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いま、最高の一本に出会える

第20回 東京フィルメックス

何のために映画祭はある? 「東京フィルメックス」ディレクターが語る

ぴあ

19/11/25(月) 12:00

毎秋に開催されている映画祭「東京フィルメックス」が現在、有楽町朝日ホールをメイン会場に開催されている。2000年にスタートした映画祭も今年で20回目。記念すべき年の開催だが、映画祭ディレクターの市山尚三氏は、過去を振り返るよりも「新しい展開を考えたい」と語る。

“アジアから世界へ、未来を見据えた国際映画祭がスタート”のコピーと共に東京フィルメックスが始まったのは2000年の12月。この段階で後に巨匠と称されるアピチャッポン・ウィーラセタクン監督や、今年のオープニングを飾ったロウ・イエ監督の作品がコンペ部門に入っているなど、作品を選ぶ眼の確かさが光っているが、市山氏は「最初はオフィス北野がメインのスポンサーで、森社長(当時)から“5年はやります”って言われていたんですよ」と振り返る。

「だからそれは5年間で体制をつくるって意味だったと思うんです。だから最初の年は民間から集めた協賛金だけでやったんですけど、2年目から文化庁の外郭団体の芸術文化振興基金の映画祭支援に申請を出して、国際交流基金にも申請して助成金を得ることができた。なので、必要な資金の半分ぐらいをそこでまかなって、残りを入場料収入と民間からの協賛金で集めることになりました。それに2回目からはNPO法人として映画祭事務局が独立したんですね。だからオフィス北野からの支援が途絶えることも、頭のどこかでは考えてはいたのかもしれません」

その後、映画祭は第18回までオフィス北野の、それ以降は別会社のサポートも受けながら続いている。「映画祭というのはそれで収入があるわけではないですし、広告価値があるかというとそんなにあるわけではない。だから、映画祭を続けていればスポンサーがつくかというとそんなことはないんですね。日本の企業は文化事業というよりは宣伝のためにお金を出しますから“これでどれだけ露出するの?”という話になりますし“これで何人が集まるの?”となる。そう考えると映画祭は厳しい。大規模なコンサートや美術館で数か月の展示をするとたくさん人が集まりますけど、映画祭は1週間ちょっとしかできないし、権利料があまりがあまり発生しないショートフィルムの映画祭なら全国を巡回できると思うんですけど、長編映画は東京で1回上映するだけでも調整が発生するので地方を巡回するのは難しいんです」

だからこそ映画祭や美術展の助成金、公的資金をめぐる昨今のニュースは、どの映画祭にとってもシリアスな問題だ。

「あいちトリエンナーレの問題でも頭が痛いのは、正直なところ“助成金はいらない”と言えるほど映画祭はお金が集まらないからなんです。フィルメックスもたくさんお客さんに来ていただいているんですが、それだけでは映画祭は成り立たないですし、みなさんに1回の上映で5000円払ってください!とは言えない(笑)。だからフィルメックスも毎年、毎年、助成金の申請をして結果を待つ状態ではあるんです。たとえばフランスのカンヌ映画祭だと、公金をもらって仏政府に批判的な映画を上映していたりする。でも、日本の場合を考えると、自治体も政府も“政府に批判的な映画を上映しようと思うんですけど”って言われたら、それは懸念を示すと思うんですよ。

だから、その時に映画祭としてどうするのか? 懸念を受けて中止にするのか、自分たちの責任で上映するのか……そういうことが試される時代になってきていると思います。だからフィルメックスでは、そこに変なバイアスはかけないで“映画として素晴らしいかどうか”でまず判断して、その上で上映するとどうなるのか? を考えることになると思います。純粋に“作品の質だけで選びました”と言っても問題が起きる時は起きるわけで、危機管理をしながら運営していかなければならない時代ではあると思います」

資金の問題、作品のセレクションの問題……映画祭の継続はやさしいことではない。さらにフィルメックスは観客と映画作家、評論家、映画祭のプログラマーが“同じ会場、同じロビー”に集まることにこだわってきた。会期中には若い映画作家を集めたワークショップ“タレンツ・トーキョー”が開催され、参加した若い映画作家が新作をフィルメックスで上映する流れもできつつある。

「映画祭は“人が出会う場所”だと思うんですね。昔は映画祭に行かないと観られない映画があったんですけど、いまはネット配信もあって観る機会は増えている。だから“人が出会えること”を第一に考えてきたのが釜山映画祭だと思うんです。釜山映画祭がなぜアジアでナンバー1の映画祭になっているかというと、創設した時から“人を集めること”を考えていて、世界の映画祭のプログラマーを招待して、企画マーケットを始めて、ワークショップも始める。すると、映画祭に出品している映画作家に加え、映画を選んでいる人、これから映画をつくろうとしている人、さらに未来の映画作家が同じ場所に集まる。自分でも海外の映画祭に行くのは、そこに行けば会える人がいるから。だから、ただ上映して賞を発表して終わり……という映画祭の意義はだんだん薄れてきていると思います。たくさん人が集まることで結果として良い作品が集まって、お客さんも楽しめる……そういう循環ができるといいんですよね」

だから今年もフィルメックスはゲストを招き、VR作品を上映するなど新企画を投入。さらに新しい映画人、新しい観客と出会おうとしている。

「今年はVR作品は手探りで1作品(イスラエル映画『戦場の讃歌』)だけの上映なんですけど、今後も拡大できないのか検討したいと思っています。今年は意識的に海外の映画祭でVR作品を観たんですけど、面白いものが多いですし、今後は普通の劇映画との垣根はだんだんなくなってくると思います。実験的な作品もゲーム的なものもありますけど、VRの監督が劇映画を撮ることも増えるだろうし、(アレハンドロ・ゴンサレス・)イニャリトゥみたいに劇映画でVRを撮る人はすでに出てきている。今回は20回目なので過去の作品を3本上映するんですけど、過去の栄光みたいなものは置いておいて(笑)、むしろ新しい展開を考えたいんです。だから過去に上映したことのない監督であっても素晴らしい作品なら上映したいですし、過去の監督の特集みたいなことにはしたくなかった。今後もこれまでフィルメックスを知らなかった若い人や、会場には簡単に来れない地方の人にも映画祭を知ってもらって、会場に来てもらえる方法がないか考えようと思っています」

20年かけて築いてきた実績と関係があるからこそ成立した豪華なラインナップと、新しい挑戦が同居する20回目の東京フィルメックス。今年も最終日まで様々な人が会場に集い、新しい展開を生み出すキッカケや出会いが生まれることになりそうだ。

第20回 東京フィルメックス
12月1日(日)まで
有楽町朝日ホール(有楽町マリオン)
TOHOシネマズ 日比谷ほか

Talents Tokyo 2019
11月30日(土)まで
有楽町朝日スクエアB

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