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Newspeak、新曲「Another Clone」は今の世界に対する表現と問いかけ? 合わせて聴きたいプレイリストも公開

リアルサウンド

20/7/10(金) 18:00

 昨年11月に1stフルアルバム『No Manʼs Empire』をリリースし、それを携えて行われた全国11カ所でのライブも成功させるなど、着実にファンベースを拡大し続けている4人組ロックバンド、Newspeakによるニューシングル「Another Clone」が7月10日より配信リリースされる。

 本作は、6月12日に発表された配信シングル「Pyramid Shakes」の続編にあたるもの。新型コロナウイルスの拡大により、以前のようにライブを行うことが難しくなった彼らは4カ月連続でシングルをリリースすることを発表。アートワークからリリックビデオまで、全てのシングルを統一した世界観で制作するという。4曲全てがリリースされたときには、コンセプチュアルな EP『Complexity & Simplicity of Humanity (and Thatʼs Okay)』として完成する予定だ。

 前作「Pyramid Shakes」は、強力なシンコペーションを伴ったベースがバンドアンサンブルをグイグイと引っ張りながら、ダンサブルなグルーヴを形成していく楽曲である。そのリズム上で軽やかなエレキギターが空間をファンキーに刻み、官能的なRei(Vo/Key)のボーカルがソウルフルなメロディを歌い上げるというものだった。また、後半に向かって煌びやかなシンセがレイヤーされていく様は、Spandau BalletやDuran Duranら80年代にUKを席巻したムーブメント“ニューロマンティック”や、そのルーツであるRoxy Musicやデヴィッド・ボウイらの影響をも感じさせた。

 続く本作「Another Clone」は、「Pyramid Shakes」の華やかだがどこか退廃的なムードから一転。アンビエントなシンセサウンドに導かれ、エッジの効いたギターリフが宙を切り裂きながら、インダストリアルなリズムと共に進んでいくミクスチャーロックである。バックビートの効いたAメロから、伸びやかなファルセットボイスと共に一気に解放されるサビや、一旦ブレイクしてから不協和音スレスレのギターフレーズと共に徐々に盛り上がっていく展開メロ、不穏な雰囲気を漂わせるエンディングのクロマティックアプローチなど、たった3分足らずの尺の中に様々な要素が詰め込まれている。ここまでパンキッシュな楽曲は、これまでのNewspeakのレパートリーにはなかったもので、おそらくRancidをルーツに持つYohey(Ba)や、Blink-182、The Offspring、New Found Gloryなどを聴いて育ったというSteven(Dr)の持ち味が色濃く反映されたのだろう。

 歌詞を見ると、歌い出しのラインが〈Desires in my bones/Bad habits and sleep(骨に染み付いた欲望/どうしようもない睡眠と習慣)〉とあり、さらに〈I wanna get out/Out of my/Out of my/Out of my head or blow my brain into particles(頭の中から抜け出したい/さもなきゃ脳みそを吹き飛ばしてくれ)〉と続くなど、コロナで自宅待機を余儀なくされている我々のフラストレーションを代弁しているようにも取れる。また、〈They’re just another clones/Of pretending critics/I wanna lose control/People talk so real that they sound so fake(奴らは批評家を装ったクローンたち/理性なんて失いたい/人々はもっともらしく語るけど、それが余計に嘘っぽく感じるのさ)〉というラインは、コロナ禍で対立や分断を極めるインターネット~SNSの世界を皮肉っていると捉えるのは、筆者の邪推だろうか。さすれば“clones”とは、匿名に隠れて誹謗中傷を繰り返す人々(顔の見えないクローン)であり、曲名の「Another Clone」(別のクローン)とは「ひょっとしたら、僕自身もそのクローンの一人?」という問いかけなのかもしれない。

 最終的にEP『Complexity & Simplicity of Humanity (and Thatʼs Okay)』として構成される、残りの2曲はどんな内容になるのか、4曲全て揃った時に一体どのような形になるのか期待が高まる。最後に、Newspeakのこれまでの楽曲の中から「Pyramid Shakes」「Another Clone」と合わせて聴いてほしい10曲を、筆者のセレクトによりプレイリストにまとめてみた。

 冒頭の「Wide Bright Eyes」は、昨年3月に東京・渋谷WWWにて開催されたワンマンライブのアンコールで初披露され、1stアルバム『No Manʼs Empire』に収録された、Primal ScreamやKasabian、中後期Oasisを思わせるロックアンセムである。続く「What We Wanted」は、2017年にリリースされた1st EPの表題曲。ユーフォリックなシンセアルペジオとオーガニックなバンドアンサンブルが融合した、Newspeakのひな形ともいえる楽曲だ。

 他にも、ドラマティックなアレンジの「Maybe you’re so right, Gonna get my shotgun」や、シンプルなエイトビートが今作「Another Clone」にも通ずる「Changing Shapes」、日本語詞と英語詞のミックスが新鮮な「Let Down」と並べてみた。「Lights and Noise」の気怠くも耽美的なサウンドは前作「Pyramid Shakes」の布石ともいえるし、「24/7 What For」から脈々と受け継がれているファンクネスとも取れる。また「July」で披露したスケール感や、「See You Again」のロマンティシズムは今回の4部作後半の楽曲に、どう受け継がれているのかも注目ポイントといえよう。

 プレイリストの最後は、前作『No Man’s Empire』収録の表題曲を締めくくりに配置した。こうして改めてNewspeakの楽曲を聴き直してみると、スタジアム級の会場で鳴らされることを意識したであろうシンプルかつ訴求力のあるリズムや、細部まで作り込みながらもそこに拘泥することなく突き抜けたコード進行とメロディ、カリスマ性たっぷりのReiのボーカルスタイルなど、どの曲も絶対の確信を持って鳴らされていることがひしひしと伝わってくる。コロナにより、ライブという表現の場を制限されてしまった彼らが今後、音源制作によりどう進化していくのか。是非ともこのプレイリストと新曲2曲を聴きながら、色々と想像をしてもらえたら幸いだ。 (黒田隆憲)

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