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なぜ彼らは日本のエンタメ支援策を立ち上げたのか?台湾の3ピースバンド・Elephant Gymロングインタビュー

ぴあ

20/5/13(水) 16:00

Photo by Takeshi Yao

台湾の3ピースバンド、Elephant Gym(大象體操=エレファントジム)が、日本のエンタテインメント業界や医療機関・自治体などに対しての活動支援への助成のクラウドファンディングを立ち上げた。

台湾を拠点に日本を始めワールドワイドな活動を行っている同バンド。日本の音楽にも強い影響を受け、幾度のジャパンツアーや日本人アーティストとの共演など日本へのシンパシーも厚い。

防疫措置のクイックリーな対応や徹底、損失補償等々COVID-19対策において高い評価を持つ台湾。とは言っても自国でもその被害は相当なはず。にも関わらず彼らはなぜ、日本のためにこの支援策を立ち上げたのか?その想いや真意、その先に待っている何か、そして台湾COVID-19対策の国民側からの見地をメンバーが真摯に答えてくれた。

|国境など枠組みを越えてサポートし合うという動きが少しでも広まってくれれば

Elephant Gym

── 今回の日本への支援ですが、まずは思い立ったキッカケから教えて下さい。

「それはもちろんCOVID-19が理由なんだけど、日本で本当に信じられない数のライブがキャンセルされたり、レコードショップやライブハウスが閉店の危機で(実際に閉店しているところも)あると知って、です。日本ではここ台湾よりそれらを維持するコストも高いだろうから、収入がない中で生き残るのは厳しいだろうと。日本のマネージャーであるSho(所属レーベルWORDS Recordings吉本翔)から連絡をもらいながら、少しでも助けになれることがあればと思って始めることにしました」

── これを通し日本にどのようなことを望まれていますか?

「今回は日本に対してというわけでなく誰にとっても重要な教訓になったわけで、世界的な危機に直面した時、個人でも国家でも、自身や大事な人を守るために迅速な判断を下し、どの情報が信頼でき本当に重要なものなのかを見抜くことが大事だと感じました。実際の金銭的支援に加えて、国境など枠組みを越えてサポートし合うという動きが少しでも広まってくれればと願っています。台湾がCOVID-19をうまくコントロールできているところも知ってもらえる機会にもなるかもしれない」

── 具体的な支援へのリターンを教えて下さい。

「2020年1月13日に渋谷クアトロで開催したワンマン公演のライブ映像があったのでそれを軸に、様々用意しました。詳細はクラウドファンディングのページを見てもらえればと思います」

◎Elephant Gym「SUPPORT JAPAN FROM TAIWAN」クラウドファンディングページ

── 今回の支援金は、どのような形で使われるのが理想でしょうか?

「金額的には豊かな生活を補償できるような額では全くないけれど、少しでも生活や家賃の足しにでもなればと思います。もし厳戒態勢を引きながらでも、何とかライブができるようになれば、その時にお互いを守るためのマスクや体温計を準備することに使う、といったこともいいのかもしれないですね」

── それによりどのような効果が出ることが理想でしょうか?

「日本はとても優しくてプロフェッショナルな人たちが揃っているから、引き続き同じ業界で働くことができればいいと願っています」

|台湾では若者はとても政治に関心を持っている。今回のCOVID-19の事態で、それが完全に良い結果として表れた

Gt, Piano, Synth : Tell Chang(張凱翔)/ Photo by Takeshi Yao

── 現在の台湾は、COVID-19の感染拡大防止に際し非常に優良国に映ります。自国であるみなさんから見た現在のCOVID-19の状況を教えて下さい。

「台湾では新規感染者が出ない状況が続いています(注:5/11現在、海外で感染した帰国者を除けば国内感染例は29日間ゼロ)。私たちはWHOの加盟国ではありません。よって政府はこういった感染症などに必要以上に注視する必要がある。

まず、当初COVID-19が確認されてから、台湾はこれを非常に重大なものだと受け止めました。自らや家族の命を奪う可能性があるもので、マスクがなければ不要不急の外出はしないし、手洗いをしっかりして、人との接触もできる限り避けた。

おそらく完璧な解決策というのはすぐには見つからないわけで、この期間に自分たちのできること、仕事ややりたいことに取り組み、家族との貴重な時間を楽しむことが、最も価値あることじゃないかと思います」

── 台湾ではどのようなことが効果的であったし、他国も見習うべきと思われますか?

