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マネジメントからクリエイティブまで、K-POP的要素はエンタメにおける成功例に? JO1、UNINEらから考察

リアルサウンド

20/3/9(月) 6:00

 オーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』で、番組視聴者である“国民プロデューサー”による累計約6,500万票の投票により選ばれた11人組ボーイズグループ・JO1(ジェイオーワン)が、3月4日にデビューシングル(EP)『PROTOSTAR』をリリースした。2月16日にはリードトラック「無限大(INFINITY)」のMVがフルバージョンでYouTubeに公開され、すでに500万回以上再生されるなど話題を呼んでいる。

 「無限大(INFINITY)」のMVは韓国のクリエイターにより、韓国で制作された。手がけたのはMVやCF(コマーシャルフィルム)などを幅広くプロデュースするA:WE Design(OK Shin)。これまでにTWICE、BLACKPINK、BTS・SUGA、SHINee、EXO・ベクヒョン、NCT 127といったビッグネームのMV制作に数多く携わり、JO1と同じく『PRODUCE 101』シリーズから誕生したWanna OneやX1も担当している。先日アルバムがリリースされ、公開から約1週間で再生回数2000万回を突破したIZ*ONE「FIESTA」のMVもA:WE Designの作品だ。

 「無限大(INFINITY)」はJO1の無限の可能性や無限の成長を体現した楽曲。曲名や歌詞からは“無限の広がり”が連想され、MVは「無重力」「宇宙」がキーワードとなっているように感じられる。例えば、冒頭で電灯にぶら下がる靴がふわりと上昇するシーン、川西拓実の部屋にある小物や佐藤景瑚自身が宙に浮くシーン、メンバーたちが惑星のまわりを回るシーン、大平祥生が持つ風船の上に豆原一成が腰掛けているシーンというように、曲中にたびたび登場する「重力から解き放たれるイメージ」が登場するのが印象的だ。

 また、ダンスブレイクの最後に川尻蓮が上腕二頭筋にキスをする場面は、『PRODUCE 101 JAPAN』でファイナルまで残った本田康祐を彷彿とさせると話題に。「無限大(INFINITY)」のMVが公開されると、曲名に加え「筋肉キス」というワードがTwitterのトレンドにランクインするなど反響を呼んだ。ほかにも「番組でおなじみの練習生をオマージュしているのではないか?」というシーンがいくつかあり、ファンが熱い盛り上がりを見せている。

(関連:TWICEからEXO、ジェジュン、SUPER JUNIORまで……新型コロナ感染拡大を受けたK-POPスターたちの寄付活動

■MVにおけるK-POP的要素とは?

 K-POPにおいて、MVは単なるプロモーションツールの範疇をこえた総合芸術であり、“K-POPそのもの”といえる。そこには、最先端のサウンド、レベルの高いダンスパフォーマンス、多様なファッションとメイク、アート、物語、メッセージ性など、ファンを魅了する要素すべてがつまっている。美術、CG、撮影技術などを総動員してそれらを組み合わせることで、MVはアーティストの魅力や楽曲のカラーを最大限に可視化させているのだ。そしてこの“K-POP的な側面”はJO1のMVにも見出すことができる。

 一般的に、K-POPのMV撮影はスタジオに大規模なセットを組んで行われることが多く、ダンスシーン、ソロカット、グループカット、ユニットカット……と、幾重にも場面が転換していく。「無限大(INFINITY)」を見てもわかるように、衣装は何パターンも用意され、ヘアメイクやビジュアルも多彩に変化するのも特徴の一つだ。当然、通常日本で制作されるものよりも大規模な予算が注ぎ込まれるが、K-POPにおいてMVはそれほど重要視されるものであり、アーティストの命運をわけるコンテンツなのである。

 そもそもJ-POPアーティストはYouTubeで公開されるMVがショートバージョンのみや非公開という場合も多く、誰もが気軽に視聴できるようになったのは最近のことだが、K-POPアーティストではかねてから音源リリース日にフルバーションが公開されることが大前提。YouTubeをはじめとしたソーシャルなプラットフォームでストリーミングされ、グローバルに拡散されていくことを目的に制作されている。そうすることで、既存のファンだけでなく国境を超えて幅広いリスナーにアプローチし、世界中にファンダムを広げ、再生回数やフォロワーといったソーシャルでの影響力を高めながらアーティストのブランド力や広告価値を高めてきた。

