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森七菜、なぜ2019年最大のブレイク女優に? 小学生から結婚する女性まで演じた大躍進を振り返る

リアルサウンド

19/12/24(火) 6:00

 今年1月期に放送された『3年A組 ー今から皆さんは、人質ですー』(日本テレビ系)で生徒のひとり、堀部瑠奈役を演じていた森七菜。10代から20代の若手実力派俳優が集結した作品だけあって、ドラマ中盤までは見せ場らしい見せ場を与えられなかったものの、第8話のエピソードで重要な役割を担った途端に潜めていた演技力を覚醒。瞬く間に教室内での存在感を高め、終盤には主要な生徒のひとりとして、監視カメラ映像の解析や特撮ヒーロー愛をあらわにするなど、多くの見せ場を獲得することに成功した。

参考:ほか場面写真はこちらから

 同作の放送終了から少し間隔を空け、下半期に入ると彼女は2019年最大のブレイク女優へと進化を遂げたと言っても過言ではない。アニメーション作品を含めて4本の映画に出演。ドラマではゲストとしてのポジションで2作品に出演と、その数だけで考えれば派手さはないものの、そのひとつひとつがあまりにも密度のある、非常に濃い役柄であったように思える。現在18歳、まだキャリア数年の女優とは思えないほど充実した役柄ばかりに恵まれた森七菜の2019年をざっと振り返っていきたい。

 まずはやはり、7月に公開され現在も上映が継続中の新海誠監督作品『天気の子』を挙げないわけにはいかない。興行収入は12月の時点で140億円を突破。新海の前作『君の名は。』ほどの社会現象を起こしているイメージはないものの、それでも日本歴代興収ランキングで現在12位。日本映画に限れば第6位に入る大ヒットとなっており、つまり森は『君の名は。』の上白石萌音と同じく、日本で興収100億円以上を記録した数少ない映画のヒロインという、極めて稀有な存在であるといえよう。雨が降り続く東京に家出してきた少年・帆高が出会う、願うだけで天気を晴れにすることができる不思議な力を持った少女・陽菜の声を演じた森。この役柄に抜擢された段階ではまだほとんど無名だった彼女が見出された理由はいくつも考えられるが(たとえばイメージが定着している有名女優を避けるねらいや、演じるキャラクターに年齢が近い女優を選ぶことでリアリティを求めたことなど)、いずれにしてその選択が最良であったことは作品を観れば明らかだ。

 実写でもアニメーションでも「演技が巧い」ということはどんな役柄にも染まることができるカメレオン的なものであるというイメージが強く、まだスター性を携えていない若い俳優にはその傾向がとくに目立つ。けれども映画というコンテンツにおいては、端的に言えば「どんな役をやらせても〇〇」という圧倒的なスターパワーは欠かすことができない要素だ。『天気の子』における彼女の声の演技は、彼女の存在を認識していればもはや陽菜という物語上のヒロインが森七菜にしか見えなくなるほど強い印象を植え付けてくれるものであった。つまり彼女は、声だけで、自分が森七菜であることを証明することができる才能を有しているわけだ。

 さらに面白いことに、『天気の子』と同日に『東京喰種トーキョーグール【S】』も公開され、声の演技だけでなく、スクリーン上でひときわ目立つアクトを繰り広げる実写での演技も同じタイミングで確認することができたのである。そして秋になると次々と出演作が世に放出されていく。ある家族の通夜の夜を描いた『最初の晩餐』では、戸田恵梨香が演じた長女の少女時代を演じ、彼女はひとりで小学生から高校生の時系列を演じ抜く。撮影が1年ほど前と見積もっても、17歳の女優が、いくらかあどけなさが残るルックスを持っているといえども、何の違和感もなく小学生を演じるというのは決して容易なことではないだろう。かと思えば同作の公開週に放送されてNHKのドラマ『少年寅次郎』では中学生になった寅次郎が恋に落ちる東北出身の純朴な少女を演じ、その後に公開された『地獄少女』では親友を奪おうとするアーティストに呪いをかける高校生役。もちろんそれぞれの作品で撮影のタイミングの順序に差はあるだろうが、短期間の間に彼女は「学校に閉じ込められる高校生」から「年齢をふたつサバを読む中学生」、「小学生」に「出稼ぎの少女」ときて、再び実年齢に近い高校生へと往来したのである。

 実はこれらと同じタイミングに、もう1作品出演作がある。『天気の子』のプロデューサーでもある川村元気が脚本を務めたティファニーとゼクシィのコラボによるショートフィルム『TIFFANY BLUE』だ。仲野太賀演じる働き詰めのサラリーマン青年と3年間交際しているカフェ店員の女性という役柄で、彼女は毎日自分の店にコーヒーを買いに来る彼にメッセージ入りのカップを渡す。そしてそんな日常が重ねられていく中で、すれ違いかける2人だったが、閉店後のカフェに訪れた彼が彼女にカウンター越しにプロポーズするというストーリーだ。少なくとも実年齢よりも上の役柄を演じていることは間違いなく、つい先日小学生を演じていたのに今度は結婚する役なのかと、その振れ幅の大きさにはただただ驚かされるばかりだ。10代にして年齢不詳の女優という地位を確立しつつあるというのは実に興味深い。いずれにしても、これだけ幅広い役柄が回ってくるのは、言わずもがな彼女に対する映像業界全体の期待のあらわれに他ならないだろう。

 しかも先日は『3年A組』と同じ世界観を引き継いだ『ニッポンノワール ー刑事Yの反乱ー』(日本テレビ系)に再び堀部瑠奈役としてゲスト出演。年明けすぐに公開される岩井俊二監督の最新作『ラストレター』では、松たか子演じる主人公・裕里の娘・颯香と裕里の高校生時代の二役を演じ、主題歌も担当するときた。同じ役柄を2度演じること、同じ作品で異なるけれど通じている2つの役を演じ分けること。ただ大役が続く以上の、なかなか経験しがたい演技によって、森七菜という女優はさらに磨かれていくに違いない。さらに3月30日から放送されるNHK朝の連続テレビ小説『エール』では二階堂ふみ演じるヒロインの妹役として出演。筆者が密かに期待している朝ドラヒロインの座に、着実に近付いているのかもしれない。 (文=久保田和馬)

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