「まずは、責任感があり、信頼足るパートナーと何事も取り組むこと。真実を隠しているような人がいれば、どれだけその人から得られるものがあろうと、その人を信じないこと。

次に、日常的に政治に関心を持つこと。台湾では年配の方だけでなく、若者はとても政治に関心を持っています。そのため、政府も若者に関心を持つし、どうやって彼らと正しくコミュニケーションをとればいいかを考える。今回のCOVID-19の事態で、それは完全に良い結果として表れました。政府はLINE、Facebook、Instagramやその他ソーシャルメディアを非常にうまく使いこなし、人々に事実と、やってほしいことを伝えました。

そして、他人に協力的であること。台湾ではすぐに多くの製造業が自分たちの製品を作るのをやめ、マスクを作り始めました。不要不急であれば、政府の方針に従い、自分や家族が危険に晒される行動は取らなかった。

最後に、政府に対して声を上げること。アーティストや中小企業はこれまで、自分たちを取り巻く環境に関して様々な提案をし続けてきました。そのため、今回も政府は彼らに対して、迅速に特別な貸付や補償を出すことができたのです」

── その“様々な提案”とは、どのような方法やツールを用いられることが多いのでしょうか?

「正式な方法の一つとしては、同業者を集めてプレスカンファレンス(記者会見)を開催し、直面する問題やどういった支援が必要かを伝えることですね。その他には政治家、議員さんに国会で審議してもらえるよう提案を提出しています」

── COVID-19の感染拡大防止に際し、何か日本及び世界に向けてメッセージがあったらお願いします。

「これは悪夢の時ではなく、挑戦の時だと捉えています。母なる地球は、人類の現代的で派手な生活に、ちょっとした待ったをかけているのかもしれません。

この期間、今までの生活や暮らし、人生を振り返ることができます。本当に信頼すべき人たちを信頼してきたのか?今の仕事は本当に自分がしたいものだったのか?本当に自分の持つ全ての願望を叶えなきゃいけないのか、もう少しミニマムに生活をして、環境に負荷をかけないことができないのか?愛する人と十分な時間を過ごしてきたのか?

この先、経済的には厳しい状況が生まれるでしょうが、世界は私たちを見捨てたりしないはず。高度なゲーム機器や電化製品じゃなくて、ペンや紙で家族と遊ぶこともできる。シンプルでも豊かに暮らすことができると気づけるのかもしれない」

── 国個々にはなってしまいますが、現在は全世界が一つのものに対して立ち向かい、乗り越えようと努力している感がありますが、それを経た後、みなさん的には何か理想の世の中的なものがあったりしますか?

「子どもの頃って、一年間の間に2、3ヶ月の長く楽しい休みがあったじゃないですか?その時のことを考えて、そこから学ぶことってできないのかなと思っています。この休みの間何をしていただろうって。よく寝てよく遊ぶように体を気遣って、家族との過ごし、創造性を磨くことができるんじゃないかって」

|日本人はいつもちゃんとしていて、何かをやろうとする時、誰も知らないところでも信じられないくらい一生懸命働いている

Ba : KT Chang(張凱婷) / Photo by Takeshi Yao

── ここからはElephant Gymと日本との親和性をお聞きします。みなさんから見た日本に対しての印象や実際に日本に来たり、接したり等の印象や感想からお聞かせ下さい。

