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和田彩花の「アートに夢中!」

『STEPS AHEAD: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示』 『テート美術館所蔵 コンスタブル展』

月2回連載

第57回

21/4/5(月)

『STEPS AHEAD: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示』

アーティゾン美術館は開館してから本当に大好きで通うようになった美術館です。ブリヂストン美術館時代のコレクションだけでもすばらしかったのに、お休みしている間にさらにコレクションを増やしているなんて!

だから、アーティゾン美術館の収蔵品だけで構成された展覧会『STEPS AHEAD: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示』は本当に楽しかったです。201点もの作品が展示されていて、そのうち92点が新収蔵作品でした。オーストラリアの現代美術や、抽象表現主義の女性作家など、いままで知らなかった素晴らしい作品を知ることができるのも非常にうれしかったですね。また、芸術家の肖像写真コレクションも87点展示されています。

総展示数201点他の大規模展覧会

藤島武二《東洋振り》1924年

展覧会は全14章で構成されています。そのなかでも印象に残っているのをいくつか挙げると、まず第1章の「藤島武二の《東洋振り》と日本、西洋の近代絵画」。新収蔵品の藤島武二の《東洋振り》の、中国服を着ている女性を見て、当時の日本の人たちの大陸への意識について面白く感じました。

というのは、異国へのまなざしや、当時の植民地主義など国や人種にまつわる問題に関心を持つようになってから、自分の作品の見方が変わってきたと感じているからです。この作品に描かれている中国服を着た女性は、昔だったら単なる異国趣味だと自分は解釈していたと思います。でも、その「異国趣味」って、だれにとっての異国趣味なのだろう?と、考えるようになりました。日本も中国も大きな目でみれば同じアジア圏ですが、この絵は西洋の視点を借りてきて描いた絵になっていると思うのです。では、なぜ自分たちもアジアの人間なのに、彼はこのような描き方をしたのかって。どんな時代背景があったんだろう?って。このごろ、一つひとつの絵を見て解釈するのが改めて面白いと感じています。

黒田清輝《針仕事》1890年

同じく、この章の黒田清輝の《針仕事》は、まさに西洋の主題って感じですよね。日本人が描いたようには見えない雰囲気です。窓辺に座って手仕事をしている女性像は、西洋絵画でもよく描かれているテーマで、窓から差し込む光が美しい。19世紀以降の筆触を残す描き方なんですね。黒田がフランスで学んで来たことが、この絵にはしっかり入っているなと感じました。

デザインも抽象画も扱いバラエティ豊か

ヴァシリー・カンディンスキー《3本の菩提樹》1908年

第3章の「カンディンスキーとクレー」も印象深かったです。カンディンスキーの作品って、私のなかでは幾何学的で抽象的なスタイルのイメージが強いのですが、《3本の菩提樹》のような、抽象画を始める前の風景画を見ると、「ああ、カンディンスキーもこういう過程を通ってから、あの抽象画になったんだ」と気づけました。フォーヴィスムの影響が強いのでしょうか、色の使い方が鮮やかで、葉っぱの点描的な色のつけかたも面白い。

倉俣史朗《ガラスのベンチ》1986年

つづく第4章の「倉俣史朗と田中信太郎」もよかったです。アーティゾン美術館に行って展示室に行くと、エレベーターを登った先にある6階のロビーに倉俣史朗さんデザインのベンチが置いてあるんです。このベンチがお気に入りで、いつも座っていたんです。今回は、そのひとつ《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》は展示室にある。展示の文脈がわかるので見ていて楽しいです。今回もロビーに置いてあるこの《ガラスのベンチ》は曲線と直線のバランスがとても良いですし、全くムダのない形なのに、背もたれが微妙にカーブしていたりしていて座り心地もいい。

鑑賞者の休憩用にベンチを用意してくれる美術館はけっこう多いんですけれども、素敵なベンチがある美術館って、実はなかなか少ない。だから、アーティゾン美術館で初めて、倉俣史朗デザインのベンチがあって、座り放題だと知ってとても嬉しかったんです。今回の展示で、ベンチの一部が旧ブリヂストン本社ビルの1Fに置いてあったとか由来も知ることができて嬉しかったです。

