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和田彩花の「アートに夢中!」

『聖徳太子1400年遠忌記念 特別展「聖徳太子と法隆寺」』

毎月連載

第61回

今回、和田さんが紹介するのは東京国立博物館で開催中の『聖徳太子1400年遠忌記念 特別展「聖徳太子と法隆寺」』。仏像を愛する和田さんはどのように感じたのでしょうか?

今年は聖徳太子の1400年遠忌に当たる年で、これを記念した展覧会です。法隆寺はこれまでにも何度も伺っていて、自分にとってはとても身近に感じている寺院のひとつでした。けれども、その法隆寺を創建したとされている聖徳太子との関わりや、時代背景などについてはきちんと考えたことがありませんでした。だから、新しい発見も多くて非常におもしろかったです。

お寺では見ることのできない細部までじっくり鑑賞できる

まず良かったのが、法隆寺の持っている宝物、寺宝ですね。祭祀に使う道具など、細かいところにも文様が施されているのですが、それを見るのがすごく楽しくて。お寺で見ることができるものもありますが、展示室でそのものだけをじっくり観賞できる機会はとても貴重です。背後にほどこされた装飾に、鏡や照明をあてるなどして、普通見えないところまでしっかり見ることができるのがいいですね。細部まで豪華な調度品をたくさん持っている法隆寺って、当時はとても力のあるお寺だったんだなと改めて感じます。

国宝《灌頂幡(部分)》 飛鳥時代・7世紀、東京国立博物館蔵(法隆寺献納宝物)、通期展示

たとえば飛鳥時代に作られた《灌頂幡(かんじょうばん)》。寺院の境内や堂内に立てる飾りなのですが、天女様のように宙から舞い降りている菩薩の姿が掘られているんです。こういうのは、お寺のなかにあると遠かったり、暗かったりしてなかなかじっくり見られないんですよ。この菩薩像がかわいくて素敵だと思いました。

そしてやっぱり、仏像! 一生懸命、仏の形を作ろうっていう気持ちが強く伝わってくるし、仏さまがまとっている衣のひだとかは、魚のヒレみたいについていて、立体なのに平面的な雰囲気なんです。

展示風景 国宝《薬師如来坐像》

自作の仏像単語帳で勉強した高校時代

そもそも、私が仏像を好きになったのかは、高校3年生の頃までさかのぼります。当時、美術史を独学で勉強し始めていて、高校の先生が美術に関する話をしたり、美術の本を通して何か勉強するとかっていう時間を作ってくれたんですよ。そのなかで、「仏像も見てみたらいいんじゃない?」ってアドバイスを受けて。でも、当時は仏像の顔と名前も一致しなくて、全部同じに見えていたんです。そうしたら、先生が古本屋さんで古い仏像図鑑を買ってきてくれて。

そこで私は、その図鑑を全部切って、オリジナルの仏像単語帳を作ったんです。仏像の名前や所蔵しているお寺などを書き留めて、毎日眺めるようになった。そうしているうちに、ある日突然、仏像の顔がそれぞれ違うことに気づいたんです。先生に報告したら「そうだよ、そして仏像にはそれぞれ役割があるんだ」って。如来や菩薩などから細かいところまで仏像の役割について教えてくれて。母と一緒に鎌倉のお寺に行ったり、大学受験が終わったら、それこそ法隆寺に行ったり、仏像を見るのがどんどん楽しくなって、大学1年生から2年生の頃にかけて、仏像が大好きになって仏像巡りを積極的に行ってたんです。

でも、当時は美術史の勉強を始めたばかりで、美術にまつわる全体像が見えていなかった。ただ、自分が見て楽しいなという気分で巡っていました。あれから8年くらい経っていますが、その間に西洋絵画を自分の専門に置き、西洋的な芸術作品の見方を獲得して、改めてそれまで見た仏像を見返してみると、すごく楽しい。同じものを見ているのに、全然違う感動があるんです。年齢や経験によって見え方が変わってきて、そのことも楽しく感じています。

仏像彫刻の歴史や表現がつながっていく感覚

この頃、ロケなどで鎌倉時代の仏像を見ることが多いのですが、あの時代の仏像彫刻って、筋骨隆々で力強くて、衣のひだとか本当にリアルです。そんな仏像も好きですけれど、この展覧会で展示されている飛鳥時代の直立不動で、ちょっと平べったくもある仏像も非常に面白いと感じます。

展示風景 左《四天王立像 広目天》 右《四天王立像 多聞天》 

法隆寺では特に四天王立像が好きなのですが、この展覧会では広目天と多聞天が展示されています。どちらも、ただ立っているだけに見えてしまいます。でも、それがいい。また、四天王像ってたいてい邪鬼を踏みつけているんですけれど、法隆寺の邪鬼は、全く踏まれている感じがしないんです。単に四天王の下にいます、といった佇まい。むしろ、四天王をしっかり支えてるかのようにも見えてしまって、それがとてもおもしろいと感じました。このような表現の段階があるからこそ、それが発展して鎌倉時代の仏像彫刻につながっていくって今ならわかる。これまでにいろいろ見てきた仏像や表現の歴史が、自分のなかでつながっていくのがとても楽しいです。

そして、聖徳太子信仰というものを私は知らなかったのでとても興味深かったです。聖徳太子を救世観音の生まれ変わりと考える信仰が、平安時代になって盛り上がったそうなんですが、平安時代って聖徳太子が亡くなってすでに500年も経過しているわけですよね。こんなに時間が経っていて、そして実在の人を神格化するっていうのがとても興味深かったです。

展示風景 中央と右が2歳の、左が16歳の聖徳太子像

凛々しい聖徳太子像だけじゃなくて、2歳の聖徳太子像、16歳の聖徳太子像など、年齢や立場のバリエーションがあるのが面白いです。

そして500年経過しているから、表現の仕方も変わっているんですよね。時代区分で考えると、素朴な飛鳥時代と、写実的で知られる鎌倉時代の間。だから、飛鳥時代よりも立体的になっていることがすぐにわかるんです。この変化の仕方もおもしろかったですね。

ひとつのお寺、ひとりの人をテーマとした展覧会でありながら、長い時代の移り変わりもわかるので、ずっと見ていられるおもしろい展覧会でした。

開催情報

『聖徳太子1400年遠忌記念 特別展「聖徳太子と法隆寺」』
7月13日(火)~9月5日(日)、東京国立博物館にて開催
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/horyuji2021/ticket.html

607年に聖徳太子によって創建されたと伝えられる法隆寺。国宝《薬師如来坐像》をはじめとする寺宝を中心に、太子の肖像や遺品と伝わる宝物、さらに飛鳥時代以来の貴重な文化財を通じて、太子その人と太子信仰の世界を紹介する。

構成・文:浦島茂世 撮影(和田彩花):源賀津己

プロフィール

和田 彩花

1994年生まれ。群馬県出身。2004年「ハロプロエッグオーディション2004」に合格し、ハロプロエッグのメンバーに。2010年、スマイレージのメンバーとしてメジャーデビュー。同年に「第52回輝く!日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2015年よりグループ名をアンジュルムと改め、新たにスタートし、テレビ、ライブ、舞台などで幅広く活動。ハロー!プロジェクト全体のリーダーも務めた後、2019年6月18日をもってアンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業。アートへの関心が高く、さまざまなメディアでアートに関する情報を発信している。

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