変わっていって、どんどんおかしなことになっている気がする。そのなかでも変わらないことがありまして。それはたとえば、次にやる曲がとんでもなくいい曲ということだったりします」

 「(W)HERE」を前にシノダが口にした言葉は、ヒトリエとして築いてきた歴史に対する揺るぎない自信を感じさせた。「このビートで踊れなきゃ2021年は生き残れないぜ」という挑発的な口上とともに繰り出された「トーキーダンス」(ミュージックビデオを彷彿とさせるモノクロ映像も印象的だった)での、ゆーまおの高速ダンスビートと速射砲みたいなボーカルワークは、その斬新さが今もなお1ミリも失われていないことを物語っていた。そして「クソみたいな2021年に、wowakaより愛を込めて!」という叫びとともに鳴らされた「アンノウン・マザーグース」。ステージ上のあらゆる角度から狙った9台のカメラの映像が、9つに分割された画面に映し出されるなどの斬新な映像演出も織り込まれ、そのパフォーマンスは触れたら切れそうな鋭さだった。「お客様のなかで踊り足りない方はいらっしゃいませんか!?」。シノダの煽りからイガラシがスラップベースを轟かせると、「踊るマネキン、唄う阿呆」がライブのクライマックスの到来を告げた。

 「皆さまのおかげでヒトリエは7周年を迎えることができました」。息を切らしたシノダが誰もいないフロアに語りかける。東京でバンドをやるという夢を叶え、全力で走ってきた7年という短くない時間。「6周年経った頃にはステージにリーダーがいませんでした。7周年を迎えている今日、フロアに誰もいません。いっそのこと全部夢だったらいいのになと僕は思います」。自分たちに訪れた運命に対して正直な思いを吐露しながらも、「僕たちにはまだやれることがあるような気がして新しいアルバムを作った」と彼は言い切った。「この世のありとあらゆる不条理を肴に楽しんでいただけたら」。そんな彼らしい言い回しには、過去を背負ってバンドを続けていくことへの壮絶な決意が滲んでいたように思う。

 そして鳴らされたのは「青」。ノイジーなギターのサウンドと重い足取りで進むリズム、〈それでも僕らが終わることはないだろう〉という歌詞が、決意のシンボルのように聴こえてきた。その重さを振り切るように、シノダの弾き語りから「ポラリス」へ突入。強烈な余韻を残してライブ本編は終わりを告げた。

 オーディエンスの声が聞こえない代わりに、自らコールをしながらステージに戻ってきたアンコールでは、「今日は新曲はやりません。残念でした」と意地悪な笑顔を浮かべながら「SisterJudy」「モンタージュガール」と初期曲を2連発。メンバーそれぞれにフォーカスしたマルチ映像が、3つの充実した表情を映し出し、ヒトリエの新たな一歩となる記念すべきライブは幕を下ろしたのだった。

■セットリスト
『HITORI-ESCAPE 2021 -超非日常六本木七周年篇-』
1月22日(金)EX THEATER ROPPONGI

M1.センスレス・ワンダー
M2.curved edge
M3. イヴステッパー
M4.るらるら
M5. 伽藍如何前零番地
M6. SLEEPWALK
M7. Loveless
M8. RIVERFOG, CHOCOLATE BUTTERFLY
M9. (W)HERE
M10. カラノワレモノ
M11. トーキーダンス
M12. アンノウン・マザーグース
M13. 踊るマネキン、唄う阿呆
M15. ポラリス
EN1. SisterJudy
EN2. モンタージュガール

ヒトリエ 公式HP

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