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MAN WITH A MISSIONはなぜモンスターバンドに成り得たのか Jean-Ken Johnnyに聞く、10年の葛藤と不変の信念

リアルサウンド

20/7/15(水) 12:00

  MAN WITH A MISSION(略称:MWAM)が、結成10周年のベスト盤『MAN WITH A “BEST” MISSION』をリリースした。謎のオオカミバンドとして登場してから10年、奇抜なビジュアルとは裏腹な骨太のロックサウンドであらゆるロックフェスを席巻し、2014年には全米デビュー。さらに近年では月9主題歌を担当したことが象徴的だが、映画やドラマなどを彩ってきた数々のタイアップ曲、定番化した音楽番組への出演はMWAMの認知度を飛躍的に向上し、今では国内外で活躍するモンスターバンドへと成長した。

MAN WITH A MISSION「MAN WITH A “BEST” MISSION」TEASER

 そんな彼らは当事者として、10年間のキャリアやその中でのシーンの変容をどのように受け止めているのか。MAN WITH A MISSIONの10年の軌跡を振り返りつつ、音楽サブスクリプションサービス普及以降の視聴環境の変化、新型コロナウイルスで未曾有の危機に直面している音楽シーンの現在と未来についての思いを聞いた。(編集部)【発言はすべて、編集部で日本語に翻訳】

「スゴクキャッチーデアルコト」ガ大前提

リモート取材に応じるJean-Ken Johnny

ーーMAN WITH A MISSION(以下、MWAM)が音楽シーンに登場してから「もう10年経ったんだ!」という事実に、素直に驚きました。

Jean-Ken Johnny(以下、Jean-Ken):やっぱりそうですか。自分たちとしては早かったなと。この10年間というのは、すごく早い感覚ですね。

ーー登場した頃はまずそのビジュアルに驚かされることが多かったですが、続いて楽曲のキャッチーさに驚かされるという二重構造があったと思うんです。最初は「どう受け入れられるんだろう?」と興味を持って見ていましたが、気づけば「Emotions」(※2013年2月発売)以降のシングルにはすべてタイアップが付いていましたし、それによっていろんな場面でMWAMの楽曲を耳にする機会も増えた。なおかつ、音楽番組などのメディアにも出演する機会がかなり増えていると思います。そういう受け入れられ方に対して、Jean-Ken Johnnyさんの中で大きな変化を迎えたタイミングは、この10年の間にありましたか?

Jean-Ken:どうだろうなあ。10年間走り続けてきた中で、本当に最初から……手前味噌ですけど、いわゆるメディアとかそういったところに出演するときには肩の力を抜きつつ、我々のロックバンドとしての本質的な魅力が伝わってほしいなと。とはいえ、いかんせんこういうビジュアルですので、入り口というのは千差万別ですし、明らかに見た目で入る方がいらっしゃることもわかっているので、最初からメディア露出に対する向き合い方というのはあまり肩肘張らないでやっていたからよかったのかなという気分ではありますね。もちろん大きなメディアや番組、雑誌に出演したこともありましたけど、特にどこかで変わったとかターニングポイントというのはなかった気がします。

ーー楽曲がアニメやドラマ、映画などで使用されることで、今までリーチできなかった層にまで行き届くという相乗効果も生んだのかなと。そういう場面で、楽曲制作との向き合い方に変化が生じたことはありましたか?

Jean-Ken:意識せざるを得なかった場面というのは多々あったと思います。もともと自分たちはロックミュージックを中心に、モンスターバンドみたいな存在から知る人ぞ知るインディーズバンドまで幅広く聴いてきたんですけど、音楽を制作する際には常に「すごくキャッチーであること」が大前提であって、人の心に響かせるにはその要素は絶対に必要であると。すごく大袈裟なことを言ってしまうと、自分たちが憧れを抱いていたバンドというのは、たとえインディーズだろうがメジャーであろうが、メインストリームで流れている音楽に負けないぐらい大衆性を帯びている、それぐらいの魅力に溢れているとずっと信じていたんです。なので、そこが変化するということはなかったですね。むしろ、「音楽の本質が広がってほしい」だとか「説得力があってほしい」という意味での向き合い方ぐらいの変化だったんじゃないかと思います。

MAN WITH A MISSION 『Remember Me』

ーーなるほど。最近だと月9ドラマ『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』の主題歌「Remember Me」を通して、それまでMWAMを知らなかった層、聴いていなかった層にも届く機会を得られました。こういうケースでは、例えばドラマのストーリーを踏まえた上で制作するわけですよね?

