撮影中あまり絡みがなくて、インタビューや舞台挨拶中にお互いの裏話を初めて知るっていう状況も割とある。時間を共有した後の話でなく、お互い知らない故にトークをしながら発見もあり理解していくみたいなこともあったりする。そういう時はインタビューさんそっちのけで裏話過ぎるところで盛り上がったりしてしまうが、一度脱線することによって本線がより盛り上がるという場合もある。

お約束質問にも満たない質問というのもインタビューには存在して、その軽さの利点もある。LiLiCoさんはラジオで、アーティストさんに「お風呂に入ったら、まずどこを洗いますか？」みたいな、台本に書かれていない質問をする時がある。そうするとファンの方は喜んでくれたり空気がいい意味で緩んだりする。そのどうでもいいように思えることを話したが故に生まれるテンションもあると最近は理解し始めた。生放送で話したそばから流れて進んでいくからそこから盛り上がって出てきた疾走感が楽しめると、いい回だったと思えたりする。アーティストさんの作品解説に関わる質問はマストとはいえ、それだけで終わるインタビューがベストかといえばそうとも言い切れないのだ。

ライブでお話する機会でいうと舞台挨拶もある。当然ながら圧倒的に上映前より上映後のほうがお話はしやすい。ネタバレという概念がなくなるし、自由度が格段に上がる。もうここにいる人だから、話しちゃってもいいよねという気になったり。伝えなくちゃ伝わらないから、足を運んでくださった皆様にはこのくらい持って帰ってもらわないといかんなというマインドになっているんだろう。

全部話していいインタビューとかやってみたい。WEB限定公開とかで、ネタバレを含みますというレベルでなく、もう全部ここまで言ったんだよみたいな媒体が出来たら面白そう。それを俳優部だけでなく監督、脚本、カメラ、照明、録音、いろんなセクションの方にやって欲しい。僕はそれを読みたい。そういう企画を待っています。

答えが欲しいという意味でなく、深く濃いめの解釈が欲しいのかな。絶対の正解でなくえも「俺はこう聞こえた」というのも、たくさんの正解の中の1つで。それをみんながインターネットの上で書いている。

自分が出ている作品の考察を読むのもなんだかんだで楽しい。作品の奥行きや幅に思いを巡らせてくれている物を見るとなお嬉しい。そしてやっぱり本人解説は面白い。それぞれ濃度は違えど、生まれた作品から生まれた言葉たちがそのものをより形成していくものだと思うから。だから作り手の皆さん、解説どんどんお願いしますと思いつつ、作り手の皆さんは僕のエッセイを読んでいないと思うから、新たな現場に行くたびに僭越ながら直接お願いしていきたいと思う。そんな感じの、今日この頃。

次回の更新は12月30日、年末ということで今までの内容を連載スタッフがご本人とともに振り返ります。お楽しみに！

プロフィール

稲葉友（いなばゆう）

1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。
2010年、ドラマ『クローン ベイビー』(TBS)で俳優デビュー後、ドラマ、映画、舞台と幅広く活動。
主な出演作に、ドラマ『仮面ライダードライブ』(‘14～’15 EX)、『MARS～ただ、君を愛してる～』(’16 NTV)、『ひぐらしのなく頃に』(’16 BSスカパー!)、『レンタル救世主』(’16 NTV)、『将棋めし』(’17 CX)、映画『ワンダフルワールドエンド』(’15)、『HiGH&LOW』シリーズ、『N.Y.マックスマン』(’18)、『私の人生なのに』(’18)、舞台『すべての四月のために』(’17)、映画『春待つ僕ら』(’19)『この道』(’19)など。
J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』(毎週金曜11:30～16:00生放送)ではレギュラーパーソナリティ―を務める。

撮影／高橋那月、取材／藤坂美樹、構成／中尾巴、ヘアメイク／速水昭仁、スタイリング／添田和宏
衣装協力／コート¥72,000／クルニ
カーディガン¥12,000／エバース
オールインワン¥6,300／キャスパージョン（すべてシアン PR TEL:03-6662-5525）
ソックス(3足セット)¥2,500、スニーカー¥9,000／ともにヴァンズ（ヴァンズ ジャパン TEL:03-3476-5624）
その他スタイリスト私物
※すべて税抜き価格