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地点×松原俊太郎「君の庭」開幕を前に、三浦基「コロナ禍の経験を反映した」

ナタリー

20/9/9(水) 18:32

地点「君の庭」の取材会より。左から三浦基、松原俊太郎。

地点「君の庭」の取材会が、本日9月9日に京都・ロームシアター京都で開催された。

「君の庭」は、地点の三浦基と劇作家の松原俊太郎がタッグを組む最新作。天皇制をテーマに、松原がコロナ禍に書き上げた“告発劇”が三浦の演出で立ち上げられる。「君の庭」には劇場版とオンライン版があり、両作は相互補完的な関係になるという。

取材会には三浦と松原が出席。記者から、天皇制というテーマについて尋ねられた三浦は「『CHITENの近現代語』『CHITENの近未来語』というレパートリー作品や、松原くんのほかの作品でも天皇制に触れている部分があったので、必然的に出てきたテーマでした。今作は天皇制の問題点を暴くような劇ではなく、あくまでフィクションとして、天皇をモチーフにした王や王妃、その娘が登場します」と答える。

これを受け、松原は「天皇制は憲法で規定されていて、日本では誰しもが前提としなければならない制度です。今まであまり言及されなかったことを掘り起こし、その前提を疑ってみないと見えないこともあるなと思いながら戯曲を書きました。本作を観ることは、天皇制が自分たちに近しいものだと気が付く体験になると思います」と分析した。

劇場版とオンライン版の戯曲レベルでのアウトプットの違いを問われた松原は「これまでは舞台上で声が発されることを前提に書いていたので、配信用の脚本を書いたのは今回が初めて。配信となると、個人の持っているスピーカーから声が聞こえてくるので、配信という存在自体を戯曲に取り込み、劇場での上演と配信を両立できる形式にしました。書いた本人としてもどうなるのか楽しみです」と、上演・配信に期待を寄せる。

三浦は「コロナの状況が読めない時期から計画していた作品なので、稽古場に人が集まれない問題や、どうやったら上演可能かという話を各劇場と相談していました。その中で出てきたのがオンライン版。私からは『無観客上演をただ中継する配信だと、勝ち目がなんじゃないか?』という提案をしました」と懐述し、「客席から舞台を見つめる目線だけではない、配信ならではの面白さを追求したかった。今回はこれまで劇場に来たことがない方に観てもらえるチャンスですし、劇場に観に来ていただいた方は、配信版を観ることによって相互補完的に楽しめると思います」と解説した。

三浦は「コロナに言及したセリフもたくさん出てきます」と明かしつつ、「松原戯曲では、常にアクチュアルな問題を扱っているので、コロナを連想させるような話にもなっています。また、激しい運動や俳優同士の接触をゼロにしているので、いつもの地点とは違った条件下での演出になりました。録音も多用していますが、これはコロナ禍でなければできなかった演出です。新しいことにチャレンジして、それなりに成果を出せている自負は持っています」と言葉に力を込める。

松原は、自粛期間中に行われたリモートでのクリエーションについて触れ、「リモートのツールは便利ではありましたが、直接話したほうがスムーズだろうなとは思いましたね。うまくコミュニケーションが取れない中で話し合わなければならない、“もどかしさ”も戯曲に取り込んでいます」とエピソードを話す。

三浦は「本読みや稽古、スタッフとの打ち合わせにはZoomを使いました」と制作期間を振り返りながら、「Zoomで自分の顔を見ながらしゃべることや、自分が話していることが同時に聞こえてくるという体験は特殊でした。Zoomを使っている2人が同じ部屋にいるとき、どちらかがミュートにしないとハウリングを起こすということも新鮮な発見で、その経験が今作の演出に反映されています。ピンマイクでハウリングの効果を狙ったり、誰も何もしゃべらないとき、別のところから進入してくるような音を使ったりというアイデアも生まれた。コロナ禍の経験から、改めて人とコミュニケーションするということに興味を持ちました」と実感を語った。

松原は「これまでの戯曲には独自のキャラクターを登場させていたのですが、今回初めて王や王妃などを登場させて、パロディに挑戦しました。これを一過性のもので終わらせないようにしたいと思います」と今後の創作にも意欲を見せる。最後に三浦は「今回は演出だけでなく、録音や配信用の映像の制作にも能動的に関わっているので、せっかくなら“YouTuber”になりたいとも思ったのですが(笑)、(YouTuberは)編集や字幕を付けるだけでも相当大変な作業をされているということを実感して。やはりこれからも純粋に演劇をやっていきたいと思います」と締めくくった。

公演は9月14日から22日まで京都・ロームシアター京都 ノースホール、26・27日に愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース、10月1日から11日まで神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオにて。各地のオンライン版は、それぞれの初日から10月18日までPIA LIVE STREAMで配信される。なおオンライン版は劇場からの生中継ではなく、舞台上の出来事に映像演出を加えたものが配信される予定だ。

地点「君の庭」劇場版

2020年9月14日(月)~22日(火・祝)
京都府 ロームシアター京都 ノースホール

2020年9月26日(土)・27日(日)
愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース

2020年10月1日(木)~11日(日)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

作:松原俊太郎
演出:三浦基
出演:安部聡子、石田大、小河原康二、窪田史恵、小林洋平、田中祐気

地点「君の庭」オンライン版

各会場の初日~10月18日(日)

作:松原俊太郎
演出:三浦基
出演:安部聡子、石田大、小河原康二、窪田史恵、小林洋平、田中祐気

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