Jean-Ken:作品によっては書き下ろしという形で寄り添うものもありますので、ストーリーをちゃんと理解することで楽曲に影響を及ぼすことはあります。そう考えると、そこでのバランス感覚については確かにこの10年間で考えさせられましたし、考えながら曲を作っている場面は多かったかもしれないですね。

ーーでも、だからこそ映像との親和性も高まり、映像を観た人からの支持も増えていった。

Jean-Ken:それはありがたいですよね。実際にそういった反応がいただけると、我々の音楽により深く理解を示していただけているとうれしく思います。

聴イテキタ音楽ノ歴史ガ単純二表レテイルダケ

MAN WITH A MISSION – Hey Now

ーー一方で、MWAMが影響を受けた音楽の中にはストリート色の強いアンダーグラウンドなものも少なくないと思います。実際、今回のベストアルバム『MAN WITH A “BEST” MISSION』にもそういったカラーがにじみ出た楽曲が含まれているわけですが、マニアックな方向に偏ることなく、常にキャッチーさを保っている。MWAMはこのバランス感覚にとても長けていると思うんです。

Jean-Ken:ありがとうございます。やっぱりずっと想像していましたよ、自分たちが聴いているバンドや音楽というものに対して、「なんでこのバンドが『Mステ』に出ないんだろう?」「なんでこのバンドが日本のチャートの1位にならないんだろう?」と。実際、そういうことを夢見て音楽というものを聴いていた側面もありますので、自分たちの音楽にはそこが如実に表れているのかなと思います。

ーー特に最近の楽曲を聴くと、アレンジなど味付けの多様性が非常に広がっている。だからといって軸足がブレることはまったくなくて、見せ方や届け方という部分においていろんな可能性が以前よりも増したのかなと。

Jean-Ken:自分たちはありがたいことに、いろいろなアレンジャーやプロデューサーと一緒にやらせていただいて、どの方も自分たちの音楽ルーツというものを深く理解した上で、MWAMというバンドの良さを引き出してくださっている。と同時に、チーム全体がMWAMの新たな側面を見せようという姿勢で臨んでくださっているので、常に新しいチャレンジというものが自然と付いて回るような楽曲制作になっているのがとても健康的だなと思います。

ーーそれこそ、初めて「Hey Now」を聴いたときも、最初はプロデューサーの中野雅之さんらしいBOOM BOOM SATELLITES色を感じつつも、最終的にはどこからどう聴いてもMWAMだという、不思議なコラボ感が際立つ楽曲だと思いましたし。その感覚は相手が布袋寅泰さんだろうが東京スカパラダイスオーケストラだろうが、常に変わらないんです。制作過程においてコラボ相手から受ける影響もあるかと思いますが、その中でどう「自分たちらしさ」を表現しようと考えていますか?

Jean-Ken:それは非常に難しいですね。「自分たちのオリジナリティというのはこれです」というのは、意外と言葉にするのは難しかったりもして。MWAMはもともと、バンドとしても音楽としてもハイブリッドなものを目指していて、軸として活動しているので、逆に皆さんがよく言う「ジャンルはこれ」みたいなものがビシッと言えなくて、僕は毎回困ったりもするんです。でも、言葉にはできないんですけど、自分たちの出している音楽って結局歴史だとも思うんですよ。

ーー歴史、ですか。

Jean-Ken:はい。オオカミが聴いてきた音楽の歴史が単純に表れているだけで、何か新しいことをやるにしても、結局そいつが聴いてきたものの歴史が如実に表れるのが音楽制作の一番の楽しみだと思うんです。自分たち「らしさ」というと、ものすごくいろんな要素が集まってしまいますけど、結局は80年代、90年代、2000年代初頭の音楽やロックバンドに抱いていた、幻想に近いような理想像をずっと思い描いていて。そういう意味では、MWAMは「やっぱりロックバンドはこういうところが美しい、この瞬間が美しい」というものを前面に出しているバンドだと思うんですね。それこそ今回のベストアルバムを聴いていて思ったんですけど、その青臭い感情というのを自分たちで恥ずかしげもなくにじみ出させている、非常に珍しいバンドだなとも思ったりもして。言葉にもしていないのに、音楽としてそれが表れてしまっている。そこが一番バンドの軸になっているのかなという印象はありますね。

