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5週ぶりランキング発表も夜明けはまだ先 命運を担うのは、米国も日本もワーナーに?

リアルサウンド

20/5/20(水) 19:00

 先週決定した全国39県を対象とする緊急事態宣言解除を受けて、日本各地で一部の大手シネコンを含む約100サイトの映画館が営業を再開。5週間ぶりに、週末の映画動員ランキングが発表された。同じく一部の映画館で営業が再開しているアメリカでは、3月半ば以降、これで9週間にわたってボックスオフィスのランキングが発表されていない。これは、新作の供給不足もあって、日本と違ってアメリカでは営業再開が可能となった地域でもシネコンチェーンの多くがまだ閉まっているためだ。このような国による対応の違いは今後もしばらく続くだろう。本コラムで再三述べてきているように、興行サイドが待ちわびているのは、「強力な新作」の公開だ。現状、営業している映画館の多くも、ここ数ヶ月の損失を焼け石に水であってもリカバーしなくてはいけないという現実と、場内のウイルス感染対策的にも世の中のムード的にもまだ声高に客を呼び込むことができないというジレンマの中にある。このような時期に毎週コラムを更新していることに意味があるとしたら、そのムードを少しでも変えることだと自分は考えている。

参考:『るろうに剣心 最終章』初の映像となる特報公開! 佐藤健と新田真剣佑が剣を交える

 そうした事情を考慮すれば、先週末のランキングに『天気の子』、『君の名は。』、『シン・ゴジラ』といったこれまで散々こすり倒されてきた旧作、というか近年のヒット作(『AKIRA IMAX版』に関してはもともと4月に公開予定だったので一緒くたにしない方がいい)が入っていることを揶揄するのは野暮だろう。地方の各劇場が、現在上映可能な作品の中から、このような時期にも映画館に足を運んでくれる観客に喜んでもらえそうな作品を選んだラインナップならば、それが現在の日本の映画文化だと粛々と受け止めるしかない。

 引き続き、海外では7月17日全米公開のクリストファー・ノーラン監督新作『TENET テネット』が予定通り公開されるかどうかに注目が集まっている。未だに正式な発表はないものの、もし『TENET テネット』が7月17日に公開できなかった場合、同じワーナー作品の『ワンダーウーマン 1984』の現時点での公開予定日である8月14日にスライドされて、『ワンダーウーマン 1984』は『TENET テネット』に玉突きされるかたちで今年のクリスマス・シーズンまで公開がずれ込む線が濃厚だという。

 ちなみに日本での『TENET テネット』の公開予定日は(パンデミック以前から)9月18日。未だにホームページでも変更がないことから、海外の公開日がいつになるにせよ、おそらくは予定通り公開されるだろう。一方、当初6月12日公開(海外では6月5日公開)とアナウンスされていた『ワンダーウーマン 1984』は、現状日本では「近日公開」となっている。アメリカよりも先に公開されることは考えにくいので、もしアメリカでクリスマス・シーズンの公開になってしまったら、日本では年内に公開されるかどうかも怪しくなってしまう。

 本来ならば鉄板のフィランチャイズである6月の『ワンダーウーマン 1984』が前作に迫るような大ヒットを飛ばし、その勢いで「完全オリジナル脚本」「非スター映画」という意味で興行的なギャンブル性の高い7月の『TENET テネット』のヒットに結びつけたかったに違いない本国のワーナー・ブラザースだが、結果的に映画興行回復の命運を担うことになってしまったわけだ。

 実は、ワーナー作品が映画興行回復の命運を担っているのは日本も同様だ。これまで本コラムでは3月から8月に公開延期になった『映画ドラえもん のび太の新恐竜』に注目してきたが、現時点で最も早いタイミングで公開日がやってくるメジャー大作は、7月3日公開のワーナーのローカル・プロダクション作品『るろうに剣心 最終章 The Final』。2014年9月に公開された『るろうに剣心 伝説の最期編』以来、約6年ぶり、シリーズ4作目となる同作だが、続いて8月7日にはその後編の『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の公開も控えている(「The Final」が前編で「The Beginning」が後編というのもなかなか紛らわしいが)。当然、現在はマスコミ試写も稼働しておらず、作品の仕上がりは未知数だが、今のところ公開日に変更がないことから、日本で『TENET テネット』の役割を担うのは『るろうに剣心 最終章 The Final』ということになる。『TENET テネット』の関係者も、『るろうに剣心 最終章 The Final』の関係者も、公開が最終的に決定するまでは眠れない夜を過ごすことになるだろう。(宇野維正)

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