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テレ東グルメドラマ戦線に異変あり!? 主役が中年男性から若い女性にシフト中

リアルサウンド

19/12/26(木) 6:00

 近年、大躍進を遂げたドラマのジャンルといえば、料理や飲食店をモチーフにした、いわゆる“グルメドラマ”だろう。主人公がもくもくと食べる姿をフィーチャーしたものから料理を作って食べるレシピ紹介に寄ったもの、飲食店に集う人を描く群像劇スタイルのものまでさまざまな“食”のドラマが生まれた。たいがいが、小腹のすきはじめる深夜に放送されたこともあって、“飯テロ”と話題を呼んだ作品も少なくない。それでもなぜこれほど多くの視聴者に受け入れられたかと言えば、“食べる”ことが、誰にとっても当たり前の行為だからだろう。ドラマとして客観的に食べる姿を観ることで、心の中の食への欲求が刺激され、ついつい見入ってしまう人が多かったのではないかと思う。

参考:飯テロドラマの元祖! 『孤独のグルメ』『深夜食堂』が愛され続ける長寿シリーズとなった理由

 そして、そんなグルメドラマを牽引してきたのがテレビ東京だ。この年末に終了した秋クールだけでも、シーズン8を迎えたグルメドラマの金字塔『孤独のグルメ』に加え、三浦貴大と夏帆の隔週主演でアウトドア料理を題材にした『ひとりキャンプで食って寝る』、そして両親の再婚により姉妹となった女子高生ふたりが料理を通して絆を深めていく『新米姉妹のふたりごはん』を放送。すでにシーズン2に突入したBSテレ東の『江戸前の旬』も含めれば、計4本の大盤振る舞いだ。いかにテレ東がグルメドラマに力を入れているかがわかる。

 そして昨今、その流れに少しずつ変化が起こっている。『孤独のグルメ』の松重豊しかり、『きのう何食べた?』の西島秀俊と内野聖陽しかり、グルメドラマの主人公といえばなぜか中年男性が主役の作品が多かったわけだが、ここにきて、『忘却のサチコ』(2018年放送)で高畑充希が、前述の『新米姉妹のふたりごはん』では山田杏奈と大友花恋がW主演と若い女性目線の作品が増え始め、ジャンルとしての幅の広がりも出てきている。

 そもそもテレ東がグルメドラマで存在感を示すきっかけになった作品は、2012年より放送の始まった『孤独のグルメ』だろう。久住昌之原作の同名コミックをドラマ化した本作は、主人公の井之頭五郎が、実在する店を訪れ食事を楽しむという超シンプルなもの。連ドラでありながらストーリーらしいストーリーもなく、その代わりに五郎の的確な心の声、食べっぷりが視聴者を釘付けにし、以降、他局でもこぞってグルメドラマが製作されるようになった。その後、生瀬勝久が料理好きのヤクザに扮した『侠飯~おとこめし~』(2016年)、一流の舌と目を備えた元料理人のホームレスを主人公にした『ヤッさん~築地発!おいしい事件簿~』(2016年)、よしながふみの人気コミック実写化した『きのう何食べた?』(2019年)など、さまざまな作品が世に送り出された。2015年には一人飲みが趣味のOLを主人公にした『ワカコ酒』がBSジャパンを経て、テレ東で放送開始。このあたりから女性目線の作品も増え始め、婚約者に逃げられた女性が美食を求めて邁進する『忘却のサチコ』などへと派生していく。

 年明け1月クールでは車中泊とグルメを絡めたロードムービー風の『絶メシロード』、いわゆる“コ”の字型のカウンターのある店で繰り広げられる恋愛模様を描く『今夜はコの字で』(BSテレ東)の2本が控える。料理シーンの多さでは『ゆるキャン△』もこのジャンルに入るだろう。女性の主人公のみならず、グルメに “旅”や恋愛ドラマの要素を取り入れたりと多様化が進む背景にあるのは、ひとえに視聴者を飽きさせないための仕掛けづくり。食に他の要素を組み合わせることで、表現の幅を広げ、ストーリーに奥行きを出そうという製作陣の試行錯誤の表れだ。老若男女、シチュエーション、料理のバリエーション、いずれもシャッフル可能で選択肢は無限大。これほど包容力のあるコンテンツも他にないのではないか。改めてグルメドラマのポテンシャルの高さには恐れ入る。

 この年末年始、テレビ東京は『孤独のグルメ 2019大晦日スペシャル 緊急指令!成田~福岡~釜山 弾丸出張編!』『きのう何食べた?正月スペシャル2020』『忘却のサチコ 新春スペシャル』と人気作の特別編も放送。各局豪華な正月番組を放送する中、グルメドラマで勝負に出る。小孫茂社長も「おせちに飽きたら、カレーでもおすしでもなんでもそろえるのがテレビ東京。おいしさ味わえる3番組を楽しんでいただければ」とコメントを寄せ、自信をのぞかせる。年をまたいでおなかいっぱい楽しませてくれそうなラインナップに期待したい。(渡部あきこ)

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