ーー特に日本人はカテゴライズが好きですけど、単純にロック……「MWAMの音楽」でいいのかなと実感させられたのがこのベストアルバムでした。

Jean-Ken:ジャンルをひとつに絞るには、我々がいろいろ手を出しすぎてしまったというのもありまして(笑)。例えば本当にパンクだけをやっている、その純度の高さにものすごく憧れたりもするんですけど、やっぱり自分たちは本当にいろんなジャンルの音楽が好きで、そういう新しい衝動から得た経験と記憶と歴史というものがありますので、ハイブリッドなものにならざるを得なかったんです。

自分ノ心ガ震エタモノガチャント投影デキテイルカ

ーーMWAMが登場してからの10年を振り返ると、日本の音楽シーンが大きな変化を迎えたタイミングでもあったと思うんです。と同時に、音楽の聴き方もフィジカルからデジタル、さらにサブスクリプションサービスと変化を重ねてきました。

Jean-Ken:そうですね。特に我々が活動を始めた2010年という年もそうでしたし、そこからの10年は本当にめまぐるしかったですし。特に僕は音楽シーンそのものよりも、インフラの激変ぶりが単純にジャンルにも影響を及ぼしたのかなという印象を受けますね。

ーー例えば、音楽の聴き方の変化が制作など活動に変化を及ぼすことは?

Jean-Ken:やっぱり、単純に心理的な影響はものすごく大きかったですね。自分が音楽を手に取って聴いていたのは、それこそCDというものが一番多かったわけで、それがデジタルに取って代わるとなると技術的な面で音が変わるだとか、そういった影響はもちろんあるんですけど、聴かれ方として「単曲買い」という発想が増えたことによって、取捨選択がものすごく無感情にできてしまうようになった。そこにずっと「勿体ないな」と感じていたし、今も感じています。考え方的にすごく古いオオカミなのかもしれませんけど、そこで効率化や利便化してしまうと音楽を発見するときの無駄な喜びというものが削除されてしまうんじゃないかなと。

 ただ、そういった方向にユーザーが流れてしまうというのは仕方ないことですが、それに合わせて音楽が変わってしまうというのは本末転倒のような気がします。我々は「作品」だと言い張りながら音楽を作っていても、結局購入する側には「アイテム」でしかないという考え方をする方ももちろんいらっしゃいますので、そこでのバランスや葛藤というのはこの10年ずっと抱えています。

ーーサブスクリプションサービスが普及したことで、新しい音楽をどんどん見つけられるという点では便利な世の中になりましたけど、一方でイントロだけを聴いて「イマイチかな」と思ったらすぐに飛ばせてしまう。その影響もあってか、海外のヒットチャートに目を向けると最近は2~3分とコンパクトな楽曲ばかりが上位を占めています。

Jean-Ken:本当におっしゃる通りだと思います。人間が抱かなければいけない感情というものまでを効率化してしまっているというか、選んでいる感情の処理速度まで制御しようとしている。効率化や利便性ばかりを求めて、人が無駄だと思っているものを勝手に削除してしまっている動きを、僕は生きものとして勿体ないなという気がしています。

ーーそんな中で、MWAMとして作品を制作するときに一番こだわるポイントは?

Jean-Ken:やっぱり「人に届ける」ということ、これはずっと変わらないのかな。音楽を作る上でそこが常に頭の片隅にあって、絶対になくならないですし。結局、音楽というのは人に聴いてもらって初めて音楽として成立すると思うんです。100万人が100万通りの感情を抱くから、初めて音楽に意義が生まれる気がするし、万人が聴いて共鳴するというのが一番大事だと思っている。と同時に、自分自身の心が震えるかどうか、自分の心が震えたものがちゃんと投影できているかも重要になってきますよね。自分がいまだに憧れているロック像、その自分のかけらの一部が曲に投影できているのかどうかが第一前提なのかなと思います。そうじゃないと、作り届ける意味がなくなってしまいますからね。

答エハヒトツ、コノ姿ガスベテヲ払拭スルンデス

ーー聴いた人と共鳴・共有するという意味では、ライブも重要になってくると思います。MWAMは気づけばアリーナツアーや阪神甲子園球場でのスタジアムライブなど、かなりライブの規模が大きくなっています。自分たちのライブがここまで受け入れられた理由について考えることってありますか?