第5セクション「抽象表現主義の女性画家たちを中心に」展示風景 撮影:木奥惠三 提供:アーティゾン美術館
写真右から2番目の作品がマーク・ロスコの《無題》1969年

第5章「抽象表現主義の女性画家たちを中心に」も印象に残りました。抽象表現主義って、本で見ると文字通り抽象的でよくわからなかったりすることもあるのですが、実際に作品を見てみると、抽象的なモチーフなのに具象的なイメージが湧き出てきたり、感情が揺さぶられたりする作品も多いですね。特によかったのは、マーク・ロスコ。DIC川村記念美術館で、ロスコの真っ赤な大作を見てから、すっかりファンになってしまったんですが、アーティゾンのロスコはピンク色で穏やかなイメージ。ピンク単色というわけではなく、よく見るとピンク色のなかに別の色も入っているのがいい。心が穏やかになる気持ちがします。

抽象表現主義の作品は、キャンバスが大きくて、人がどのように動いて、腕をどのように動かしたかなど、その絵にいた人を感じることができるようにも思いました。Webや画集では気づけないことも、作品を見ると気づくことができるんだなと感じています。

アンリ・マティス《ジャッキー》1947年

そして、最終章の「アンリ・マティスの素描」。これがすごくおもしろかった。20世紀に入る前までの西洋の絵画って、デッサンでも習作でも、準備段階から光と影をしっかり捉えて、緻密に描きこむものが多いです。でも、今回展示されているマティスの素描はすごく自由。影もなくて線だけで、紙の質感も合わせてマティスの世界を作りあげている。線が描かれていない空白の部分も含めて作品として成立していますよね。とても新しい絵だなと感じました。

ほかにも、瀧口修造の作品や日本の具体など、気になる作品が多かったです。大好きなアーティストのことは深く新しい発見がありましたし、知らなかったアーティストやジャンルにも興味を持つことができました。これからの展覧会も楽しみです。

開催情報

『STEPS AHEAD: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示』
2月13日(土)~9月5日(日)、アーティゾン美術館にて開催中
https://www.artizon.museum/exhibition_sp/steps_ahead/

印象派や日本近代洋画のみならず、抽象表現を中心とする 20 世紀初頭から現代までの美術、日本の近世美術など、ますます広がりをみせている石橋財団のコレクションから、未公開の新収蔵作品92点を中心に201点、さらに芸術家の肖像写真コレクションから87点を展示。さらなる前進を続けるアーティゾン美術館の今を紹介する。

*5月15日以降は一部セクションで展示替えがあります。詳細は公式ウェブサイトをご確認ください。

『テート美術館所蔵 コンスタブル展』

ジョン・コンスタブル《フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)》1816 -17年、油彩/カンヴァス、101.6×127.0cm、テート美術館蔵 ©Tate

続いての展覧会は、三菱一号館美術館で開催されている『テート美術館所蔵 コンスタブル展』です。

『コンスタブル展』で驚いたのは、自分の生まれ育ったところや、思い出深い土地の風景を絵にしていたこと。当時はまだ歴史画や宗教画が主流だったころで、そんな時期にも自分の心のなかを基準に絵の題材を選ぶというのが、とても近代的な発想で面白いと感じました。さらに、年を追うごとに彼の造形が進化していくのがわかって、見ていてとても楽しくなる展覧会でした。

若い頃のコンスタブルって、非常に細緻に描いているんですよ。絵の具の塗り重ねも細かいし、モチーフも具体的に捉えていて、風景画の完成度が非常に高い。けれども、時代が下るにつれて、彼の作品のなかに徐々にすき間ができているんです。木と木の間があまり塗られなくなっていったり、土の部分が絵の具を置いただけになっていったり、細緻な描写から外れていく。その点もまた、近代絵画をずっと見てきた自分にはぐっとくるポイントでした。

雲の描写に夢中

ジョン・コンスタブル《雲の習作》1822年、油彩/厚紙に貼った紙、47.6×57.5cm、テート美術館蔵 ©Tate

そしてなんといっても雲の描写! 美しすぎて現実とはちょっと違う、理想も交えた雲を彼は描いたと思うんですが、とても美しい。フランス的な空の色や描き方とはどこか違うんですよね。天気の変わりやすいイギリスだから雲の美しさが尊いのかな?って思ったりもしました。また、彼が試してみたい表現を雲を使って試している印象も受けました。見ていて飽きない絵なんです。

