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THA BLUE HERBは“やっと完成した”ーーラッパーとしての矜持から日本についてまで多角的に語る

リアルサウンド

19/7/4(木) 13:00

 THA BLUE HERBが7年ぶり、5枚目のフルアルバム『THA BLUE HERB』をリリースする。

 結成20周年を経て辿り着いた本作は、2枚組全30曲、150分超という内容。フィーチャリングなし、完全自主制作の体制で作り上げた濃密な作品となっている。

 ILL-BOSSTINOとO.N.Oの二人へのインタビューでは、新作をいくつかのテーマやモチーフにわけて解題することを試みた。サウンドメイキングについて、ラッパーとしての矜持について、シーンの移り変わりとヒップホップについて、日本という国について、バンドマンについて、市井に暮らす人々についてーー。

 彼らが唯一無二な存在であることがこれまでよりさらに伝わるインタビューになったのではないかと思う。(柴 那典)

俺らがワンアンドオンリーって呼ばれてるのは結果論(ILL-BOSSTINO)

——ニューアルバムの制作はどういうきっかけから始まったんでしょうか?

ILL-BOSSTINO(以下、BOSS):2017年に20周年を迎えて、それまでの自分達の20年間にケリをつけて、その年の忘年会だったと思うんですけど、「じゃあ次、何する?」って話になって。次はアルバムだというのはわかっていたんですけど、「今までやっていないことは何だ」という話になったんです。そこで、今のタイミングだったらできるんじゃないかということで、じゃあ次は2枚組を作ろう、と。そこがスタート地点ですね。

——そうなんですね。曲が沢山あったから2枚組になったということではなく。

BOSS:違います。最初に2枚組を作ろうというところからのスタートでした。(自分たちの目標として)燃えるものがほしかったんじゃないかな。いいアルバムを作るのなんて当たり前だし、20年間自分たちなりのベストを尽くしてきて、47歳になってもう一回上がるんだったら、それなりのものを作らないとだめだという想いもあって。俺ら自身も夢中になりたいし、新しくて高いハードルを飛びたいと思ったんですよね。

——O.N.Oさんは、アルバムを作り始める時にはどんなイメージを持っていましたか。

O.N.O:やることは一緒だからね。20周年の野音(2017年10月29日『THA BLUE HERB 結成20周年ライブ』)が終わったぐらいから、本格的に作り始めた。ソロではテクノも作ったりしてるけど、ヒップホップはTHA BLUE HERBでしか作らないから。作るのは楽しいけど前を超えなきゃならない。毎回一緒ですよ。

——もうひとつO.N.Oさんにお伺いしたいんですが、ヒップホップのサウンドというのは、テクノロジーの進歩やトレンドの移り変わりもあって、日本でも海外でもいろんな風に変化していますよね。でも、THA BLUE HERBのサウンドにはO.N.O.さんのシグネチャーがあって、その上で少しずつ積み重なって進化しているような印象があるんです。このあたりはどうでしょうか?

O.N.O:THA BLUE HERBに曲を作るのではなくて、THA BLUE HERBを作ろうって思っているわけだから、トレンドで音がいろいろ変わってはいるのかもしれないけど、俺の作る音はやっぱりこうなるということだね。あとは、リリックのことを想定して作ってるからね。機材を扱ってビートを作るのは俺だけども、実際、二人のやり取りで曲を作っていくという作業だから。

——音と言葉が一体になったトラックメイキングになっている。

O.N.O:そう。曲を作るっていうのはTHA BLUE HERB二人の作業になるからね。

——同じことをBOSSさんにも聞ければと思います。いろんなヒップホップのトレンドの移り変わりがあるなかで、THA BLUE HERBはワンアンドオンリーであり続けている。そのことについてはどんな風に考えてますか?

BOSS:俺らがワンアンドオンリーって呼ばれてるのは結果論だね。あんまり考えてはいないよ。シンプルに格好いい曲を作ろうということだけ。もちろんリリックの内容は時代や年齢によって変わっていくけれど、それ以外の変化はないからね。今はいいラッパーが沢山いるし、格好いいなって刺激をもらったりするけど、それほどの影響は受けてはないね。聴く人たちは他の人と比較してTHA BLUE HERBは独自だっていう風に見えているのかもしれないけど、俺らは誰とも比較してやってないからね。

——逆に言うと、そうやってTHA BLUE HERBとしての確固たる個性を確立している一方で、今の話のように、若い世代のラッパーや今のシーンにも目を配っているわけですよね。そこはどういう感覚なんでしょうか?