Jean-Ken:理由は深く考えたことはなかったですね。自分たちの活動の中で、何かの蓄積が功を奏してこうなっているとか分析はもちろんしますけど、それでも何か理由があるとすれば……一番は「そこに立つことを想像していた」ことなのかなと思います。音楽を初めて聴いたときから、バンドをやりたいと思い始めたときから根拠のない自信みたいなものがあったような気がしていて。例えば、自分が映像で観たウッドストック・フェスティバルのすさまじい会場で、「人が波打っている中で演奏する曲を作るんだ」みたいな、青臭いガキが豪語するような夢を頭の中で反芻していることは、恥ずかしながらいくらでもありましたしね。今はおぼろげながら想像していた場所に立てているけど、それでも「もっとデカいところで何かをしている」という想像をいまだにしちゃうんです。

ーーなるほど。MWAMは今や大型音楽フェスの常連でもありますが、いわゆるロックフェスだけでなく、いろんなジャンルがごった煮になったフェスや、コアなジャンルに限定されたフェスなど、どこにでも出ていける強みがありますよね。なぜそんな存在になれたんでしょう?

Jean-Ken:答えはひとつ、この姿がすべてを払拭するんです(笑)。自分たちは声を大にして「ロックバンドです、ロックをやっています」と言いますけども、それ以上にこの見てくれがジャンルなんかどうでもよくさせているというのは絶対にあると思うんですね。これが受け入れられるひとつのきっかけになって、さらに音楽によりフォーカスを当てるきっかけにもなっているような気がします。

ーー確かに。この強みはMWAMならではですものね。

Jean-Ken:面白いもので、あまりにも突拍子もない姿ですと、逆に音楽にフォーカスするんですよね(笑)。これがいわゆる通常のアーティストだと、「今日はどんな衣装、どんな髪型なんだろう?」とか気になるじゃないですか。我々、そこは気にされませんから(笑)。だから、逆に音楽にフォーカスするという。

ーーとなると、例えばMWAMのことをまったく知らない人が、このベストアルバムを通して初めてMWAMの楽曲に触れたとき、どう感じるのかがすごく興味深いなと思って。

Jean-Ken:結局人間って、「どんなバンドなのかな?」と見た目を想像すると思うので、まさかこの姿だとは思わないでしょうね(笑)。

ーー(笑)。しかも、曲ごとに幅広いサウンドで味付けしていますし。だからこそルックスが想像できない存在でもあるのかなと。

Jean-Ken:それこそ少しだけ先ほどの質問に戻りますけども、「自分たちの軸ってなんだろう?」と突き詰めると、その混沌としたハイブリッドさなのかなと。我々が今生きている時代もそうですし、自分たちがずっともがいて生きてきた時代も、混沌としている感情をずっと抱えていると思うんですね。自分で想像しがたい、本当に解析しようのない、説明しようのない葛藤って誰しもが抱くと思うんですけど、ではなんで葛藤を抱くかというと、まっさらな心理というものが絶対にあると信じているから。その心理というのをいまだに引きずっていたりもして、それらが楽曲の歌詞だったり音楽のハイブリッドさに表れているのかなと、今話していて思いました。

海外プロデューサーハ「システマチックデ、理論的デ数学的」

ーーこのビジュアルで得をしている部分もあるとおっしゃいましたが、それは海外でのライブでも同様でしょうか?

