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“人間よりも人間らしい”守護者を描く。恒松あゆみと川田紳司が語るマーベル最新作『エターナルズ』

ぴあ

恒松あゆみ、川田紳司

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マーベル・スタジオ映画の最新作『エターナルズ』の公開がスタートした。本作は、7000年に渡って地球と人類を見守ってきた10人の守護者エターナルズが人類滅亡の危機に立ち向かう姿を描いた超大作だが、アクションだけでなく登場人物たちのドラマや、深淵なテーマが盛り込まれており、日本語版キャストを務めた恒松あゆみと川田紳司は、収録では“繊細さ”と“集中力”を重視したと振り返る。壮大なスケールのドラマと繊細な演技は本作でどのように融合するのか? ふたりに話を聞いた。

アイアンマンやスパイダーマンなどマーベル作品には様々なヒーローが登場し、これまでに数々の死闘を繰り広げてきたが、実はそれよりもずっと前から地球を見守り、人類のために戦ってきた戦士たちがいた。それがエターナルズだ。彼らは人類を脅かす脅威を排除した後、人間たちと一緒に暮らしてきた。しかし、地球に脅威が迫り、各地に散らばっていたエターナルズたちは再び集結する。

どんな物質も自在にその性質を変えてしまうことのできる能力を持つセルシ、空を飛び強烈な光線で相手に攻撃するイカリスなど本作には様々な能力をもつキャラクターたちが登場するが、チームのリーダー的な存在であるセルシを演じた恒松は「セルシはヒーローっぽくないですし、能力も決して派手なものではない」と分析する。

「でも彼女は人間や地球のことをすごく愛しているんです。物語を見ていくと、セルシは地球に残ってそこで生きていく中で本当に人間や地球のことを好きになったんだとわかります。ちゃんと環境に溶け込んで、その環境を愛しているところがとても素晴らしい。演じていてもそう思いましたし、完成した作品を観て改めて思うようになりましたね」

恒松が語る通り、セルシは地球や人間をただ守るだけでなく、社会に溶け込み、現在は博物館で勤務しているヒーローらしくないキャラクターだ。一方、川田が演じるイカリスは川田曰く「絶対的なヒーロー像」だという。

「圧倒的に強くて、見た目もイケメンでスマート。ある意味で非の打ち所がない、他のヒーローたちが憧れるような純然たるヒーローのポジションにイカリスはいるんだと思います。ただ、彼は彼なりに悩みを抱えているので、完全無欠なわけではない。そこが面白い部分ですよね」

いかにオリジナルの演技とズレがないのかを考えてつくっていった

『エターナルズ』

エターナルズのメンバーたちは7000年も人類を見守り続けていて、強大な能力を持っているが、ふたりが語る通り、その内面は愛情や迷いに満ちている。だからこそ日本語版の収録では時間をかけて細部まで丁寧に収録が行われたようだ。

「収録の際には音響監督の方と何度も話し合いをさせていただきました。(セルシ役の)ジェンマ(・チャン)さんのお芝居は非常に自然なので、そこにあるものをしっかりと拾って、私の声をそこに乗せていく形で収録したいと思いました。ですから過剰に抑揚をつけたり、オーバーに演技するのではなく、ジェンマさんのセルシの演技の中にある感情を引っ張り上げてきて、そこに私の声を馴染ませていく、という言い方が正しいのかもしれません。本当に繊細な作業でした。ちょっとした表情の変化や眼の変化を拾っていきながら、どのようにして自分の声で役としてしゃべることができるのか……それは“大変”というのとは少し違って、セルシとして生きることはすごく楽しさがありながら、ものすごく頭を使ったというか(笑)、すべての感覚をフルオープンにして取り組んだな、と思います」(恒松)

「リチャード・マッデンさんも過剰に演技をするタイプの俳優さんではないんです。抑えた演技の中から滲み出る部分がカッコいい方で、本作では特に抑えた演技で表現をされています。だから日本語版ではキャスト全員が、小手先で色をつけるのではなく、何度もシーンを観直して、セリフを聴いて、音響監督と何度も話し合って、いかに違和感のない表現をするのか、オリジナルの演技とズレがないのかを考えてつくっていったんだと思います。だから完成したものを試写で観たときにキャストの声が役者さんの表情や演技にちゃんとシンクロしていると感じました。

僕もキャラクターの気持ちや心理的な部分をシンクロさせながら演じていくわけですけど、声で表現する上では、その感情をあえて“封じる”ことも重要でした。決して棒読みになるわけではないんですけど、内に秘めた想いをあえて表現しない。高性能なマイクで収録していただいて、そこにある息づかいであったり、漏れ出てくる感情を拾っていただける状況でしたので、あえて“表現しない”ことへの集中力と言いますか……キャラクターとのシンクロはしっかりと保ちながら、声の中には秘めたものがある状態。それが画と合わさった時に表現が成立するんだと思うんです。だから今回は本当に集中力を使いましたね」(川田)

劇中でエターナルズのメンバーは様々な状況に放り込まれ、その運命に翻弄され、迷い、傷つき、言葉にならない感情を味わうことになる。マーベル・スタジオ映画作品らしく豪快なアクションや観客をアッと驚かせる意外な展開、爆笑必至のシーンもふんだんに盛り込まれているが、本作は過去10余年に渡って描かれてきたどのマーベル・スタジオ映画とも似ていない。これまでの作品にはなかった深み、複雑な感情、観終わったあとも心に残り続けるものがある。

「最初に収録用の台本を読んだ時に、物語のスケールがあまりにも壮大でビックリしたんですけど、読んでいくと、宇宙規模の話をしているのに、エターナールズもご飯食べるんだ!ってことに目がいってしまったんですよ(笑)。それだけではなくて、彼らはメンバーのことをすごく大事に思っていて、愛し合うこともする。なんて愛おしい存在なんだろう!って思ったんですよね。ある意味で人間よりも人間らしい。そんな彼らが自分の想いや正義を持って生きている姿を見て、映画の後半は涙が止まらなくなりました。だから物語の規模の大きさと、エターナルズたちの愛おしさと……そのすべてをひとことで表現する言葉をいまだに見つけられていない状態です。だから早くまた映画館に観に行きたいですね。『エターナルズ』は繰り返し観たくなっちゃう魅力があるんです」(恒松)

「恒松さんのおっしゃる通りですよね。これまでのマーベル・スタジオ映画は巨大な敵を倒して、ヒーローってカッコいいよねって部分が主軸にあったと思うんですけど、今回の作品は観終わった後にも感情が残り、自分の考えを整理するのに時間がかかるようなドラマも描かれている。その上、7000年にも渡って生きているエターナルズは恒松さんも言ってますけど、人間よりも人間的な行動をしている。そんな人間よりも人間的な彼らが7000年に渡って見続けてきた人類の生き様と言いますか、歴史を俯瞰して描いている部分もあるんです」(川田)

本作は、7000年に渡って展開される規模の大きなドラマ、人間以上に人間らしいキャラクター描写など様々な要素が層を成しており、細部まで丁寧に描き込まれている。字幕に意識をとられずに画面の動きに集中できる日本語版を鑑賞することで、本作をより深く楽しむことができるはずだ。

『エターナルズ』
公開中
(C)Marvel Studios 2021

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