BOSS:俺は普通にヒップホップのファンだからね。単に好きだから。若くてすごい人たちは沢山いるし、そういう人たちに負けたくないって今でも思ってる。同じラッパー同士として「こういうやり方もあるのか」とか「こういうトピックでこういうスタイルなのか」って思うこともあるし。どんどん新しいラッパーが出てくるから、やっぱり負けたくないし、俺が認めている人には俺のことも認めてほしい。そういうのはラッパーとしてのモチベーションになってるね。ただTHA BLUE HERBのグループとして言えば、ずっと二人でやってるから、いい曲を作ろうということだけ。

自分たちがやってきたこと以上に説得力を持つことはない(ILL-BOSSTINO)

——では、ラッパーのBOSSさんとしては、ここ数年のヒップホップ、アメリカを中心にしたグローバルなシーンと日本のシーン、それぞれどういう風に見ていますか?

BOSS:アメリカのことはほとんど知らないし、「今はこの人が有名なんだ」っていうくらいのことしか分からない。もともと英語のラップの歌詞の内容が、わかんないのにわかったふりすることに冷めちゃったというのが10年以上前にあって。対訳で何言ってるかを知ってそこで追った人もたくさんいたけれど、同じ日本語でダイレクトに伝わるラッパーがいろんな街にたくさんいるから、そっちのほうが全然面白いです。

——では、日本のシーンで面白いと思ったのは?

BOSS:俺らが90年代にやろうとしていたことが、今は当たり前になっているんですよ。みんな地元に住んで、自分の仲間たちと一緒に発信してる。沖縄だってどこだって、いろんな街で実際にやっているんですよ。そこはとてもポジティブだし面白いと思ってる。インターネットのおかげで、札幌にいながらにして各地の音楽を体験することができる。それはすごく楽しいことですね。あと、MCバトルの流行はここ2~3年で起きたことだけど、「それ(MCバトル)もヒップホップだけど、それだけがヒップホップという考え方は俺は違うと思うよ」という意見だね。好きも嫌いもイエスもノーもあるけど、インスピレーションは常に受けてるよ。

——ここからはアルバムの中身について聞かせてください。まず2枚組で30曲の全体像はどうやって作っていったんでしょう?

BOSS:最初はとにかく格好いい曲を作ろうってことだけだったね。俺はひたすらリリックを書いて、O.N.Oもひたすらビートを作って、それが半年以上ずっと続いてた。それを合わせて曲を作っていって、15~16曲揃った時に、やっと全体像が見えてきた。やっぱりディスク1の1曲目からディスク2の最後の曲まで通して聴いてもらいたいから、そのためにはどうしたらいいかを考えるようになった。イントロ、インタールード、曲順のつながりも含め、どうやって最後まで聴いてもらうかという。それを考え出した辺りからやっとアルバムという意識になったね。

THA BLUE HERB “ASTRAL WEEKS / THE BEST IS YET TO COME”【OFFICIAL MV】

——アルバムの曲は、いくつかのテーマに分けられると思うんです。それを一つ一つ挙げていきたいのですが、まず「EASTER」のように、活動第5期(PHASE 5)というタイミング(THA BLUE HERBは4月1日に活動第5期の開幕を宣言)での意思表明の曲がありますが、これは最初の方にできた感じだったりしますか?