「日本はいつも、私たちに対して温かくて丁寧にしてくれます。ライブで来日するときも、対バンするアーティストもスタッフも、皆親切でプロフェッショナルです。文化の違いに混乱することもあるけれど、それでも親切にしてくれる。子どもの頃から日本の音楽にも影響を受けているし、漫画やアニメも観ていた。だから今回、私たちの愛する様々な日本の人とモノが困っているということで、とても心配しています」

── 過去に何度かジャパンツアーも行っておりますが、その際の感想や印象に残っていること、また何かエピソードがあったら教えて下さい。

「ツアーのことじゃなく、初めて日本にツアーに来る前のことが今、まず頭に浮かんできました。その当時(2012〜2013年ごろ)、私たちはtoeやLITE、tricotなどの日本のバンドに非常に影響を受けていました。1stアルバム「ANGLE」のミキシングエンジニアを探していて、台湾には私たちのような音楽をやっているバンドがほとんどいなくて、非常に苦労していたんです。そこで友人が、「じゃあエンジニアもやっているtoeの美濃(toeギタリスト兼レコーディングエンジニア 美濃隆章)さんに頼んだらいいんじゃないの?」と言ってきて。でも日本語も流暢に話せないし、私たちの1stアルバムだし、そんなの叶いっこないと思っていたんです。でも結局、ダメ元で美濃さんにメールをしてみました。すると驚くことに美濃さんからOKとの返事をもらったんです。

2ヶ月後、日本に行き、美濃さんのスタジオにいました。その時私たちは皆、大学生だったのですが、美濃さんにとって自分たちの音楽は良く聴こえているのかとか、自分たちの身なりがダサすぎないかとか(笑)、すごく気になっていたのですが、彼はいつでもアルバムに対するアイデアやアドバイスを伝えてくれて、それは本当に刺激になりました。

それから、日本のアーティストはとても開けていて、知らないことに貪欲なんだと思うようになりました。一生懸命、良い音楽と演奏をやり続ければ、そんな人たちと一緒になれる日が来るんだと思いました。そして、そこからHow to count one to ten, tricot, LITE(アメリカで), WONK, YeYe, MASS OF THE FERMENTING DREGS, DATSなど素晴らしい日本のアーティストと演奏できる夢が叶っていったんです」

── みなさんが日本に対し魅力的や素敵と思われるところを教えて下さい。

「日本人はいつもちゃんとしていて、一生懸命ですね。何かをやろうとする時、誰も知らないところでも信じられないくらい一生懸命働いている。そういった献身的な姿はいつも日本文化から私たちが学んでいることです」

|この状況を乗り越えたら、日本でも本当にすごいものを見せられるようになると思う

Dr, Per : Chia-Chin Tu(涂嘉欽) / Photo by Takeshi Yao

── ここからはみなさんの現在の活動状況を教えて下さい。なんでも今は活動休止中であるとか?来るべき活動再開に向け、現在はどのような準備をしておられますか?

「これまではずっとツアーをやっていたから四六時中一緒にいたので、今はあえてお互いなるべく会わないようにしています(笑)。なので今のところほとんどメンバー同士では会っていないかな。仲が悪いとかでは全くないですから! 音楽的にそれぞれ皆が新しいことを学ぼうとしていて。それは何かはまだ秘密ですけど! 再開後の新たな音を楽しみにしていてほしいです。次のEPやアルバムなどに向けて、それぞれデモを創ることが課せられているのですが、バンド内でさえ、誰ともそれをシェアしないことを決めているので、それは今のところは誰も分からない(笑)」

── 今後のElephant Gymのビジョンを教えて下さい。

「活動再開後、台湾で最も大きい劇場で演奏する、劇団とのクロスオーバープロジェクトを進行させています。インストゥルメンタルバンドでもあるので、こういった劇団とのクロスオーバーではより深いストーリーを伝えることができると考えています。今年1月のジャパンツアーでは、ダンサーとの演出パートを創りましたが、それをさらに発展させたものですね。この状況を乗り越えたら、日本でも本当にすごいものを見せられるようになると思いますよ!」

Photo by Takeshi Yao

── COVID-19が収束し、来日した折には、何かしたみたいこと、会いたい人、行ってみたい場所はありますか?

