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YOASOBI、Official髭男dism、DISH//……2020年、コロナ下で生まれた新しいヒットの形

リアルサウンド

20/12/31(木) 16:00

 音楽ストリーミングサービス「AWA」が、今年の全ユーザーの利用動向をまとめたランキングを公開した。

 公開されたのは「2020年でよく聴かれた曲」、「2020年でよく聴かれたアーティスト」、「2020年新着アーティスト」、「2020年よく歌詞が表示された曲」、「2020年よくコメントされたアーティスト」の5種。これらのランキングから今年の国内音楽シーンを振り返ってみたい。

”ヒゲダン旋風”が吹き荒れた

 ランキングによると、2020年に最も再生された楽曲はOfficial髭男dismの「Pretender」だったという。同バンドは他にも「I LOVE…」、「宿命」、「イエスタデイ」、「ノーダウト」、「115万キロのフィルム」をトップ10に送り込んでおり、2019年の「Pretender」のスマッシュヒットに引き続き、今年も”ヒゲダン旋風”が吹き荒れていたことが確認できる。これはストリーミングサービスならではの現象だ。ストリーミングチャートはCDランキングに比べて長期間ランキングを維持したり、ヒット中のアーティストの別の作品がランキングを席巻したりする傾向にある。なぜならプレイリスト機能によって何度も聴かれたり、簡単にそのアーティストの過去作品に触れることができるからだ。また、チャートインすることで人々の目に止まり、さらに新しいリスナーを増やしていくという好循環も生まれていると考えられる。CDランキングでの成績が従来ほど存在感を示せなくなった今、今後はストリーミングでロングヒットすることがアーティストに求められるミッションとなるだろう。

待ち望まれた”解禁”

 一方で、今年ストリーミング配信を開始したアーティストで最も聴かれた「2020年新着アーティスト」のトップ3は、1位から順に米津玄師、aiko、サザンオールスターズと並んだ。いずれもビッグネームで多くの人々に待ち望まれた解禁だったことがうかがえる。ただし、米津やaikoは別として、サザンのようにアナログレコードが主流だった時代にデビューしたアーティストであってもこれほど多くストリーミングで聴かれているのは見過ごせない結果だ。当然ニーズはあったのである。逆に言えば、解禁前までは”機会損失”だったと考えるべきだ。アナログ世代からすればネット上のプラットフォームは若い世代にもアピールできる恰好の場であり、竹内まりやや今年なら松原みきなどの例にもあるように、海外からの偶発的な再評価を生む土壌にも成り得る。ジャニーズについても同様だ。ジャニーズ事務所所属タレントによるチャリティーユニット・Twenty☆Twentyは、たった1枚のシングルで、もさを。やりりあ。といった若い世代から絶大な人気を誇る歌い手たちと肩を並べる再生数を叩き出している。嵐が「2020年でよく聴かれたアーティスト」で5位としっかりと結果を残していることからも、他の多くのジャニーズ所属アーティストが、すぐそこにあるチャンスや可能性を逃してしまっているような気がしてならない。

急増した新しい形のヒット

 さて、今年の国内音楽シーンで最も象徴的だった作品がYOASOBIの「夜に駆ける」である。この曲は「2020年でよく聴かれた曲」でKing Gnuの「白日」を抑えて3位、「2020年よく歌詞が表示された曲」で見事1位を記録。よく聴かれ、よく読まれている。ほぼ無名の状態から一気にブレイクし、ついには『NHK紅白歌合戦』出場まで果たした。まさに「Pretender」級のヒットと言えそうだが、音楽シーン的にはそれ以上の意味があったと言えるだろう。

 この曲は、最初にTikTokで火がついたと言われている。その後ストリーミングサービスへと波及し、各チャートを駆け上がっていった。MVの再生数もすでに1億回を突破。CD未発売ながらも世間に絶大なインパクトを与えている。「香水」でブレイクした瑛人や、前に挙げたもさを。やりりあ。も同様だ。こうした新しい形のヒットがタイアップ型ヒットと同等の結果を残しているのである。

 もう一つ気になるのが、「2020年よく歌詞が表示された曲」で4位をマークしたDISH//の「猫」である。この曲は一発撮りのパフォーマンスを配信するYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で注目を浴びた作品だ。この映像の再生回数は現在8,000万回を突破。今ではYouTube上に「歌ってみた」動画が多数投稿されている。

 従来、こうしたヒットのきっかけとなる役割は大手メディアが担っていた。今はその役割をネット上のプラットフォームが担いつつある。TikTokのショートムービーを何度もリピート再生することでなかば中毒的に頭に焼き付く体験は、まるで連続ドラマやアニメのテーマソングを繰り返し聴いているかのようだ。YouTubeで繰り広げられる緊張感漂うパフォーマンスは、かつて流行の発信源だったテレビの音楽番組を観ているかのようである。

コロナ禍が音楽シーンにもたらしたもの

 こうしたいわゆる“バズ”によってヒットした作品が、チャート上位にひしめいたのが今年の特徴と言えるだろう。もちろんその予兆は以前からあった。しかし、コロナ禍でデジタルへの移行が進んだことで、こうした新しい形のヒットが急増したのだと思われる。この流れは来年以降も加速しそうだ。

 ウイルスの脅威に悩まされた2020年。ライブやリリースの延期が相次いだ。しかし、コロナ禍が音楽シーンにもたらしたものは決して悲観的なことばかりではなかった。いちリスナーとしても多くの作品に触れられる良い機会になっている。今起きている変化に目を向け、柔軟に対応できた者が2021年に存在感を示せるだろう。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)

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