BOSS:そうだね。まずは「これからやってくぜ」的な曲が最初に出来てきたし、「EASTER」は一番最初に作った曲かもしれない。アルバム制作の最初に勢いをつける意味でも「これからやってくぜ」って言う曲を作るのは毎回とても重要で。そこで加速出来るようにしたいからね。

――もう一つは、「介錯」や「A TRIBE CALLED RAPPER」や「LIKE THE DEAD END KIDS」のように、ラッパーとしてのスタイルやラッパーの生き方などいろんな視点でラッパーというものについて書いている曲があると思うんです。こういうテーマも当然出てくるものですよね。

BOSS:当然ですね。世の中のトレンドも変わっていく中で、自分で発言していかないと全部オッケーだと思ってるってことになっちゃうから。「それはどうなんだろう」って思うことは、その都度曲として残していくのが、俺らのスタイルだから。言いたいことは言っていきたいなと思ってるので。ラッパーはどういうものなのかっていう、そこは俺のプライドも含めて常にありますね。

——加えて、「REQUIEM」や「THERE’S NO PLACE LIKE JAPAN TODAY」のように、日本という国が一つのテーマになっている。このあたりに関してはどうでしょうか?

BOSS:アルバム2枚だからここまで作れたなっていうのはあるかもしれない。もし1枚だったら「THERE’S NO PLACE LIKE JAPAN TODAY」と「REQUIEM」と「GETAWAY」の3曲を合わせて1曲分ぐらいの話だったと思うんだよね。あと「THERE’S NO PLACE LIKE JAPAN TODAY」だけだと、いわゆる反権力というか、今の世の中に対して中指立ててる人なんだというだけの印象で終わってしまうんだけど、「REQUIEM」は特攻隊や戦争に行って帰ってきた人の話を書いていて。俺なりの日本に対する考え方があるって言うことも表現したかったし。自分は左でもないし右でもないし、中庸な意思を持っているつもりなんだけど、相反する想いもあるし、複雑じゃないですか国に対する想いって。その複雑な思いを一方的で勝手な解釈で決めつけられたくもないし、とことん表現してみたかったっていうのはあると思いますね。

——この3曲は、単に今の情勢について物申しているというよりも、日本という国の歴史を辿っているわけですよね。その一方で「TRAINING DAYS」のように、自分の歩んできた道のりがテーマになった曲も大きな位置をしめている。そこがアルバムの相乗効果を生んでいると思っているんですが、こういうモチーフについてはどうでしょうか。

BOSS:「現在はあらゆる過去を含んでいる」と言うように、基本的には誰でも全ての過去が自分を形成していますよね。現在地点っていう瞬間的な部分だけが言えることなんて、何一つない。過去の蓄積で今の考えがあるし、全てはそういうものによって形作られている。それは国家にしても、俺というラッパーがなぜ存在してるかということにしても、同じだし。その説得力のためにも、時系列的な事実っていうのは不可欠ですよね。

——たとえば2枚目の終盤にある「LOSER AND STILL CHAMPION」は、まさにそういう曲ですよね。後半のバースはいわばTHA BLUE HERBのディスコグラフィとその時の年齢をそのままラップしているような内容になっているけれど、それがヒップホップで言うところのセルフボースティングになっている。

BOSS:間違いないですね。俺は今47歳ですけど、若いラッパーにも負けたくないって思ってるんです。今はいろんな勝負の仕方がありますよね?さっき言ったフリースタイルバトルだったり、売り上げだったり。何にせよジャッジするのはお客さんなんですけど。ただ、俺が何で勝負するかと言ったら、今の20代のラッパーが持っている「これからなんだってできる」っていう無限に広がっているような未来ではないんですよ。逆に自分が60~70歳だったら、これまでのことがほとんど財産になりますよね。でも今の俺は世代的にちょうどバランスよく真ん中にいる。これまでやってきたこともあるし、これからの時間も、未来もまだ残っている。セルフボースティングとしては、自分たちがやってきたこと以上に説得力を持つことはないですね。しかもそれはすべて事実で、音源としても歴史としても完璧に残っているものなので。今の若いラッパーに「お前ら何もわかってねえ」なんてことを言ってしまったら、一番ナンセンスなんだけど、では、どうやって説得力を出すかというと「俺はこういうことをやってきました、こういうことを残してきました。それで俺はここに立っています、こういう風に思います」というのを示すことが重要だと思います。

俺らは俺らの時間軸で生きてます(ILL-BOSSTINO)


——アルバムでは、「HEARTBREAK TRAIN(PAPA’S BUMP)」や「UP THAT HILL(MAMA’S RUN)」、「COLD CHILLIN’」や「SMALL TOWN, BIG HEART」のように、市井に暮らしている人々の立場に立った曲も重要なパーツになっていると思います。BOSSさん自身だけではなく、どこかにいるサラリーマンや母親、簡単には上手くいかない人生をなんとか歩んでいる人たちを主人公にしている。こういう曲はどう生まれてきていたんでしょうか?

