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フィロソフィーのダンス、お風呂歌唱での“あるがままの姿” メンバーの表現力の進化を紐解く

リアルサウンド

21/3/28(日) 21:00

 好きな曲を、お風呂で歌う。観客のいない、日常のささいなコンサート。あるがままの音楽をのぞいていきませんかーー。そんなコンセプトで制作したフィロソフィーのダンスの『お風呂でうたってみた Tiny Bath Concert』がYouTubeで公開された。J-POPの名曲をアンプラグドで届ける今回のシリーズは、短い収録時間ながら各メンバーのボーカリストとしての成長ぶりがはっきりとわかる内容で非常に興味深い。それぞれの歌唱スタイルの特徴や魅力を本作から探ってみたいと思う。

奥津マリリ「RIDE ON TIME」

奥津マリリがお風呂でうたってみた RIDE ON TIME / 山下達郎 – Tiny Bath Concert by フィロソフィーのダンス

 グループに加入する前はソロで弾き語りをしていた奥津マリリ。「人間性が売りで、恋愛の曲をメインで歌っていた」(オフィシャルブック『U Got The Look』より。以下のメンバーのコメントはすべて同書から抜粋)というが、山下達郎 「RIDE ON TIME」はポジティブな気分をパワフルに歌い上げたものであり、すこし意外な印象を受けた。

 おそらく現時点では曲のテーマ設定よりも歌そのものに関心が向いているのだろう。実は2月にリリースされたソロ曲「ネイビーブルー」でも同じことを思っている。彼女が得意とするラブソングではあるものの、シンプルな言葉をボーカルの力でより味わい深くした仕上がりで、主役はあくまでも「歌」だ。

 以前、メジャーデビューを機に「ちょっと楽しい無理をしたい」と言っていたのは記憶に新しい。もしかすると今回の動画はそれを知るためのヒントのひとつなのかもしれない。

佐藤まりあ「私がオバさんになっても」

佐藤まりあがお風呂でうたってみた 私がオバさんになっても / 森高千里 – Tiny Bath Concert by フィロソフィーのダンス

 続いて動画が公開された佐藤まりあが歌うのは「私がオバさんになっても」。奥津と同じく意外なセレクトだと一瞬思ったが、いざ聴いてみると森高千里のまっすぐな歌い方は佐藤まりあにぴったりであり、自身のスタイルや魅力をしっかり把握した上で選んだことがわかる。本曲は以前佐藤がライブにて披露したことがあり、本人にとって大切な一曲だという。

 彼女が歌手としての存在感を増したのは、『ライブ・ライフ/イッツマイ・ターン』を出した2018年あたりだろうか。〈ミラーボールで交差する日常、非日常〉と軽やかに歌うパートは、この曲が持つ高揚感を的確に伝えてくれた。続いて発表された本人歌唱バージョンの「はじめまして未来」も、アイドル担当としての立ち位置で表現できるものをすべて出し切っていてインパクトがあった。

 近年はバンドセットでライブする機会が増えたおかげで「これだけやったからという自信がついた」そうだが、それは「私がオバさんになっても」の歌唱でも十分に伝わってくる。アイドルらしく、自分らしく。そう自覚した彼女の新しい展開が楽しみでならない。

日向ハル「Missing」

日向ハルがお風呂でうたってみた Missing / 久保田利伸 – Tiny Bath Concert by フィロソフィーのダンス

 日向ハルが歌う「Missing」(久保田利伸)は、やはりこういう曲をピックアップしたかという感じである。日本を代表するR&Bシンガーのメロウなバラードは、日向ハルのソウルフルなボーカルスタイルによく馴染む。

 彼女の場合、「歌えるだけでいい」との思いでオーディションを受けてグループに加入したものの、「ダンスも歌も経験者だったのである程度はできるんだけど、圧倒的ではないというコンプレックスがすごくあった」そうだ。

 それもライブ経験を重ねていくうちに薄まっていったに違いない。歌の難易度がとても高い「Missing」をカバーするのはとても勇気がいることだったと思うが、メジャーデビューを果たし、国民的グループになることを目標に掲げた現在、自分の限界にチャレンジしたいとの気持ちが同曲を選ばせたのだろうと推測する。

十束おとは「come again」

十束おとはがお風呂でうたってみた come again / m-flo – Tiny Bath Concert by フィロソフィーのダンス

 「なるほど、確かにありだな」と聴いた瞬間に痛感したのが、十束おとはがカバーした「come again」だ。「自分の声はファンクには合わない」と語っていたこともある彼女が、ファンクやヒップホップからの影響を感じさせるm-floの大ヒット曲を選んだのは意外だと感じたが、今回のアコースティックバージョンでは、彼女の魅力を存分に発揮している。本人にとってもメディアでのインタビューなどでも好きな楽曲として挙げるくらい、思い入れのある楽曲のようだ。

 「come again」における歌唱はたおやかで温かい。最初から歌が得意だったわけではない彼女だが、ファンの期待に応えなければいけないとテクニックを磨いてきたおかげで、今ではグループには欠かせないボーカリストになった。自身の声をデフォルメすることもあった彼女が、ここではナチュラルに声を響かせているのが印象に残る。今回のカバーソングは「もっとホップ・ステップ・ジャンプしたい」と強く願う気持ちの表れなのだろう。ここで得た経験を次のステージで是非生かしてもらいたいものだ。

 以上のように『Tiny Bath Concert』シリーズは、4人のメンバーの表現力の進化を伝えるとともに、グループの「これから」を知る手掛かりも挿入されている。今のフィロソフィーのダンスだからこそできた企画であり、ファンにとっては見逃せない企画となっている。是非チェックしてほしい。

■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を開始。『ミュージック・マガジン』など専門誌を中心に寄稿。『ジャズ批評』『韓流ぴあ』で連載中。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著も多数あり。

■リリース情報
「カップラーメン・プログラム」
2021年2月12日(金)配信リリース
配信はこちら

2ndシングル『カップラーメン・プログラム』
4月28日(水)発売
・初回生産限定盤A(CD+Blu-ray):¥6,500(税込)

「Philosophy no Dance “World Extension”」(2020年11月19日)ライブ映像収録
※他、ボーナス映像収録予定
※スペシャルボックス仕様
※副音声にメンバーによるオーディオコメンタリー収録
※オリジナル・ステッカー封入
※撮りおろし写真で構成された豪華フォトブック付き

・初回生産限定盤B(CD+DVD):¥ 2,200(税込)
カップラーメン・プログラムMV+メイキング
※紙ジャケット仕様

・通常盤(CD only):¥1,200 (税込)

<収録曲・全形態共通>
・カップラーメン・プログラム
他全4曲収録予定

■関連リンク
フィロソフィーのダンス公式HP
フィロソフィーのダンス公式Twitter
フィロソフィーのダンス公式Instagram

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