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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

“本当に大事な人は誰か”を考えさせられた『Our Friend/アワー・フレンド』

月2回連載

第76回

予想をはるかに超えた感動があり、涙腺崩壊でした

今回は公開したばかりの洋画を2作品紹介します。まずは『Our Friend/アワー・フレンド』。『Esquire』誌に掲載された感動のエッセイが原作の人間ドラマです。

ジャーナリストのマットは妻のニコルとふたりの幼い娘たちと幸せに暮らしていました。ある日、ニコルが末期がんで余命半年と診断され、一家の日常は一変。特にマットは、ニコルの介護と子育てと仕事で目の回るような生活になり、心が壊れそうになります。

『Our Friend/アワー・フレンド』

そんなときに救いの手を差し伸べてくれたのは、彼らの親友でスタンダップコメディアンのデイン。マットたちを助けるために、ニューオリンズからアラバマ州の田舎町にある彼らの家に移り、住み込みで彼らをサポートし始めることに……。

『Our Friend/アワー・フレンド』

私が大好きなダコタ・ジョンソンが妻ニコル役を演じている感動作。離れて暮らす家族や友達と思うように会えない、家族愛や友情に飢えているこのご時世だからこそ観てほしい作品です。

『Our Friend/アワー・フレンド』

もうね、涙腺崩壊でしたよ……。この作品に出てくる友達との関係性や家族を思う気持ち、全部に自分や自分の親しい人たちを重ね合わせちゃう。ぶっちゃけ設定から言って「あぁ、もうこれは泣かせにかかる映画だな」ということは分かるじゃないですか。これは悲惨な境遇を経験する夫婦の話だ、って。でも、その予想をはるかに超えた感動がありました。

『Our Friend/アワー・フレンド』

タイトルにもなっているとおり、この作品のテーマは別離ではなく友情。自分のことはさておき、とにかく困っている親友のためにできる限りのことをしようとするデイン、そんな彼に甘えきるのでなく、いい距離感を保ちながら残された時間を充実したものにしようとする夫婦。この関係性で見えてくるのが、“本当に大事な人は誰か”ということです。

『Our Friend/アワー・フレンド』

人それぞれ、それは違うものだとは思いますが、この作品を観るとあらためて「誰との関係が自分にとって一番大事だろう」と考えさせられるはずです。大事な人だからべったり、というのも違うし、適当なつき合いだから突き放す、でもありません。

私はこれを観て、程よくいい距離感を保って、お互いを尊重しあう関係というのが、人生においてもっとも大事な人に必要なことじゃないか、ってことに気づかされました。

何か新しい一歩を踏み出したいけど勇気がない人におすすめです!

さて、もう1作品は『TOVE/トーベ』。ムーミンの原作者であるトーベ・ヤンソンの半生を描いた伝記映画です。

第二次世界大戦真っ最中、ヘルシンキの防空壕でおびえていた子供たちに話した物語からムーミンの世界を作り出したトーベ。彼女は戦後、戦争の爪痕残るアトリエで創作活動を再開させます。彼女は、彫刻家で厳しい性格の父親とは全く反対の作風や性格で、自由を謳歌。

『TOVE/トーベ』

でも、当時の美術界の流行りと自分の作風のズレに苦しみ、パーティライフに身を投じていきます。そんなとき、舞台演出家の女性ヴィヴィカと出会い、ふたりは惹かれ合っていくのですが……。

『TOVE/トーベ』

フィンランド以外だとフランスと日本で大人気のムーミンですが、その作者のたどった人生にはこんなことが! と発見の多い作品です。

実は私、フランスで製作したアニメーション映画『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』(15)で、トーベの別荘やアトリエ、彼女の友人の家を訪れ、彼女の姪っ子さんにも会ったんですよ。それまでスウェーデンの隣国で作られたムーミンのことはそれほど詳しくなかったんですが、あの取材のおかげでめちゃくちゃ詳しくなりました(笑)。

『TOVE/トーベ』

日本のムーミンファンの人たちは、ムーミンのことは誰より知っていても、トーベ・ヤンソンの実像はあまり知らないのでは? そんな人には絶対に観てもらいたいですね。

あの作風からはちょっと想像ができないほど破天荒で、人生を楽しんでいるトーベを見ることができます。しかも、主演のアルマ・ポウスティは、もうトーベ本人じゃないか、ってくらいにハマり役。

『TOVE/トーベ』

彼女は2014年にトーベ・ヤンソン生誕100周年を記念して制作された舞台版の『トーベ』で本人を演じていたり、『劇場版 ムーミン…』でも主要キャラの吹き替えをしている、一番トーベを知る俳優なんですよ。だからこそ、彼女が演じるトーベは妙な真実味を感じるんですよね。

この作品で言えるのは、彼女の型破りに見える生活も、燃えるような恋愛も、すべて作品に生きる経験だったこと。特に恋には無駄なことがひとつもないことを感じさせてくれます。何か新しい一歩を踏み出そうとしたくても勇気がない、というような人には絶対おすすめですよ。

『TOVE/トーベ』

※次回は10月22日(金)に更新予定です!

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己

(C)BBP Friend, LLC - 2020
(C)2020 Helsinki-filmi, all rights reser

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売された。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社 1400円(税別)
発売中

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