BOSS:ラッパーが歌う最初のテーマって「有名になりたい」とか「俺のスタイルを教えてやる」ってことが多いんですけど、続けていればやはりそれだけではなくなっていく。そこから何を歌うかというと、僕の場合はラブソングではないんですよね。自分がアメリカのヒップホップに最初にやられたのも、いろんな人の生活や日常が描写されることにワクワクしたと言うか、イマジネーションをとても掻き立てられたので。町に住んでいる普通の人たちの平凡とされる生活の中にも、すごくドラマティックなことが沢山ある。そこを表現できるかどうかがラッパーとしてのスキルだと思ってます。昔、ネパールのドラッグディーラーの話も作ったんですけど(2ndアルバム『SELL OUR SOUL』収録の「路上」)、それはその時にネパールまでバックパックで行ってたんで、そのままのリアルを歌っています。今、日本に住んでいる自分のリアルとして、たとえば偶然隣のカウンターに座った人にもあるような生活のドラマを今回は書こうと思いました。

——こういう市井の人々の暮らしだったりのストーリーを描くというのは、ヒップホップから学んだものなのか、それとも別のものから学んだものだったんでしょうか?

BOSS:もっと普遍的だね。他のジャンルでもそういう表現は沢山あるけど、ヒップホップの場合は、それを格好良く書くのが個性。それが俺の中でヒップホップが好きになった理由なんですよ。“格好良い”というのがすごく重要。

——たしかにこういうタイプの曲って、時代が違ったらそれこそボブ・ディランやブルース・スプリングスティーンのようなロックミュージシャンや、ウディ・ガスリーのようなフォークシンガーがやってたかもしれないし、もっとさかのぼったらジョン・スタインベックのような小説家がやっていたかもしれない。

BOSS:そう。だから表現としては定番ですよ。でも、それを曲として歌われた本人が図星だと思った時に、その自分の境遇にへこむのか、それともその曲によって自分を奮い立たせられるのか。そこがすごく重要で、ヒップホップは後者だと思ってます。高揚させるビートとリリックで「負けてねえ」とか「まだいける」みたいに感じさせる。そこが出来るか出来ないかって、すごく大きくて。ただ惨めな気分にさせて終わるんだったら、別に歌う意味もないし、その違いが大きい。

——そこがヒップホップのとしての強みだ、と。

BOSS:不可欠。その視点を失ってしまったら、ダメだと思う。でも、ヒップホップだけじゃなくて、ブルース・スプリングスティーンにもそういうことを感じる。一見すると、上手くいかない生活を歌ってるけど、あれを聴いて「自分は惨めだ」と思う人はいない。「負けてねえ、まだいける」という風に思える。そう思わせられるかが重要だと思う。

——「TWILIGHT」は仲間を失った経験を書いた曲ですけれど、これもただ悲しいだけじゃなく、どこか奮い立たせられるというか、聴いた側が自分の物語として捉えられるような感触があります。

BOSS:これは今回挑戦でもあったんだけど、悲しい曲を悲しいトラックに乗せて歌うと、沈み込む印象しか残らない。悲しい曲、やるせない曲であればあるほど、勇ましいビートをあえて選んでたところはあります。そうすることによって、曲のエネルギーが増してくるっていうか。

——「スーパーヒーロー」ではBOSSさんと交友が深い方々の活動だったりにも触れられてます、彼等との交流からはどういう影響を受けましたか。

BOSS:先程話に挙がった通り、格好良いと思うラッパーは沢山いるけど実際にライブの現場で本気で俺らと最低1時間半の勝負できるラッパーはそんなにいないんです。そういうところで勝負するのは曲で歌ってる人達で、共演させてもらうことでいつも成長させてもらってきたんで。ただ、「スーパーヒーロー」で語られてるのは、そういうライブの現場っていうよりは、彼等のやってることだよね。音楽とはまた全然違うところで、実際に行動して、汗かいて、炊き出しにも行って、つながりを作って、そのつながりを何年間も途切れることなくやってるというところだよね。俺も携わらせてもらってるけど、そこに大義も正義もあるし、愛も平和もあるし、人として勉強になることが多いんです。ただ、彼等自身はその活動を自分達で歌にしない。それを少し外側にいる俺が作らせてもらったって感じですね。

——いろんなバンドマンがいる中で、一つ象徴的な人は「ラストダンス」で競演したBRAHMANのTOSHI-LOWさんだと思うんです。

BOSS:そうだと思います。

——彼についてはどう見ている感じでしょうか?

