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関ジャニ∞ 大倉忠義と高橋優のラジオ終了が惜しまれる理由 二人の会話がリスナーに与えた“希望”

リアルサウンド

20/3/4(水) 6:00

 関ジャニ∞大倉忠義とシンガーソングライターの高橋優がパーソナリティを務めるラジオ『オールナイトニッポンサタデースペシャル 大倉くんと高橋くん』(ニッポン放送)が、この3月いっぱいで終了することになった。2月29日放送回で、「この数年、録音でお送りせざるを得ない機会が増えたように、この先2人のスケジュールを合わせるのが難しい状況になってきました」と、発表された突然のお知らせ。多くのリスナーが驚きを隠せず、SNSを中心に惜しむ声が多く寄せられた。なぜ、これほどまでに同番組は支持を得ているのか。

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●リアルタイムでつながれる場所
 2015年4月からスタートした同番組は「週末の反省会的番組」「男ふたりが友達とだべっているような番組」と銘打ち、「なるべく生放送」にこだわってきた。ときには、全国ツアーなどの影響で、遠隔操作になったり、やむを得ず収録回となったこともあったが、そのイレギュラーな対応をするほど忙しい時期であることも体感できるのがうれしかった。

 ツアー中の過ごし方や、最近気になったこと、本番直前に何を食べたのか……など、その会話の中身は他愛もないことばかり。でも、私たちが大切な人について知りたいのは、実はそんなくだらないことばかりだ。それは、テレビや雑誌などメインの企画がある場面ではなかなか感じることが難しい、ラジオならではの空気感。

 大倉がドラマ『モンテ・クリスト伯−華麗なる復讐−』(フジテレビ系)に出演していた時期には毎週、高橋が興奮気味に感想を伝えていたのが懐かしい。「ひどすぎるでしょ、大倉さんのやられ方」と、主人公に復讐される役柄を演じていた大倉に対して、大いに肩入れする姿はファンの視線そのもので、実に微笑ましかった。

 そんな高橋だからこそ、メンバーの脱退が続いた関ジャニ∞波乱の時期を、友人でありファン代表のような目線で、大倉に寄り添い、率直な思いを引き出してくれたように思う。大倉もまた高橋の口から語られる言葉に、ファンの気持ちを汲み取ってくれていたに違いない。この番組は、2人のリアルな思いを吐き出せる場所でありながら、ファンの思いも伝わっていると感じられる空間だったのだ。

 すぐに受け止めるのは難しいことが起こっても、週末になれば直接彼らの言葉が聞ける場所がある。直接ファンに語りかけることができる場所がある。そう思えることは、どんなに貴重だったことか。リアルタイムでつながるというのは、同じホームを持つ仲だということなのだ。

●仕事を熱く語れる場所
 ジャニーズアイドルとシンガーソングライターという、異なるジャンルで活躍する2人がレギュラー共演しているというのも、この番組ならではの面白さだった。高橋が煮詰まっているときには大倉と一緒に心配したり、お互いのライブを見た感想にほっこりしたり……。関ジャニ∞が5人体制になった以降はボイストレーニングに勤しむ大倉に、高橋が「どう?」と興味津々で聞くことも増えた。

 アイドルグループ内のメンバーがワチャワチャするだけとはまた違ったアーティスト同士の語り合いは、この番組の大きなスパイス。東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦がゲスト出演したときにも、音楽談義から、メンバーとの別れについて、熱く語り合っていたのも印象深い。

 どうしたらよりよい作品を届けることができるのか。表現者として経験を重ねる中で、ぶつかる新たな壁。乗り越えたと思ったら、また別の課題が見えてくる。その繰り返しの中で、別ジャンルで頑張る友人の存在は、きっとお互いにとって大きな刺激になったことだろう。

 そして、同時に、自分たちの表現に希望を見出し続ける彼らの姿に、私たちリスナーも勇気をもらった。長く続けていけば、困難が立ちはだかるのは、一般の仕事を手がけている私たちも同じだからだ。

 もっといいものができるはず、よりよい人生になるはずだと、諦めずに歩み続ける彼らの姿勢が、実際に多くのリスナーの背中を押してきた。夢を叶えた人、転職した人、結婚した人……人生って捨てたもんじゃない。そんなふうに思えるラジオ番組そのものが、彼らの作り上げたひとつの作品と言えるかもしれない。

●年を重ねる難しさを笑えた場所
 かつて深夜ラジオとは、夜遅くまで勉強している学生を中心にした若者がリスナーの中心だった。パーソナリティはリスナーよりも少しだけ先を生きるアニキ的存在で、迷える若者の悩みを笑いに変えたり、自分の通ってきた道筋を示したりしてきた。

 だが、同番組では30代となった大倉と高橋が、存分にこじらせ男子っぷりを披露するのも笑いを誘った。通常時には平和主義で通している2人が、「でもここはイライラしてしまう」ということを率直に語り出す。「駅前で別れ際にキスをするカップルを見てイライラする」「結婚式で自ら泣きじゃくる友人代表スピーチに冷めてしまう」など、普段あえて口に出すことではないけれど、本当はちょっとだけ抱いていた違和感。

 その小さなささくれを見逃さない繊細さ。そして、「俺はそういうのはキライだ」と本音で語りかけてくれる愚直さ。彼らの言葉は、若者のころに想像していた“ちゃんとした大人“になりきれていないと感じるお年頃のリスナーにはズバズバと刺さる。ときには、社会全体に対する疑問を投げることもあり、「ああ、また世の中を斬っちゃった」と、照れくさそうにする大倉の姿も。“ちゃんとした大人“にはまだまだ遠く感じるが、“めんどくさい大人“にはすぐになれてしまうという歯がゆさ。

 「気をつけないとね」「どうしてこんなにこじれちゃったんだろうな」と、お互いに年を重ねる難しさを笑い飛ばす2人を眺めながら、“こうやって年齢を重ねていくのも悪くない“とも思わせてくれた。ちゃんとしなくても、こじらせてても、こうして笑える友だちがいたら、最高なんじゃないか、と。

 だから、ずっと彼らと一緒に時間を共有していきたいと願ってしまった。一生、ちゃんとした大人になんてなれないかもしれないけれど、いつかなるかもしれない。そんな長い長い青春時代を、2人と一緒に過ごしていけると思っていたリスナーが多かったのではないだろうか……。

 ああ、こうして振り返ると、やっぱり寂しい気持ちでいっぱいだ。まるで居心地の良かったダベり場所が急に取り壊されることになった気分だ。高橋は公式Twitter(https://twitter.com/takahashiyu/status/1233787919917125632?s=20)で「あと4回、もしよければ僕らと一緒にダベりましょう。目が笑ってないわ話せば拗れるわ面倒臭い人間ですが、歌やラジオを聴いてくれるあなたのことが大好きです。 #大倉くんと高橋くん」とつぶやいていた。

 いろいろ理由を並べてみたが、結局のところ、この番組が終わることがこれだけ惜しまれた理由は、みんな『大倉くんと高橋くん』が大好きだったからだ。そんな大好きな2人との時間を最後まで楽しみたい。願わくば、何かしらの形で、また2人とダベる場所が再建されることを願いながら。(佐藤結衣)

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