 K-POPのグローバルな成功とYouTubeの関係性については数多く語られているのでここでは割愛するが、結果的に現在、韓国のアイドルグループはデビューしたてでもMV公開直後に数百万ビューを達成するのも珍しいことではなくなった。

 ちなみに、韓国で2019年に公開され現在までにYouTubeで1億回再生を超えたMVは、BTSの「Boy With Luv」(7億回)、BLACKPINKの「Kill This Love」(7.4億回)、TWICEの「Feel Special」(1.8億回)、ITZYの「ICY」(1.3億回)、TOMMORROW X TOGETHERの「CROWN」(1億回)などと、いわゆる“アイドル”にカテゴライズされるグループが占めている。

■“K-POP式”のプロモーションやマネジメント

 「無限大(INFINITY)」のフルバージョンMVはファンの熱い要望を受けCD発売前の公開に至ったが、JO1はそれ以外にもコンセプトトレーラーやシングル収録曲のアニメーションビデオを公開している。さらに、デビューシングルリリース日に向けて各メンバーのティーザーフォトを公式Twitterなどを通してカウントダウン式で公開。連日SNSを賑わせている。

 こうしたYouTubeやSNSを利用したプロモーションは、K-POPアーティストがカムバックする際の定番だが、日本を拠点に活動するアーティストとしてはなかなか斬新な取り組みではないだろうか。

 しかしながら、このように“K-POP式”のプロモーション方法やマネジメントを取り入れ、韓国のクリエイターに楽曲やMV制作を依頼するケースは、実はJO1のみにとどまらない。

 たとえば、中国ではかねてから各芸能事務所が韓国の練習生育成システムを取り入れており、ファンダム文化(広告出資、寄付、バースデーイベントといったサポート活動など)を含むアイドル市場全体がK-POPの影響を受けて形成されている。“中国版プデュ”の『青春有你(Idol Producer、Youth with You)』から誕生し、2019年4月にデビューしたアイドルグループ・UNINEのデビュー曲「BOMBA」は楽曲制作、MV・ジャケット撮影、それにともなうヘアメイク&スタイリング、レコーディングなどすべてを韓国で行っている。

 また、日本ではソニーミュージックとJYPがメンバーのキャスティング、トレーニング、企画、制作、マネジメントまでのすべてを共同で行う「Nizi Project」が始動しているが、ベトナムではMAMAMOOらの所属事務所RBWと韓国最大の音楽プラットフォーム運営企業カカオMが共同で企画した現地のボーイズグループ、D1Verse(ダイバーズ)がデビューを果たしている。同グループは動画配信サービス「V LIVE」とベトナムの放送局で放送されたサバイバルリアリティを通し、7名の練習生から5名のデビューメンバーを選抜。RBWのアイドル育成とコンテンツ制作ノウハウのもと、韓国でトレーニングを受けデビューに至った。

 このように、K-POPというジャンルが世界的な音楽市場で地位を確立したことにより、マネジメントからクリエイティブまでK-POPをK-POPたらしめるシステムそのものが、“お手本”や“成功例”として各国のエンターテインメント産業に変化をもたらしている点は非常に興味深い。

 一方、JO1は韓国発のオーディション番組から誕生し、K-POP式の体系化されたシステムを生かしながらも、日本特有のファン文化、ご当地性を含む本人たちのバックグラウンドやストーリー、練習生としての教育を受けていないからこその定型化されていないコメント力……というように、さまざまなファクターが入り混じることで、日本でしか誕生しえないオリジナリティを生んでいる。グローバルな成功を収めた韓国のフォーマットと日本独特のカルチャーの中で生まれ、まさに無限大の可能性を秘めた彼ら。これからどんな化学反応をおこし、どのような現象を生んでいくのかが楽しみだ。(後藤涼子)

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