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倉悠貴、清原果耶と重なる折り返し地点での朝ドラ登場 『おちょやん』ヨシヲ役の存在感

リアルサウンド

21/2/25(木) 12:30

 千代(杉咲花)にとって自分の命より大事な生き別れの弟・ヨシヲ(倉悠貴)が第12週「たった一人の弟なんや」より登場している。倉悠貴が演じるヨシヲが本格登場したのは第57話。全115回となる『おちょやん』(NHK総合)のちょうど折り返しとなる回だ。

 「生き別れの弟妹」「折り返しでの登場」で思い出されるのが、『なつぞら』(NHK総合)で全156回の内、折り返しの第79話で登場したなつ(広瀬すず)の妹・千遥(清原果耶)である。

 千遥を演じた清原果耶は、この役で俳優としての知名度と評価を格段に上げた。『なつぞら』からもうすぐ2年。現在、公開中の映画『花束みたいな恋をした』では物語において極めて重要な役柄を任されており、『おちょやん』の次期朝ドラである『おかえりモネ』(NHK総合)では満を持してヒロインを務める。

 ヨシヲを演じる倉悠貴もまた、かつての清原果耶のように、現在、脚光を浴びている。役者デビューしてまだ2年目。ほとんどの視聴者がこのヨシヲを通して倉悠貴を知るからだ。けれど、『なつぞら』の千遥のようなまじりけのない清涼なイメージの役柄とは違い、ヨシヲは第一印象としてはなかなかに前途多難な、“朝ドラ送り”でも高瀬耕造アナウンサーから“ワルヲ”といじられてしまうほどのキャラクターである。

 シャツの奥に透けて浮かび上がる、体に掘られた刺青。ヨシヲはヤクザ者と繋がっており、鶴亀株式会社を潰すためのネタを聞き出すために、千代へと近づいたのだった。ヨシヲに姉弟の情は一切ない。金のためならなんでもする。警察に知らせたら、仲間が道頓堀中の芝居小屋に火をつけると、ドスを利かせた声で姉を脅してヨシヲは立ち去っていく。

 テルヲ(トータス松本)と同等もしくはそれ以上の悪人となってしまったヨシヲを千代は改心させたいと一平(成田凌)に相談する。それはたった一人の弟のためでもあり、今にも崩れ落ちそうな自分を救うためでもあった。

「もう姉やんの夢物語は聞き飽きた」
「人がどうなろうと、あんたがどうなろうと知ったこっちゃあれいん。人間はな所詮一人なんや」

 鋭利な言葉のナイフで実の姉をグサグサ刺していくヨシヲ。さらにヤクザとしての凄み。朝ドラ史上と言っても過言ではない、そのドス黒さを醸し出せる倉悠の演技力はキャリアの若さから考えても素晴らしい。

 そんな手の負えないヨシヲを説得しようと動いたのが一平。千代と出会った9歳の頃からの昔話しをヨシヲに始める。岡安でお茶子として下働きしていた時も、テルヲのせいで道頓堀にいられなくなった時も、役者になって撮影所をクビになった時も、千代の心にいつもいたのはヨシヲだった。「お前のためなら死ねるてな」「この世の中でお前のこと誰よりも思てたんは間違いのう、千代や」。長い時間一緒に千代と過ごしてきた一平の言葉は重い。同じ年月の間、人のことなんかどうでもいいと一人で過ごしてきたヨシヲとは違い、一平も、そして千代も人を思って生きてきた。その相手が自分だったというのだからズシリと心に響くのも尚更だ。

 ヨシヲはえびす座にて、マッチを擦って火をつけようとする。ゆらゆらと浮かぶのは千代の顔。そうしている間に風が吹いて、火が消える。そこに現れたのは、マットン婆さん姿の千之助(星田英利)、そして間一髪間に合った千代と一平だ。一平の言葉、千代の思いを聞き、ヨシヲは何を思うのか。『おちょやん』の明日が晴れであることを祈りたい。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00~8:15、(再放送)12:45~13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30~7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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