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King & Princeに漂う、ジャニーズアイドルの末裔感 初のコンサートツアー映像を見て

リアルサウンド

19/1/3(木) 7:00

 King & Princeが12月12日にライブ映像作品『King & Prince First Concert Tour 2018』を発売した。このDVD/Blu-rayには、2018年8月から9月に渡り開催された初のコンサートツアー『King & Prince First Concert Tour』の大阪城ホール公演の映像が収録されている。

(関連:嵐、Sexy Zone、King & Prince…『紅白歌合戦』出場ジャニーズの過去披露曲と注目ポイント

 King & Princeは今年デビューした6人組グループ。2015年の結成以来、ジャニーズJr.時代も随一の人気を誇っていたグループで、今年ついに1stシングル『シンデレラガール』でメジャーデビューを果たした期待の若手だ(当初はMr.King vs Mr.Prince。平野紫耀・永瀬廉・髙橋海人のMr.KING、岸優太・岩橋玄樹・神宮寺勇太のPrinceがグループ内に内在)。彼らはまだ2ndシングルをリリースしたばかりでKing & Princeとしての持ち曲が少ない。さらに、ツアー開催時はまだ2ndシングルすら発売されていなかったため、2時間以上を要する1つの公演をどのように完成まで持っていくのか、といったところが第一の注目ポイントだ。

■空から舞い降りる登場シーン
 開演すると赤い服を身にまとった20人以上のジャニーズJr.たちがステージに仁王立ちしている。厳かな音楽とともに踊り出しアクロバットなどを披露していると、ゆっくりと天井から何かが降りてくる。曲が止まりライトアップされると、そこにはKing & Princeのメンバーたちが横一列に足を組みながら豪華な椅子に座っている(岸優太だけは脚を広げている)。空中で”王様”感を漂わせる彼らに会場は熱狂の渦に。シンデレラを迎えに来た王子様のような演出だ。そのまま1曲目「シンデレラガール」が流れ出し、曲の間にステージに降りて歌い始めた。

 次に1stシングルの収録曲を続けて披露。「YOU, WANTED!」の途中で花道を進みセンターステージへ向かい、続けざまに「Funk it up」を歌い踊る。センターステージは可動式で回転し始め、真上にはミラーボールが設置されているため会場はちょっとしたダンスホールと化す。この回転ステージ、よく見ると6ピースに分かれているがその接合部が不安定で、メンバーが激しく踊ると揺れてしまうというハラハラする作りだ。きっと見ている我々よりもメンバーは怖いだろうが、怯える様子はまったくなく、堂々とパフォーマンスしている。

 ここまでの序盤3曲の流れが非常にスピーディーかつスムーズ。短い間に矢継ぎ早に曲が展開し空間をフルで活用した演出でスタートダッシュを決めている。メンバー内で他己紹介をし合う「We are King & Prince!」では、さきほどのセンターステージが6ピースに分かれて螺旋階段状になるなど舞台セットは工夫が凝らされている。

■先輩グループの名曲をカバー
 続いて、サマーソングを披露する。持ち曲の「サマーステーション」の後は先輩グループの楽曲「Ho!サマー」(タッキー&翼)、「SUMMER NUDE’13」(山下智久)、「Sexy Summerに雪が降る」(Sexy Zone)をメドレー式でカバーした。名曲ばかりのチョイスに会場も大喜びだ。

 今回のライブでは、こうしたカバーの選曲が秀逸である。KAT-TUN「Keep the faith」、V6「君が思い出す僕は 君を愛しているだろうか」、舞祭組「やっちゃった!!」、SMAP「夜空ノムコウ」「SHAKE」、NEWS「weeeek」……。ざっと挙げてみてもグループの垣根を超えたバラエティ豊かな選曲であることが伝わるだろう。そして、彼らのグループイメージを損なわず、新たな一面を引き出すような楽曲にもトライしている。特に、会場を暗くして夜空を映したスクリーンをバックに歌う「夜空ノムコウ」のカバーは、金色の衣装も相まって、彼らのファンタジックなイメージが楽曲の新たな魅力を引き出している。ファンならばこの映像は一見の価値アリだ。

■デビュー前の持ち曲を余す事なく出し切る
 King & Princeはデビューまでに時間のかかったグループでもある。それ故、デビュー以前から持っていたオリジナル曲が少なくない。それらを余す事なく披露することで、古参ファンも楽しめるようになっているのが今回のもう1つのポイントだろう。

 例えば、終盤で披露した「描いた未来~たどり着くまで~」はデビュー前のPrinceの楽曲。未来をストレートに歌った歌詞にファンからの人気も高い。それをこの初のコンサートツアーという場で披露することに感極まるファンもいたことだろう。この曲のパフォーマンス時にはメンバーの表情にどことなくひとつギアが上がったのを感じ取れた。

■次のシングルのカップリング曲の候補を披露
 また、2ndシングルに収録されるカップリング曲をファンの投票で決めようという試みも行われた。選択肢は「Misbehave」「秋空」「Glass Flower」の3曲。「Misbehave」はジャニーズでは異色のトロピカルハウス色の強いダンスナンバーで世界の音楽トレンドとも並べて語れるような一曲だ。「秋空」はしっとりとした美しいピアノバラード。「Glass Flower」は歪んだギターサウンドを持ちながらもゆったりとした曲調でメロディが切なく、壮大な広がりを持っている。最終的にカップリング曲は「Glass Flower」に決定した。ファンの意思や希望が活動にダイレクトに反映されるというのは、アイドルグループの新しい在り方だろう。

■繰り返し披露した「シンデレラガール」
 今回のコンサートでは「シンデレラガール」を振り付けや演出を変えて何度も繰り返し披露している。それには、単に足りない曲数を補うための数合わせとしてではなく、それぞれしっかりと意味が込められているだろう。1度目はグループの誕生を印象付ける「シンデレラガール」、2度目はファンとともに歌って踊る「シンデレラガール」、3度目は”門限”が迫り別れを告げる「シンデレラガール」、そしてラストに披露した4度目の「シンデレラガール」はその”門限”を超えてでもファンのもとへと会いに来た「シンデレラガール」だ。まさに「シンデレラガール」の歌詞のストーリーを描くような構成に、いかにこの曲が彼らにとって重要な一曲なのかが伝わる公演となっている。これらを通してデビュー時の思いを心に刻み込むような強い意志すらも感じ取れた。

 多くの名曲を拝借したことによって、彼らの佇まいには連綿と受け継がれてきたジャニーズアイドルの”末裔”感が漂い始めている。日本のエンターテインメント史の王家の血を継ぐ王と王子のステージ。そんな趣を感じ取れるステージングでありながら、しっかりと自分たち自身のデビュー曲(言うまでもなくジャニーズ楽曲史の新たな名曲である)をアピールするような姿勢もあり、さらにファンとの密な関係性を築く企画も用意されている。持ち曲が少ないながらもカバーや投票制度などさまざまな試みに取り組んだことで、初のコンサートツアーを完成させたKing & Prince。今後の活動のなかで、彼らのライブがどのように進化していくのか注目していきたい。(荻原梓)

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