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くだらない偏見を打ち破る! 山崎賢人の努力がもたらした『グッド・ドクター』の成功

リアルサウンド

18/8/23(木) 6:00

 今夏ドラマの中で、良い意味で最も予想を裏切ってくれたのは、『グッド・ドクター』(フジテレビ系)、しかも、主演の山崎賢人である。

 正直、放送開始前には「韓国ドラマのリメイク」で、重いテーマの「医療モノ」、しかも、「イケメン俳優・山崎賢人」主演ということで、あまり食指が動かなかった。

 だが、初回を観てすぐに、食わず嫌いはダメだと痛感させられた。

 山崎が演じるのは、自閉症スペクトラム障がいでコミュニケーション能力に難を抱える一方、驚異的な記憶力を持つ「サヴァン症候群」の青年・新堂湊。幼い頃に兄を亡くしたことから、「すべての子どもを大人にしたい」という夢を持ち、小児外科医になったという役柄だ。

【写真】撮影現場での山崎賢人の様子

 新堂は、知識は非常に豊富で、医療のこととなると、句読点がないほど淀みなくスムーズに、理路整然と平坦な調子で喋る。しかし、普段はいつもどこかオドオド、考え込んでいる目配りや、細かな手の動きや立ち方、歩き方をする。

 また、表情の変化、表現の仕方は非常に小さいのに、喜怒哀楽は手に取るようにわかる。子どもたちと同じ目線ながら、子どもたちを見守る目はあたたかく、マスクで目しか見えていないときですら、それが新堂であること、その気持ちがよくわかる。

 こんなに上手い役者だったのか……と驚いた視聴者は多いことだろう。SNSでも「山崎賢人あまり好きじゃなかったのに演技も中身も凄すぎて見てたら号泣」「山崎賢人あんまり好きじゃなかったんだけど、演技うまくてめっちゃ好印象持った」など、従来のファン以外から絶賛の声が多数あがっているのだ。

 思えば、2018年1月クールで放送されていた『トドメの接吻』(日本テレビ系)もそうだった。作品にも、山崎にも期待していなかったのに、観てみたら殊の外面白く、おまけに「金や権力に執着するクズのホスト」として生きる一方で、愛を信じず、闇を抱える私生活での地味で暗い素顔には、純粋さや哀愁が滲み出ていた。演技派・門脇麦との不器用で純粋で、どこかヌケたやりとりも愛らしかった。そんな空っとぼけたおかしみを生かしたのが、映画『斉木楠雄のΨ難』でもあった。

 逆に、彼が演じる新堂などを見ると、なぜこれまで「実写化専門俳優」とか「壁ドン俳優」みたいな売り方をしてきたのか、不思議に思えてくる。同じ売れっ子若手俳優でも、菅田将暉などはエンタメ大作からインディペンデント映画まで実にバランスよく出演し、人気とともに高い評価も得てきた。

 山崎ももう少し作品や役柄を選べば良かったのに……と思わなくもないが、おそらく最初から巧かったわけではなく、経験の中で学び、磨かれ、成長していったというのが実際のところではないかとも思う。

 余談だが、山崎は、芸能・エンタメ系記者の間で「記者泣かせ」と言われるのをたびたび耳にしたことがある。「すごく真面目でおとなしくて良い子だけど、コメントが記事にしづらい」という話だ。昨今はコメントも上手い役者が多いだけに、そんな評価が生まれるのだろう。

 だが、翻って「真面目でおとなしくて良い子」は、ちょっと不器用で謙虚で努力家という、大きな美徳になっているのではないか。

 ドラマ関係者によると、今作の役作りのために山崎は、プロデューサーと監督と2日間も綿密なリハーサルを行い、病院に訪れ、闘病中の子どもたちや先生に話を聞きに行ったという。そうした1つ1つの役に対する向き合い方、努力の積み重ねが、実を結び、評価につながったのが、たまたま今作だっただけなのかもしれない。

 「イケメン」は「個性派」より評価されにくいし、「若手」は「ベテラン」「下積みの長い苦労人」より評価されにくい。作品においていえば、大衆娯楽作や大作は、芸術性の高い作品や低予算・インディペンデント系より「評価」はされにくいのが、世の常だ。

 でも、エンタメ実写化に多数出演している若手イケメン俳優という要素だけで、舐めてかかったり、下に見たりするのがどれだけバカバカしいことか。山崎演じる新堂先生が、そんなくだらない偏見も打ち破ってくれた気がする。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

(田幸和歌子)

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