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カラヴァッジョ、フェルメール、モネといった、ルネサンスから19世紀までの西洋絵画史の流れをたどる『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』をレポート

ぴあ

(左)ヨハネス・フェルメール《信仰の寓意》1670-72年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Friedsam Collection, Bequest of Michael Friedsam, 1931 / 32.100.18 (中)レンブラント・ファン・レイン《フローラ》1654年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of Archer M. Huntington, in memory of his father, Collis Potter Huntington, 1926 / 26.101.10

世界三大美術館のひとつで、創立150年の歴史を持つ、ニューヨークにあるメトロポリタン美術館。そのヨーロッパ絵画部門に属する2500点余りの所蔵品から、珠玉の名画65点(うち46点は日本初公開)を見ることができる『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』の大阪展が、大阪市立美術館で開幕した。

大阪市立美術館外観
大阪展 展覧会場入口

本展は、メトロポリタン美術館のヨーロッパ絵画部門が所蔵する2500点以上の中から、選りすぐりの作品で構成されている。古代や中世に多かった神話を描いた絵画や宗教画が、近世から近代に向かっていくと少なくなっていき、代わりに風景画、肖像画、静物画といったものが増えていった、という西洋絵画500年における絵画の主題の移り変わりを見ることができる。

(左)エル・グレコ(本名ドメニコス・テオトコプーロス)《羊飼いの礼拝》1605-10年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1905 / 05.42 (右)ルカス・クラナーハ(父)《パリスの審判》1528年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1928 / 28.221

展覧会は3章で構成される。「第I章 信仰とルネサンス」では、イタリアのフィレンツェで15世紀から16世紀にかけて隆盛したルネサンスを代表する名画が並ぶ。当時、油彩画が発明され、髪の毛の一本一本まで細かく描くことができるようになった。画家たちは、注文主からの依頼に加えて、自分たちに身近なものも描くようになった。作品をよく見ると、暗喩のように隠されたテーマが含まれていて、興味深い。

(左)ハンス・ホルバイン(子)《ベネディクト・フォン・ヘルテンシュタイン(1495年頃-1522年)》1517年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, aided by subscribers, 1906 / 06.1038 (右)ピエロ・ディ・コジモ(本名 ピエロ・ディ・ロレンツォ・ディ・ピエロ・ダントニオ)《狩りの場面》1494-1500年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of Robert Gordon, 1875 / 75.7.2

「第II章 絶対主義と啓蒙主義の時代」では、ヨーロッパ各国で絶対主義体制が強化された17世紀から、啓蒙思想が隆盛した18世紀にかけて、各国で活躍した巨匠たちの作品を紹介する。

(左)ベラスケスと工房(1623-60年)《オリバーレス伯公爵ガスパール・デ・グスマン(1587-1645年)》1636年頃/以降 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Fletcher Fund, 1952 / 52.125 (中)ペーテル・パウル・ルーベンス《聖家族と聖フランチェスコ、聖アンナ、幼い洗礼者聖ヨハネ》1630年代初頭/中頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of James Henry Smith, 1902 / 02.24 (右)グイド・カニャッチ《クレオパトラの死》1645-55年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Purchase, Diane Burke Gift, Gift of J. Pierpont Morgan, by exchange, Friends of European Paintings Gifts, Gwynne Andrews Fund, Lila Acheson Wallace, Charles and Jessie Price, and Álvaro Saieh Bendeck Gifts, Gift and Bequest of George Blumenthal and Fletcher Fund, by exchange, and Michel David-Weill Gift, 2016 / 2016.63

世界中に30数点しかないフェルメールの作品のうち、《信仰の寓意》が日本初公開。当時プロテスタントを公認宗教としたオランダ共和国で、結婚を機にカトリックに改宗したフェルメールがこの作品を描くことで、信仰を擬人化したのであろう。そのフェルメールの右隣には、レンブラントが新妻を女神にたとえて描いたといわれる《フローラ》が並び、オランダ絵画の到達点を感じることができる。

(左)ヨハネス・フェルメール《信仰の寓意》1670-72年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Friedsam Collection, Bequest of Michael Friedsam, 1931 / 32.100.18 (中)レンブラント・ファン・レイン《フローラ》1654年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of Archer M. Huntington, in memory of his father, Collis Potter Huntington, 1926 / 26.101.10

展覧会フライヤーにも使われている、カラヴァッジョの《音楽家たち》。カラヴァッジョの最初のパトロン、デル・モンテ枢機卿の館で開かれていた音楽や演劇の集いや、そこに集まる若者たちをモデルに描いたと思われる。右から2番目はカラヴァッジョの自画像と言われているが、左端には羽根の生えたキューピッドが描かれているところを見ると、これは現実を表現したものではなさそうだ。

(左)カラヴァッジョ(本名 ミケランジェロ・メリージ)《音楽家たち》1597年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1952 / 52.81 (右)シモン・ヴーエ《ギターを弾く女性》1618年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Purchase, 2017 Benefit Fund; Lila Acheson Wallace Gift; Mary Trumbull Adams and Victor Wilbour Memorial Funds; Friends of European Paintings and Henry and Lucy Moses Fund Inc. Gifts; Gift of Julia A. Berwind, by exchange; Charles and Jessie Price, Otto Naumann, Mr. and Mrs. Richard L. Chilton Jr., and Sally and Howard Lepow Gifts; Charles B. Curtis Fund; and Theodocia and Joseph Arkus Gift, 2017 / 2017.242

そして「第III章 革命と人々のための芸術」では、近代化の波が押し寄せた、19世紀の画家たちの作品を見ることができる。当時の画家たちは、光にあふれた風景を描き、世界の見方を変えた。

(左)ポール・ゴーギャン《タヒチの風景》1892年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Anonymous Gift, 1939 / 39.182 (右)フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲く果樹園》1888年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Mr. and Mrs. Henry Ittleson Jr. Purchase Fund, 1956 / 56.13
(左)ポール・セザンヌ《リンゴと洋ナシのある静物》1891-92年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Bequest of Stephen C. Clark, 1960 / 61.101.3 (中)ポール・セザンヌ《ガルダンヌ》1885-86年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Gift of Dr. and Mrs. Franz H. Hirschland, 1957 / 57.181 (右)エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》1890年頃 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 H. O. Havemeyer Collection, Bequest of Mrs. H. O. Havemeyer, 1929 / 29.100.42

セザンヌは、観察から得た生き生きとした感覚をカンヴァスに再現することに挑み続けた。また、ドガは好んで踊り子を多く描いた。クローズアップや切断されたような構図は、当時人気のあった浮世絵や19世紀に発展した写真の影響が感じられる。

(左)オーギュスト・ルノワール《ヒナギクを持つ少女》1889年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 The Mr. and Mrs. Henry Ittleson Jr. Purchase Fund, 1959 / 59.21 (右)オーギュスト・ルノワール《海辺にて》1883年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館 H. O. Havemeyer Collection, Bequest of Mrs. H. O. Havemeyer, 1929 / 29.100.125

西洋絵画の500年を壮観できるというぜいたくさだけでなく、作品ひとつひとつが持つ魅力を大きく感じ取ることができる、とても見ごたえのある展覧会だ。2022年2月9日(水)~5月30日(月)、東京の国立新美術館に巡回予定。ぜひ美術館に行って、作品を味わってほしい。

取材・文:藤田千彩

【開催概要】
●大阪展 
大阪市立美術館
2021年11月13日(土)~2022年1月16日(日)

●東京展
国立新美術館 企画展示室1E
2022年2月9日(水)~5月30日(月)
●公式サイト:https://met.exhn.jp/

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