BOSS:俺も大好きだし認めてるし、俺も認めてほしいと思ってるけど、彼は俺なんかより全然凄いよ。彼等がやっていることっていうのは何もかもスケールが違いすぎる。俺は手伝わせてもらってるくらいの感覚だよ。チャンスもたくさんもらってるし、リスペクトしてるよ。

——曲ごとにいろんなトピック、いろんな視点を聞いてきましたが、最初の質問に戻ると30曲2枚組の器を作ったから、これだけの表現のバリエーションと奥行きが出てきたという感じでしょうか。

BOSS:そうだと思う。でも、最後ら辺は3枚組になりそうな感じもあったんだよ。やろうと思えば、まだまだ作れるぐらい、限界だと思わなかったんだよね。

O.N.O: CDの規格、収録時間の問題でやめた曲もあったしね。

——ライブについてもお話を聞ければと思います。今回の作品はこれだけのボリュームがあって、ライブ感のあるアルバムだと思うので、このあとのライブと紐付いて行くと思うんです。そのあたりはどうでしょうか。

BOSS:今までのキャリアを考えてみると、アルバムを作った時が曲としては生まれたての状態で一番未熟なんですよ。ここから鍛えていくんで、曲自体がどんどん良くなっていくし、いろんな現場に引っ張り出されて、いろんなお客さん、いろんな対バンの前で鳴らしていくからこの30曲に関してもまだ全然これからって感じですね。もっと良くなりますよ。

——前作からの数年間もそういう風に過ごしてきたし、今作からの数年間もそうある、と。考えてみると、THA BLUE HERBのタイムスパンって、シーンやトレンドの移り変わりとは全く違う時間軸ですよね。

BOSS:そうですね。俺らは俺らの時間軸で生きてます。

——ただ、先ほどもTHA BLUE HERBが90年代にやろうとしていたことが今は当たり前になっているという話もありましたよね。誰かの言いなりになるんじゃなく、アーティストが自分でハンドルを握って音楽を作り続けることができるようになっている。そういう意味では、ここから先の10年、20年もTHA BLUE HERBが切り拓いていく道はあると思うんです。というのは、ラッパーがどうやって老いていくのかということについての、ポジティブな前例になるかもしれないと思うんです。

BOSS:そこは誰もやってないし、今までもずっと誰もやってなかった。最先端です。

——バンドマンにとっては、The Rolling Stonesが一つのロールモデルになっていると思うんです。日本でも忌野清志郎さんや桑田佳祐さんがいる。でも、ラッパーではほとんどいない。

BOSS:だから、最先端なんですよ。50歳手前で2枚組っていうのもそうだし。だから、今フリースタイルやってるような若いラッパーだって、50歳手前まで来たらその時に見せてほしいと思うしね。けど、俺らの曲で歌われてるように、結婚もあれば出産もあるし、夫婦関係もあるし仲間も死ぬ。世の中、音楽だけでは生活もなかなか簡単にはできないし、満員電車にも乗らなきゃいけないし。そういう世界の中でラッパーはラッパーとしてどうやって生きていくのか?ずっと勝った負けたで生きていけるのか?それでずっとヒップホップに夢中でいられるのか?って思います。そういう意味でも本当に俺らが最先端の1つですね。

——そうですね。たとえば、一方にDr. DreやJay-Zがいて、あれはあれでラッパーの最先端ですよね。ラッパーがどれだけお金を稼げるか、影響力を持って業界を支配できるのかという、ラップゲームのバトルの勝ち続けた先を進んでいく最先端がある。

