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『おちょやん』トータス松本再登場のインパクト 千代とテルヲが本心に触れ合う日はくる?

リアルサウンド

21/3/15(月) 6:00

 「子どもに捨てられた親が、こんなに寂しいもんやとは」――公演中に千之助(星田英利)が言ったこの台詞は、かつて兄弟劇を共に演っていた須賀廼家万太郎(板尾創路)に向けての想いに聞こえたが、なんと『おちょやん』(NHK総合)第15週「うちは幸せになんで」の予告に再登場した“例の人”への前振りでもあったのか。

 主人公の竹井千代(杉咲花)の父親・テルヲ(トータス松本)が、またしても千代の前に現れるようだ。ただし、これまで散々千代を振り回し引っ掻き回してきた“朝ドラ史上最低の父親”とも言われるテルヲもとうとう今回が最後の登場になりそうだ。

 予告では「幸せにしたってくれ」と神妙な面持ちで話すテルヲの様子が描かれており、“どの口が……”という気持ちを禁じを得ない視聴者が大多数だろう。だが、これまでの流れを振り返っても明らかな通り、決してこの親子関係を陳腐な美談にだけは終わらせられない、そんなチープな展開では今まで見守ってくれた視聴者が納得しないだろうことは承知の上での制作サイドの並々ならぬ意気込み、覚悟がどう帰結するのかも見ものである。

 ただ、千代からしてもテルヲのせいで散々傷つけられたとはいえ、満たされた幸せな家庭環境で育っていれば芝居に出会うこともなく、同じく親子関係に孤独を抱えていた一平(成田凌)とも惹かれ合わなかったかもしれない。千代の“喜劇魂”を育んだ一端を担っているのは、大好きな母親が残したビー玉と「明日はきっとえぇ1日になる」という言葉、それからどうしようもないけれど調子だけは良いテルヲと弟のヨシヲと過ごしたあの“何も持ってはいなかった”その日暮らしの幼き日々であることは間違いない。

 そして、テルヲ側からしても、千代本人はもちろん、千代の周囲にもどれだけ拒絶されているかはさすがに自明の中、また自分が姿を現せればどうなるのか、どんなに性懲りもないテルヲにだってわかっているはずだ。それでもやっぱり老いぼれてなお、最後に見たいと思うのは娘の顔だったということなのだろうか。これまでは必ず何らかの魂胆があって千代の前に登場してきたテルヲの“最後の目的”とは何なのか。泥臭いながらも最後にはポップに仕上げてくれるトータス松本が、“朝ドラ史上最低の父親”の幕引きをどう見せてくれるのか。テルヲが本当に“血も涙もない鬼のような人間”だとは考え難く、ただただ短絡的にその時の楽しさや快楽を追い求めた結果、今に繋がっている“ろくでなし”であることはおよそ間違いないだろう。そのテルヲが「最後」を意識した時に、どんな振る舞いに出るのか。

 これまで、テルヲの本心が垣間見えた瞬間が一瞬だけあった。幼き千代に母親と後妻の栗子(宮澤エマ)が似ていないことを指摘された際の反応だ。遠くを見つめ「似ててみ、思い出してしまうやないけ」とポツリとこぼす姿には、普段はカラッとした明るさしかないテルヲが抱える底知れぬ孤独が透けて見えた。この瞬間以外には、“混じりっ気なしの本音”をほぼ覗かせたことのないテルヲだが、今回こそは千代とテルヲが互いの本心に触れ合えることをどうしたって願ってしまう。

 『土曜スタジオパーク』(NHK総合)に出演した杉咲も、第15週の見どころについて「周囲の皆のおかげで千代とテルヲの関係性が変化していく重要な回になりました。人との繋がりが感じられる温かくて切なくて愛おしい回」と話した。最後の最後、千代とテルヲが、このなんだかんだ切っても切っても断ち切れない親子関係にどう決着をつけるのか。しかと見届けたい。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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