コンスタブルのライバルでもあった、ウィリアム・ターナーも、印象派のさきがけって言われていたりしますが、コンスタブルの表現も当時としては斬新なところが多いんですよね。彼らが活躍していた時代の絵画は、フランスのものばかり見ていたんですが、イギリスがこんなことになっていたなんて。もうすこしきちんと見ていきたいと思いました。

ライバルの対決 コンスタブル VS ターナー

J.M.W.ターナー《ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ 64 号》1832 年、油彩/カンヴァス、91.4×122.0cm、東京富士美術館蔵©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

そして、この展覧会の見どころ、ターナーの《ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ 64 号》と、コンスタブルの《ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)》とが並んだ展示もよかったです。

ジョン・コンスタブル《ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)》1832年発表、油彩/カンヴァス、130.8×218.0cm、テート美術館蔵 ©Tate

この2作品は、1832年に開催されたロイヤル・アカデミー展で並べて展示されたそうです。色鮮やかなコンスタブルの大作と自作が並べられることを知ったターナーが、作品を搬入した後に作品の右下方に鮮やかな赤色の塊を描き加えたという逸話が残っているほど。今回、この2作品が揃うのは、1832年を除くと3回目で、ロンドン以外では初めての展示になるそうです。2人の間にそんなドラマティックなお話があったなんて、今回初めて知りました。

そして、そこまでターナーを脅かしたいうコンスタブルの作品を見てみると、やっぱり画面の大部分が雲で覆われているんですよ。こんなふうに風景を描く人っていないように思います。だいたいの画家は、水平線があったら、空を描いて、雲を描くと思います。でも、コンスタブルの場合は、最初に雲なんです。そういった画家の関心が絵から見えるのがおもしろいなあと思います。そして、この作品については雲と同じように、建物や人が描きこまれているのも素敵だと思いました。

とはいうものの、コンスタブルって、このような展覧会の形で、時系列を追って画風の変遷を見ていったりしないと、きちんと理解できないかなとも感じます。雲のすごさとか、細緻な描き込みはたった1枚の作品だけを見ていたら、そんなものなのかな? と流してしまいそうな気がします。一定の量を見るからこそわかってくるものもあるんですね。

その点、ターナーの作品は、1枚の絵でもそれなりに叙情的でインパクトがあるので印象に残りそう。この2人の年が1歳しか離れていなくて、互いに当時のイギリスのアートシーンを引っ張っていったというのがとても興味深いです。ターナーの絵は数多くは見てはいないので、今後はターナーも見ていきたいなと思いました。

近代美術の直前に活躍したコンスタブル、そしてターナーらイギリスの芸術家たちの活躍を知ることができて、とてもよい展覧会だと思いました。

開催情報

『テート美術館所蔵 コンスタブル展』
2月20日(土)~5月30日(日)、三菱一号館美術館にて開催
https://mimt.jp/constable/

19世紀イギリスにおいて、同時代に活躍したJ. M. W. ターナーとともに自国の風景画を刷新し、その評価を引き上げた画家、ジョン・コンスタブル。世界有数の良質なコンスタブルの作品群を収蔵するテート美術館から、ロイヤル・アカデミー展で発表された大型の風景画や再評価の進む肖像画などの油彩画、水彩画、素描およそ40点にくわえて、同時代の画家の作品約20点が来日。国内所蔵の秀作を含む全85点を紹介する。

構成・文:浦島茂世 撮影:源賀津己

プロフィール

和田 彩花

1994年生まれ。群馬県出身。2004年「ハロプロエッグオーディション2004」に合格し、ハロプロエッグのメンバーに。2010年、スマイレージのメンバーとしてメジャーデビュー。同年に「第52回輝く!日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2015年よりグループ名をアンジュルムと改め、新たにスタートし、テレビ、ライブ、舞台などで幅広く活動。ハロー!プロジェクト全体のリーダーも務めた後、2019年6月18日をもってアンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業。アートへの関心が高く、さまざまなメディアでアートに関する情報を発信している。

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