「もちろん、出演が決まったフジロックですね。フジロックでみんなに会いたいです!!」

── そのフジロックですが台湾の方としてどんな印象を持っていますか?

「フジロックには私たちは一度も行ったことがなくて。でも、きっとこれから先の理想的なライフスタイルを提示していると思います。人類はどんどん自然から遠ざかっていて、洗練された、清潔な生活になってきています。けれど、子どものように遊び、木や森から学ぶ謙虚な冒険家として僕らは生まれたはずですから」

── 今年のラインナップで観たいアーティストさんを教えて下さい。

「GOGO PENGUINがめちゃくちゃ好きなんですよ。彼らからはいつも影響と刺激を受けてます。いつ彼らのライブを観れるかって常にチャンスを伺ってたんですけど、FUJI ROCKありがとう!! あとは、NUMBER GIRLですね。海外からチケット取るのは不可能に近かったので。だから……、FUJI ROCKありがとう!!」

── 無事事態が収束へと向かい、みなさんとフジロックでお会いできることを楽しみにしております。今回はどうもありがとうございました。

プロフィール

Guitar, Piano, Synthesizer :Tell Chang(張凱翔) / Bass, Vocal : KT Chang(張凱婷)/ Drums : Chia-Chin Tu(涂嘉欽) *TellとKTは兄妹。

2012年結成、台湾・高雄出身のスリーピース・バンド。初期はインストゥルメンタルを基調としながらも、近年はボーカルを取り入れることも多く、洗練された楽曲構成のセンスや高いテクニックを見せつける。感情的でメロディアスなベースラインを優しく包み込むギターとドラムのアンサンブルで、過去にはマスロックと形容されることも多かったが、現在はフューチャーソウルやヒップホップ、オルタナティブロックやシティポップ、フィルムミュージックなど幅広い音楽性を体現し、ジャンルや音楽的枠組みを超過せんとする。

台湾では既に代表的なバンドとなっている一方で、世界各国にてリリース&ツアーを実施。2016年8月、1stアルバムが日本でもリリースされ、「SUMMER SONIC 2016」に出演。2018年2月、アメリカ「Topshelf Records」より全カタログ作品がCD&レコードで全米リリース。

2018年「SYNCHRONICITY '18」「りんご音楽祭2018」「OOPARTS 2018」出演。同年11月、2ndフルアルバム「Underwater」をリリースし、東名阪ジャパンツアー実施、代官山UNIT東京公演はソールドアウト。また、北米公演全箇所ソールドアウト含む、14カ国約100公演のワールドツアーを実施。

2019年11月、Tyler, The Creator主催「Camp Flog Gnaw Carnival」(LAドジャースタジアム)出演。

2020年1月、日本にて初となる東名阪ワンマンツアーを敢行、全公演ソールドアウト。

2020年8月、FUJI ROCK FESTIVAL '20出演決定。

◎Elephant Gym「SUPPORT JAPAN FROM TAIWAN」

クラウドファンディングページ:
https://readyfor.jp/projects/elephantgym

5月11日に、新たにこのクラウドファンディング向けにデザインされた3アイテムのリターンが追加。デザインは全てグラフィックデザイナーのMACCIUが手がけている。詳細はクラウドファンディングのページにて。

【Elephant Gym Crew ナイロンパーカ】(限定100点)
【Elephant Gym Crew ロンT&コーチジャケット】(コーチジャケットにネーム入り / ネーム無し それぞれ限定50セット)

Website:https://www.wordsrecordings.com/elephant-gym
Twitter:https://twitter.com/Elephant_Gym
Instagram:https://www.instagram.com/elephant_gym_official/
Facebook:https://www.facebook.com/elephantgym/



編集 / ぴあ編集部 インタビュー・テキスト / 池田スカオ和宏

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