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広瀬すずが振り返る、『なつぞら』に捧げた1年間 「ギリギリなところで余裕を持って」

リアルサウンド

19/9/19(木) 6:00

 NHK連続テレビ小説『なつぞら』では、ついになつ(広瀬すず)と生き別れの妹・千遥(清原果耶)が再会。兄の咲太郎(岡田将生)とともに、奥原三兄妹が絆を取り戻した。

参考:『なつぞら』脚本家・大森寿美男が明かす最終回に向けての構想 “開拓者精神”をどう描くのか

 半年間に渡り放送を続けてきた『なつぞら』だが、放送も残すところあと10日となった。8月中旬、クランクアップを間近に控えた主演の広瀬すずがインタビューに応じ、なつとして生きたこの1年ほどを振り返り、本作に寄り添い続けた思いの丈を語った。

■「途中からは『大丈夫?』とも聞かれなくなりました」
ーークランクアップまであと少しというところまで来ました。撮影を振り返っていかがですか?

広瀬すず(以下、広瀬):20歳になったタイミングで、子どもを産むまでのお芝居をするのは、試されているなと思う瞬間もありました。今まで自分がやってきた作品の中でも、見てくださっている方が多く、反響を間近で感じることができたのが朝ドラならではだなと。自分はあまり意識していなかったのですが、「(朝ドラ100作目のヒロインを)誰がやるんだろうと思ってた」と、同世代の女優さんや同業者の方からも言われたので、すごく大切な節目であり、朝ドラの大きさを改めて感じましたね。

ーー共演者の方が、ヒロインとして凛としていらっしゃると言っていました。

広瀬:朝ドラヒロインをやると、多少精神的にやられると聞きます。今までも大変な現場や追い詰められた経験があったのですが、体力的に追い詰められるより、精神的に耐えれなくなる方が大変だなと。なので、楽しんだもの勝ちだと思っていた部分がありました。今回は、体力VS自分というような環境だったので、そこは大丈夫でしたし、楽しさが勝っている瞬間が多かったので、途中からは「大丈夫?」とも聞かれなくなりましたね(笑)。

ーー座長として意識していたことなどありますか?

広瀬:それが何もないんです……。私だけ毎日撮影していて、入れ替わりでいらっしゃるみなさんを迎えるので、みなさんに楽しいと思ってもらえたらいいなと。長期の撮影で大変だけど、楽しんだ方があっという間に感じるし。人見知りなんですけど、積極的に話したりしましたね。

■「大好きな人たちに囲まれる環境が幸せ」
ーー共演者の方はみなさん「広瀬さんが現場で台本を読んでいる姿を見たことがない」と言っていました。

広瀬:台本は現場には持っていかないのですが、撮影するシーンがわからなくなったら遠慮なく助監督さんやメイクさんの台本を借りて見てましたよ(笑)。動いてイメージがついたら意外と忘れないので、本番よりリハで完璧にしておきたいタイプなんです。忘れたくらいで演じて、新鮮味が戻ってきた方が面白かったりするので、変に意識せずラフにいました。共演者の人に「(広瀬さんが)完璧だからちゃんと覚えていかなきゃいけないなと思うんだよね」と言われたこともあったんですけど、長い間やっているので、だんだんセリフ覚えが良くなっていくんです(笑)。

ーー撮影前日に家で読むんですか?

広瀬:最初は、迷惑かけれないなと思って、本番の前日にシーンをチェックしていたんですけど、だんだんやらなくなってきて。今日撮影するシーンもリハを1週間前にしたんですけど、現場にいたら思い出すかなという感覚でやっています。喋っていると、だんだん思い出してくるから、その場で思いついた言葉のように出てきて面白いんじゃないかなと。そうすると感情が入りやすいので、ギリギリなところで余裕を持ってやっています。

ーー18週で坂場さんに別れを切り出す喫茶店での長ゼリフも?

広瀬:そうですね。でもあのシーンが『なつぞら』の中で一番緊張しました。リハを1、2回だけやって、現場に入ると、座り位置だけ確認して本番一発勝負だったんです。完璧にしているわけではないですけど、頭にはなんとなく入っているギリギリの余裕な状態を楽しんでいました。私は常に出ていて、『なつぞら』以外のことを考える時間がそもそもないので、他の現場を掛け持っているキャストと比べてそこは得していたかもしれません。

ーー放送では、なつがついに千遥との再会を果たしました。清原果耶さんと実際に演じてみていかがでしたか?

