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m-floら参加の『ヒプアニ』音楽集レビュー:アニメストーリーと合わせて楽しむ、新たな『ヒプマイ』の世界

リアルサウンド

21/1/29(金) 6:00

 2020年の秋クール、大きく話題となったアニメ『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima(以下『ヒプアニ』)。その待望の音楽集『Straight Outta Rhyme Anima』が1月13日に発売となった。

 このアニメは、原作の設定や話の流れはそのままに、全編通してオリジナルキャラやエピソードをふんだんに取り入れ、独自の表現で『ヒプマイ』世界を描いた。それは音楽面においても顕著だ。OPやEDだけにとどまらず、劇中歌においても既存曲は2曲、効果的に使われたのみ。全ての回で新曲が投入され、視聴者に毎週新鮮な驚きを与えた。

 今回のアルバムはその劇中歌を全て収録。“音楽アニメとしての『ヒプアニ』“を、あらためて味わうことができる一枚となっている。

ヒプノシスマイク アニメ音楽集「Straight Outta Rhyme Anima」収録劇中RAPダイジェストトレーラー

 アニメ1話は、イケブクロ、ヨコハマ、シブヤ、シンジュクの4ディビジョンが順に登場したプロローグらしい回だった。そこで披露されたのが、2曲目「Rhyme Anima‘s Mixtape」。劇中では各ディビジョンの日常でのバトルを描いていたが、そこで使われた各楽曲が1つの曲になっている。続けて聴くことで、4組の個性がまったく異なることがわかる内容だ。

 2話以降の前半は、1話につき1ディビジョンという形で、各ディビジョンの関係性や個性を深く掘り下げ、それに準じた楽曲が発表された。

 題名どおり疾走感あふれるBuster Bros!!!「RUN THIS CITY」は、過去作同様に山田一郎役の声優・木村昴が好良瓶太郎名義で歌詞提供しており、その進化はとどまるところを知らない。麻天狼による「WELCOME U」は、彼らの独特な存在感が滲み出た迫力のある一曲。この一曲で、三者三様な“シンジュクの色”が突き付けられる。

Buster Bros!!!『RUN THIS CITY』(fromヒプアニ第2話)
麻天狼『WELCOME U』(fromヒプアニ第3話)

 MAD TRIGGER CREW「RED ZONE(Don‘t test da Master)」は、ヨコハマの強さや攻撃性を打ち出したリリックとソリッドなトラックの絶妙なバランスで魅せる。「SHIBUYA GHOST NIGHT」は、これまでのFling Posseにない曲調且つ、ストーリーに沿った楽曲でありながらも、彼らのポップな個性が存分に発揮された一曲だ。

MAD TRIGGER CREW『RED ZONE(Don’t test da Master)』(fromヒプアニ第4話)
ling Posse『SHIBUYA GHOST NIGHT』(fromヒプアニ第5話)

 Division Rap Battleの予選が始まると、キャラクターたちは様々なトラブルや事件に巻き込まれてゆくが、物語の進行とともに“彼らなりの戦い方”が示されてゆく。続く4曲(「Seconds Killer」「Fallin’」「Bayside-Suicide」「JACKPOT!」)はラップバトル本戦へ向かって加速するように、そのオリジナリティが表現されていて味わい深い。

 これらの曲は劇中のバトルという側面を抜きに、各ディビジョンの楽曲として成立しており、ライブでのパフォーマンスにも期待が寄せられているのではないだろうか。

 アニメ放送中は、“『ヒプノシスマイク』が見せる幻覚”を斬新な演出でビジュアル化したことも大きな話題となった。原作CDでは音声ありきでそれぞれの想像力に委ねられていた部分だが、今回のアルバムはその流れが逆に作用し、バトルシーンのトラックを聴けば、アニメの大胆な演出が鮮明に思い出されることだろう。これは今までの『ヒプマイ』の音盤にはなかった、アニメならではの楽しみ方である。

 特筆すべきは14曲目、m-floによる提供曲「Love Dimension」だ。『ヒプアニ』全編を通し、謎めいた存在であったアニメオリジナルキャラクターのトム・ウィスパー・ウェザコック、アイリス・イノセント・トレイター、太郎丸レックスの3人が結成したSecret Aliensの楽曲である。これまでの『ヒプマイ』にはない、透明感のある女性ボーカルに国際色豊かなリリックが重なってゆくスタイルは、終盤に明かされた彼らの正体や活動を考えれば納得。メロディに潜む煌めきや心地よいライムの中に、確固たる強さを感じることができる、m-floにしか成し得なかった楽曲と言えるだろう。

Secret Aliens『Love Dimension』(fromヒプアニ第12話)

 アルバムの最後は、各ディビジョンごとのバージョンで放送されていたED曲「絆」で締められている。過去それぞれのディビジョンに歌詞を提供したことのある様々なアーティストが参加しており、まさに“それぞれの絆”を綴った歌詞が、切なさすら感じさせる美しいトラックに載って紡がれてゆく。ディビジョンとしての絆だけでなく、一つの戦いを共にした全メンバーの絆も感じられ、アルバムのフィナーレとして感動的なナンバーだ。

 このようにバラエティ豊かな一枚だが、アニメのストーリーと合わせて、これまでの『ヒプマイ』の音盤とは一味も二味も違う楽しみ方ができる。『ヒプマイ』の音楽世界は今後ますます進化・成熟してゆく、そんな予感がするアルバムなのだ。

■草野英絵
ライター。アニメ、ゲームなどのエンタメ記事を中心に雑誌・WEBで活動中
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