最近の将棋ブームの中で興味深いのは、藤井聡太棋聖について語る他の棋士たちや関係者の言葉だ。あまりにも圧倒的な存在を前にした時に人が口にする言葉は、それ自体が物語なのだろう。同じことがこのドキュメンタリー映画からも伝わってくる。若き日のハンサムで初々しい姿から、絶頂を極めた「三大テノール」でのステージや空前のアリーナコンサートの数々。そのすべてのシーンから届けられる歌声のなんと豊穣で美しいことだろう。同時代を生きたスーパースターであっただけに、ひとつひとつのシーンが当時の自分の姿と重ね合わせて考えられることも懐かしい。“この歌声を生で聴けた”“ステージに接することができた”ということを改めて自慢に感じられる作品だ。