広瀬:最後の2週で千遥との距離がぐっと近くなるんですけど、2週では足りないなって(笑)。清原ちゃんは映画で共演したことがあって、近いところにいる人だと思っていました。なので30年ぶりの再会を演じるとなると、少し掴めない感覚がありました。実際に清原ちゃんとどのシーンをやってもしっくり来なかったんです。それは上手くできなかったわけではなく、存在も近いようで会わなかったし、前の作品ではライバル関係だったし、姉妹の距離感がわからなくて、でもその戸惑いこそが30年ぶりに家族に会えた距離感なんだろうなと。でも、もう一回家族になりたいと思うなつだから、距離を縮めようとするんですけど、喋っている自分に居心地が悪くなってきて、そういった変なモヤモヤ感がずっと自分の中にありました。

ーー清原さんをはじめ、『なつぞら』にはこれまで広瀬さんが他の作品で共演された役者がたくさんキャスティングされていました。ここまでの女優人生を振り返る機会でもあったのかなと。

広瀬:ドラマ、映画、CMと全ジャンルの人たちが集まっている感じがありました。距離の近い人がたくさん集まっているので、実の姉とお芝居するくらいのやりづらさがありました(笑)。それこそ(中川)大志くんやリリー(・フランキー)さんは、私を中学生の頃から知っていて。リリーさんは同じ作品に出るのが5回目なんですけど、今まで一瞬だったり親子役なのに会わないことが続いていて、初めてちゃんとした絡みがあったので、やりづらいなと思ってしまうくらい距離が近い存在です。大志くんも同い年で、天陽くん(吉沢亮)となつじゃないけど、同志みたいな感覚でいました。20歳になって夫婦役を2人でできるのも不思議だねと話してたくらいで、いろんな人に特別感があって、恥ずかしいですけど、大好きな人たちに囲まれる環境が幸せだなと思いながらやってたから、楽しいがずっと勝ってたのかもしれないです。でも、未だにやりづらさはあります(笑)。

■「自分を優先しすぎなんじゃないかと思った瞬間もありました」
ーー『なつぞら』で結婚、子育てを演じたことでご自身の考えに変化は生じましたか?

広瀬:妊娠がわかってからも「仕事を辞めたくない」と言うなつに、どんな反響があるんだろうとは気になっていました。やりたいことを優先しすぎてるように見えるのかもしれませんが、意外となつの周りにはそれに共感してくれる人がいます。それは、ある意味女性にしかわからない感覚なのかなとも思うんです。自分よりも子どもが最優先にいることの幸せもわかるけど、自分のやりたいことを辞める覚悟は簡単にできません。私は客観的になつを見て、自分を優先しすぎなんじゃないかと思った瞬間もありました。でもオンエアを見て考えると、やはり欲として自分の時間がもう少し欲しいのかなと思ってしまいました。

 私は、子どもが大好きなので、10代の頃から早く子どもが欲しいと思っていましたが、実際20歳を超えて、子どもができてもおかしくない年齢になって考えてみると、なつの葛藤がすごくわかります。そこは永遠に悩むことなんだろうなと。今までは、付き合うとかめんどくさいからすぐ結婚して子どもが欲しいと思っていたんです(笑)。でもなつを演じて、それがなくなった。いろんな葛藤があって、全国のお母さんたちはすごいんだなと思うし、作中の“犠牲”という言葉を、自分も数日引きずりました。

ーー脚本を手がけた大森寿美男さんは本作を「ホームドラマ」と表現していました。

広瀬:なつのベースは柴田家で、柴田家の人たちには家族だけどどこか感謝がある。気を遣っているのではなくて、どこかかしこまっていたのが柴田家です。風車では、亜矢美さん(山口智子)とお兄ちゃん(咲太郎/岡田将生)と暮らしていて、血の繋がった家族がいると、多少の乱れが出るというか、一気に立ち振る舞いが変わった印象があります。それとは違う居心地の良さが坂場家にはあって、なつ自身が開拓していく家族が坂場家なんです。どれもテンションが違うし、一緒にいると空気感が違うんです。

ーー最終回に向けた見どころをお聞かせください。

広瀬:やっぱり千遥です(笑)。なつにとって、子どもの頃からの家族が奥原家で、お兄ちゃんと千遥の3人で会うことが、人生最大の求めているものなので、演じていても会えなかった30年分をこれから埋めていきたいと思うくらい情が出てきました。そして最後には、なつのいろんな人への感謝や、生きてきた道を記すような作品が生まれます。好きなものと人に囲まれた人生だったなつの姿から、運の強さや巡り合わせを思わせてくれるような時間がたくさん見えるので、見ている方にも自分と照らし合わせて、いろんなものを感じてもらえる作品になったらいいなと思います。

(取材・文=安田周平)

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