BOSS:間違いなく最先端ですね。

——で、一方にTHA BLUE HERBの進む最先端の道もあると。

BOSS:そうですね。俺ら極東のアンダーグラウンドなんで、俺らにはこれが一番調子いいですよ。

——そう考えると、先が楽しみです。

BOSS:本当にキャリアの中盤のスタートにいる気持ちです。これからそれがやっと始まるので。やっと完成したって感じですよ、THA BLUE HERBが。それでアルバムにもセルフタイトルを付けたし。これでみんなにまた挨拶しにいって、この先もがっつりまくっていく感じですね。

(取材・文=柴 那典/写真=林直幸)

■リリース情報
『THA BLUE HERB』
LABEL : THA BLUE HERB RECORDINGS
発売:7月3日(水)

<生産限定盤(インスト・ディスク付属4CD仕様)>
フォーマット : 4CD(インスト・ディスク付属、特製三方背ケース付属デジパック仕様、歌詞カード付属)
価格:¥6,000(税抜)

<通常盤>
フォーマット : 2CD(初回限定デジパック仕様、歌詞カード付属)
価格:¥4,500(税抜)

<収録曲>
[DISC 1]
1. RETURNING
2. EASTER
3. WE WANT IT TO BE REAL
4. 介錯
5. AGED BEEF
6. A TRIBE CALLED RAPPER
7. 凶兆序曲
8. THERE’S NO PLACE LIKE JAPAN TODAY
9. REQUIEM
10. GETAWAY
11. SUVARNABHUMI TRANSIT
12. HIGHER ON THE STONE
13. TWILIGHT
14. KEEP ON AND YOU DON’T STOP
15. THE BEST IS YET TO COME

[DISC 2]
1. DETERMINATION
2. TRAINING DAYS
3. 阿吽
4. HEARTBREAK TRAIN (PAPA’S BUMP)
5. UP THAT HILL (MAMA’S RUN)
6. COLD CHILLIN’
7. 一切空
8. LOYALTY
9. LIKE THE DEAD END KIDS
10. スーパーヒーロー
11. SMALL TOWN, BIG HEART
12. LOSER AND STILL CHAMPION
13. 今日無事
14. MAKE IT LAST FOR…
15. LANDING

<初回店頭特典>
活動休止前最後のライブ@石巻BLUE RESISTANCE(2017年12月30日)のライブ映像を完全収録したDVD
※注意:特典付与店舗に関しましては各位店頭で事前に要確認。無くなり次第終了。

■ツアー情報
5th ALBUM『THA BLUE HERB」RELEASE TOUR』
8月17日(土)RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO
8月23日(金)町田 CLASSIX(042-794-7194)
8月24日(土)中野 heavysick ZERO(03-5380-1413)
8月26日(月)名古屋 CLUB QUATTRO(052-264-8211)
8月27日(火)京都 MUSE(075-223-0389)
8月29日(木)広島 CLUB QUATTRO(082-542-2280)
8月31日(土)福岡 DRUM Be-1(092-737-5300)
9月01日(日)那覇 Output(098-943-7031)
9月03日(火)大阪 CLUB QUATTRO(06-6311-8111)
9月04日(水)金沢 AZ(076-264-2008)
9月06日(金)新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE(025-201-9981)
9月07日(土)熊谷 HEAVEN’S ROCK (VJ-1)(048-524-4100)
9月10日(火)東京 LIQUIDROOM(03-5464-0800)
9月13日(金)郡山 PEAK ACTION(024-983-4398)
9月14日(土)水戸 CLUB MURZ(029-224-7742)
9月15日(日)BAYCAMP 2019(詳細
9月18日(水)仙台 enn 2nd(022-212-2678)
9月20日(金)山形 Sandinista(090-7320-0592)
9月22日(日)宇都宮 HEAVEN’S ROCK 2/3 (VJ-4)(028-639-0111)
9月23日(月)つくば OctBaSS(080-3443-9072)
9月28日(土)夏の魔物 2019(詳細
9月29日(日)江ノ島 OPPA-LA(0466-54-5625)
10月2日(水)札幌 KRAPS HALL(011-518-5522)
10月4日(金)北見 UNDERSTAND(詳細

THA BLUE HERB公式サイト

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