藤原季節が主演する「のさりの島」が、5月29日より東京・ユーロスペースほか全国で順次公開されることが決定。場面写真が一挙到着した。

新型コロナウイルスの影響により公開が延期となっていた本作。熊本・天草に舞台に、オレオレ詐欺の旅を続ける若い男と、老女・艶子の関係が映し出される。寂れた商店街に流れ着いた男は、いつの間にか孫・将太として艶子と奇妙な共同生活を送ることに。さらに地元FM局のパーソナリティを務める清（きよら）たちに、昔の天草の8mm映像や写真を集める上映会企画に引き入れられ、活動に夢中になっていく。詐欺師の男役で藤原、艶子役で原知佐子が出演。本作は原の遺作となった。

監督の山本起也は「嘘、という言葉はあまり良い意味で使われませんが、嘘の中でこそ救われる、ということがあると思ったのです。あるいは、この映画の台詞を借りれば『まやかしでも、人には必要な時があっど（ある）』ということかもしれません」とつづった。評論家である上野昂志のほか、本作プロデューサーの小山薫堂のコメントは下記の通り。なお本作には杉原亜実、中田茉奈実、宮本伊織、西野光、小倉綾乃、酒井洋輔、kento fukaya、水上竜士、野呂圭介、外波山文明、吉澤健、柄本明もキャストに名を連ねる。

上野昂志（評論家）コメント

一見、とらえどころがない作品に思えるが、そこには、作り手の周到な設計が施されている。
緩やかな時間の流れ。それが、この映画をさりげなくも豊かに律しているのだ。

小山薫堂 コメント

新型コロナウィルスという脅威に人類が翻弄されている今。
多様な価値観を認め合うことが必要とされる今。
そんな時代に「のさり」という天草弁に出会うことで、人の心は少しだけ軽くなります。
のさりとは、良いことも悪いことも天からの授かりもの、という考え方。
それはあらゆる苦難を乗り越える力であり、自分とは違う考えを認める力であり、全てのものに愛を持って接する優しさの力です。
「のさりの島」という作品が、コロナ禍における心のサプリメントになることを信じています。

山本起也 コメント

嘘、という言葉はあまり良い意味で使われませんが、嘘の中でこそ救われる、ということがあると思ったのです。
あるいは、この映画の台詞を借りれば「まやかしでも、人には必要な時があっど（ある）」ということかもしれません。
オレオレ詐欺の男と、電話を受けたおばあさん。
二人がついた嘘が、寂れた街のシャッターの向こうで、いつしか本当になる。
ふと訪れた天草でこの映画の話をしたところ、そこに居合わせた方がこう答えました。
「監督、そん話、天草だとあるかもしれんばい」
この映画は天草で撮らねばならない、そう心に決めた瞬間でした。

※上野昂志の昂は異体字が正式表記

(c)北白川派