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『いだてん』阿部サダヲの前に立ちはだかる浅野忠信 「俺のオリンピック」に込められた政治の思い

リアルサウンド

19/11/4(月) 14:30

 11月3日に放送された『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)第41回「おれについてこい!」。田畑政治(阿部サダヲ)が語った「オリンピックのあるべき姿」は印象に残るものだった。

まず紹介したいのが、政治と“岩ちん”こと岩田幸彰(松坂桃李)とのやりとりだ。政治は自身の右腕として岩田に絶対の信頼を寄せている。政治が「俺のオリンピック!」と一声あげれば、岩田は即座に国立競技場の模型を用意する。亀倉雄策(前野健太)がオリンピックの総合デザイン顧問を断りかけたときも、政治の「岩ちん!」という一言で、即座にフォローに入る岩田。阿吽の呼吸で仕事を全うする政治と岩田の関係性を、阿部と松坂はリズミカルなやりとりで表現する。バー「ローズ」で明かされた岩田“画伯”のくだりでは、岩田にデザインの才能があると信じている政治のキラキラとした目と、真実を打ち明けられず、マリー(薬師丸ひろ子)に助けを求める岩田の表情が面白い。

政治は岩田を1年間ローマに派遣し、ローマオリンピックの視察を託した。帰国した岩田はローマオリンピックでの熱狂と、東京オリンピックの財源課題を解決する糸口として「トトカルチョ」というスポーツくじを紹介する。

だが、日本政府は政治らの提案を好ましく思わなかった。政治は政府関係者に対しても歯に衣着せぬ発言をするが、オリンピック担当大臣・川島正次郎(浅野忠信)が立ちはだかる。ことあるごとに「俺のオリンピック」と口にしていた政治。川島はそれを指摘する。しかし政治は決してオリンピックの計画を独断場で進めたいわけでも、成果を独り占めしたいわけでもない。政治は大物政治家たちに物怖じすることなく、「日本のオリンピック」「国民のオリンピック」と発した川島らにこう言った。

「だったら渋滞なんとかしてくれよ。国民の生活、もっと豊かにしてくれよ。国民の一人一人がさ、“俺のオリンピック”だって思えるように盛り上げてくれよ、先生方!」

阿部の勢いのある台詞回しが心に刺さる。政治が発した「俺の」は、国民一人一人が誇りをもって思えるようにするための責任感からくる言葉なのだ。皮肉なことに、「日本の」「国民の」と発した政治家たちこそ、オリンピックを政治利用、私物化しようとしているように見える。

政治家と真っ向から対立する政治は、選手村の場所を代々木にすることにもこだわり続ける。「スタジアムの興奮が冷めない距離じゃないとダメなんだ」「選手の記憶に刻まれるのは、選手村で過ごした時間なんだ」と政治は言う。岩田をローマに派遣したのも、政治自身がロサンゼルスオリンピックで味わった世界各国が交わる混沌を知ってもらうためだった。そして政治は、政治が望むオリンピックの形を語る。

「名もなき、予選で敗退する選手ですら、生涯自慢できるような大会にしたい」
「共産主義、資本主義、先進国、途上国、黒人、白人、黄色人種、ぐっちゃぐちゃに混ざり合ってさ、純粋に、スポーツだけで勝負するんだ」

これこそ、オリンピック本来の姿なのではないだろうか。政治はロサンゼルスオリンピックで世界各国の人々がスポーツで交流する姿を見てきている。そして政治の力が働いていたベルリンオリンピックも。政治が望むのは、選手たちが純粋にスポーツに励めるオリンピックだ。国民が“平和の祭典”に関わる一員として参加できるオリンピックだ。

オリンピックのために奮闘し続ける政治に、人々は心を動かされる。東(松重豊)は「まーちゃんのためなら一肌脱ごうって自然と(人が)集まってくる」と話し、亀倉は「田畑さんのためならと、周りをその気にさせてしまう何かがあるんだよなあ」と口にする。川島をはじめ、政治家とはもう一悶着ありそうだが、政治の熱意ある言動が彼らをも動かすのかもしれない。(片山香帆)

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