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天月-あまつき-「目を合わせて、歌を届けられるライブが大好きです」『天月-あまつき-Winter Tour2021-2022「Star trail〜夢で見た景色〜」』ライブレポ―ト

ぴあ

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天月-あまつき-が全国ホールツアー『天月-あまつき-Winter Tour2021-2022「Star trail-夢で見た景色」』を開催した。
2021年11月23日の福岡からスタートし、2022年1月15日の札幌まで計6公演を完走した天月-あまつき-。本記事では少し早めのクリスマスプレゼントとなった12月5日の東京国際フォーラムホールAで行われた公演の模様をレポートする。

ファンと歌と共に、星巡りの旅を

開演時間が近づいてくると、天月-あまつき-のイメージカラーでもある赤色のサイリウムの輝きが次第に増えていく。
天月によるナレーションで公演にあたっての注意事項と「今日を思いっきり楽しむこと」をファンと約束したあと、開演――、いや星の旅へ出発だ。

客席に背中を向ける形で登場した天月は拳を突き上げ、高らかに1曲目の『アストロスト』を。伸びやかな歌声が一気に会場を包み込んでいく。そして、「東京、遊ぼうぜ!」と絶叫。約2年半ぶりとなる有観客でのツアー。待ちわびていたのはファンだけではなく、天月-あまつき-も同じだ。曲間にも「やっと会えたね、東京! ここにいるみんなで素敵な1日にしよう!」と客席を煽り、ファンも握りしめたサイリウムを振り上げてそれに応える。『アストロスト』の“声を聞かせて「そばにおいで」”という歌詞は今聴くと、より意味のある言葉のように感じられる。

そして、続けて星や夜空を想起させる曲『流れ星』、『ホシアイ』を歌い上げる。ポップなメロディだけれど、ロマンチックな言葉たち。照明も相まって、星の中で歌っている天月-あまつき-が夜空にいざなってくれているような気持ちになる。

MCでは「改めましてこんばんは!天月-あまつき-です!」とあいさつをしたあと、「どうなんだい、どうなんだい!?」と客席のご機嫌を伺う。それに応えて大きくなっていく拍手に、天月-あまつき-は嬉しそうに微笑んだ。

席を立てなかったり、声が出せなかったり、といったコロナ禍での公演ゆえの規制はいくつもある。それでも「あますことなく、全員が楽しかったね、と言えるような1日にしたい」と、今日の公演に対する意気込みを語った。

そして「やっぱり、声が出せなくて返事がないことで、不安になることもある。どう思っているのかな、って。心に思っていることってちゃんと言葉にしないと伝わらないから。もし今日、楽しいな、と思ったら、オーラ出してください。あと拍手!」と規制がある中でも、ファンとのコミュニケーションを諦めたくないという強い意志が伝わってくる。

この2年間、オンラインなどでもライブを行ってきた天月-あまつき-だが、「この日を待ちわびていた。誰よりも僕が楽しみにしていたと思う」と感慨深げに語った。「昨日は名古屋でライブやったんですけど、目が覚めたら東京のこのステージに立っていました」と、幸せで楽しい時間はあっという間に過ぎていくのだ、ということをユーモアを交えて話す。 待ちわびていた楽しい時間。確かにあっという間に過ぎていくけれど、その時間を思う存分楽しみ尽くす――。天月-あまつき-もファンもその意気込みは十分だ。

人間も星座のように形を変えることができるんだ

そんな楽しい気持ちをさらに盛り上げるように『かいしんのいちげき!』でダンサーと共に踊り、歌う。座ったままの状態だが、ファンも一緒に体を揺らす。続いて『ヴァンパイア』では美しい高音を響かせ、会場全体のボルテージをあげていく。声を出すことができないが、自然と会場の一体感が高まっていくのが分かる。

そんな激しいサウンドから一転、スクリーンにはアニメーションが流れ始める。始まったのは、ある少女の物語だ。
道に迷い、見知らぬ場所にたどり着いた少女。そこに現れたお兄さん、天月-あまつき-が優しく話しかける。美しく輝いていた星に見とれていたという少女に、「あの星はフォーマルハウトというんだよ」と教える。
そして、星が好きだという少女に「星座ができたのってどれぐらい前か知ってる?」と問う。その問いに思わず客席も首をかしげていると……「星座が一番始めにできたのは今から5000年も昔のことなんだ」。そして、少女を星巡りの旅に誘う。
「人間は星からさまざまなことを学ぶ。だから、きっとこれからの人生の役に立つことがたくさんある」と説き、「その代わり、みんなと一緒に歌ってね。今から行く星は織姫と彦星で有名なこと座とわし座だから」。

衣装をチェンジしてステージに現れた天月-あまつき-が歌うのは、織姫と彦星の関係を描いたような『赤い糸』。先ほどまでのアグレッシブなステージから、グッと落ち着き、しっとりと聴かせる。続いて、さわやかな風を感じさせながら繊細な心の動きを感じさせる『Caffe latte』、深い愛をハイトーンボイスで歌いあげる『Fairytale,』。歌詞とメロディに耳を傾け、ひとつのライブの中で展開される幅広い世界観に身をゆだねていく。

更に、このツアーに向けて準備してきたという新曲『スノーパラダイス』を披露。まるで雪の中で歌っているような演出で冬らしい雰囲気を盛り上げていく。そのままの流れでWinter Song Medleyへ。『ベリーメリクリスマス』、『サンタが街にやってくる』でクリスマス気分を盛り上げ、『プレゼント』ではどこか切なさを漂わせ、一転『ウインター・ワンダーランド』、『StarMan!!!』ではポップにテンションを上げていく。締めは『クリスマス・ストーリー』。たっぷりと冬とクリスマスを楽しませてくれるだけでなく、冬の特別な1日を意識させてくれた。

どこかプリンスを思わせるような衣装に着替えた天月-あまつき-が披露したのは『KING』。ダンサーと共に舞うが、先ほどまでとは異なり、どこか攻撃的だ。『Prison Land』、『ルマルソルシエ』とゴシックな世界観で、少し色っぽさも醸し出させる。
少女を星座と出会う旅に誘ったが、少女が訪れるさまざまな星座の空間を歌で表現しているように、バラエティに富んでいる選曲だ。それでいて、物語としての一貫性が感じられる。

星座は目立つ星と星を結んで作られたり、星言葉、というものもある。少女は旅の途中で「人間も生きている上でさまざまな経験をひとつひとつの形にしていくことで、星座のように形を変えていくことができる」ということを知る。ライブ中に曲を重ねていくことで、聴いている者の中でライブの形が変化していくように感じられる。

星巡りの旅が教えてくれたのは人生の大切なもの。

ライブも終盤戦へ。天月-あまつき-も「僕も大好きな曲。また久しぶりに歌えるのが嬉しい」と披露したのは『君の知らない物語』。“真っ暗な世界から見上げた夜空は星が降るようで”という歌詞は、いまのこの世界の中でエンターテイメントに再び触れることができ、また光を感じられるようになった喜びを現しているようだ。
ひとつひとつの言葉が天月-あまつき-の歌声にのって客席にいるひとりひとりへと届いていく。続けてカバー曲『小さな恋のうた』で会場をパワフルな愛で、包み込んでいく。
「みんなにとって寝るときにいい日だったなと一言言える日だったらいいな、と思います」と微笑み、『きみだけは。』、そして『君が僕の心に魔法をかけた』を歌い上げ、「また遊ぼうぜ!」という言葉と笑顔と共に本編を終えた。

しかし、すぐに会場からはアンコールの大きな大きな手拍子が。それに応えるようにモニターには、星巡りに出かけた少女の物語の続きが流れ始める。
実は何年も部屋に閉じこもっていたという少女。フォーマルハウトに惹かれて外に飛び出したものの、もう帰らなくてもいいと思っていた。しかし、星巡りをしたことで気持ちが変わる。

「帰ったら、嫌なことも全部形にしていっぱい星を作ります」
そう言う少女に「もうひとつ必要なものがある」と説く天月-あまつき-。
「星はひとりでは作れない。辛いときに手を貸してくれる仲間がいて、くじけそうなときには支えてくれる人がいて、いけないことをしたら怒ってくれる人がいる。そのすべての人に感謝の気持ちを持たないといけないんだ」
そして、思ったことは口にしないといけない。言いたかった「ありがとう」も今言わないと後悔をする……。

星巡りの旅が教えてくれたのは人生の大切なもの。
そして、自分が歌っている場所、客席には星が煌めいていると優しく話す。それが彼にとっての希望の光。天月-あまつき-が大事にしているものを改めて教えてもらったような、そんな気持ちになる。

温かい思いを客席に届けたところで、アンコールへ。Tシャツ姿で登場した天月-あまつき-はダンサーとコミカルなダンスと共に『きっと愛って』。ラストは『Hello,My story』で拳を突き上げ、飛び跳ねて、元気いっぱいにライブを締めくくった。

この日、天月-あまつき-が繰り返し伝えていたのは、ライブができていることへの喜び、会えなかった2年半という時間の重さ。
「2年半って長い時間。中学生や高校生は卒業してしまうし、子どもが大人になるには十分な時間」
その中で彼自身も考えることは多かった、ということだろう。同時に、エンターテイメントのパワーについても語った。

「僕の曲で、みんなの悲しいことが少しでも軽減できたらすごいことだと思う。それは僕の曲だけじゃなくて、あらゆるエンターテイメントがそういう力を持っている」

普段は観られない人が見られるオンラインライブはまた違った素敵さがある。でも、「目を合わせて、曲を届けられるライブが大好きです」と語る天月-あまつき-。
「みんながどんな気持ちで今日、この会場に来たのか僕は知らない。けど、知りたいと思う。だから、これからもたくさんお話しましょう。みんなのことをたくさん教えてください」
その言葉には、いま、ファンの目の前で歌うことができる喜びが詰まっていた。
天月-あまつき-は最後の最後まで、客席に手を振り、名残惜しそうにしていた。誰よりもこの日を楽しみにしていた、とライブの冒頭で話していたが、本当にそうなのだと思わせてくれる。
そして、すでにその視線は次のライブに向いているのかもしれない。また、ファンとたくさん、話をするために。

撮影/Miki Anzai、取材・文/ふくだりょうこ

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