Jean-Ken:だと思います。ただ、今は世界中ある程度インフラが整っているので、我々の存在を知っていらっしゃる方も大勢いらっしゃる。なので、最初からこれを期待して観に来る方も少なくないのかなと。我々は「音楽は国境を越えるもの」だと信じているし、そこには国も人種も宗教も関係ないと思いますけど、いかんせん人間という生きものはなかなか複雑だから「どこの国から誰がやって来た」ということに敏感だったりもするんですよね。それは残念なことですし、絶対にあってはならないことだと自分も信じていますけども、そういった中でこのビジュアルだと実はそのバイアスがなくなる。ということは日本と同じで、逆に音楽にフォーカスされるようになるんです。

ーーとなると、より音楽がシビアに評価されることになりますよね。特に海外はその傾向が強いですし、フェスのような現場だと気に入らなければすぐにその場を離れてしまう。にも関わらず、MWAMは2018年には『Download Festival』や『Reading and Leeds Festival』といったイギリスの大型野外フェスへの出演を果たした。それって音楽を評価されての抜擢だと思うんです。ここまでの海外での評価を、今どのように受け止めていますか?

Jean-Ken:純粋に数が増えているのもうれしいことですが、入口はこの見た目で「なんだなんだ?」というフックが確実にあると思います。そこで先ほど言ったように、より音楽にフォーカスしやすくなっているというのも功を奏して、徐々にですけど海外のコミュニティが出来上がっている。もともと僕自身、日本で洋楽と言われているバンドに憧れていたので、「世界中で当たり前のように鳴っている音楽を作っていきたい」と思っている身としては幸せですよね。

 とはいえ、ものすごく真面目なことを言うと、それこそ『Download Festival』は……今はちょっと変わりましたけど、もともとはメタルフェス。我々は決してメタルではないので(笑)、観客全員が全員このバンドを観て音楽的に気に入っているというわけではなかったです。ただ、そんな状況でもすごい数のお客さんが反応してくれたので、そこでの収穫はすごく大きかったですしありがたかったです。

ーーでは、この10年の海外経験を通して、現地の音楽シーンやオーディエンスの変化を感じることは?

Jean-Ken:海外ではロックバンドというものが少しだけ元気がなくなっているという現状において、海外でライブに来てくれる人はもともとロックファンが多かったりするんですけど、いわゆるロックが好きでもないようなオーディエンスの中に放り込まれると、そのジャンル感が及ぼす影響をものすごく感じますね。そこが日本と圧倒的に違うんです。日本の音楽業界は世界で見るとかなり稀有で変わっていて、よく「日本は海外と全然違う、ガラパゴス的だ」と言われますけど、ロックを含めいろんなジャンルがまだ元気があって、ある意味すごく健康的じゃないかな。海外に行くたびに、それはより強く感じますね。

MAN WITH A MISSION – Dead End in Tokyo

ーーそういった海外でのツアーを通じて、海外アーティストとの交流も増えているかと思います。今回のベストアルバムにもFall Out Boyのパトリック・スタンプがプロデュースを手掛けた「Dead End in Tokyo」が収録されています。海外のアーティストやプロデューサーとの作業は、国内アーティストとコラボするときと何か違いはありましたか?

Jean-Ken:いや、大きな違いはないですね。やっぱり音楽に携わっている方は日本にいようと海外にいようと、ものすごくアンテナを張ってらっしゃる方々ばかりなので、そういう意味では皆さん一緒でした。ただ、海外の方たちのほうが「対世界」というものに対する純度とノウハウは濃かったですね。しかも非常にシステマチックで、理論的で数学的なんです。人間って感覚でやることと理論でやることって相反すると勝手に思い込んでいますけど、その感覚すらも「こういう感情ってこういう音だから」と理論で説明する。とはいえ、最終的には感覚が勝つこともあるのでどちらも大事ではあるんですけど、とにかくその純度がすごく高いなと思いました。

期セズシテコノ状況トリンクシタ「Change the World」

MAN WITH A MISSION「Change the World」

ーー改めてベストアルバムについて。10年間さまざまな楽曲を作ってきましたが、厳選した楽曲を1枚にまとめることは相当大変な作業だったんじゃないかと思います。

Jean-Ken:自分で出しておいてなんですけど、ベストアルバムってちょっとつらいなと思うときがあります(笑)。だって、自分たちで作ったものはすべて「ベスト」な作品なわけですから。

ーーそんなベストな楽曲群から、今回選ぶときの基準は?

Jean-Ken:基本軸として、皆さんがよく耳にしているであろう楽曲ですね。「なぜあの曲が選ばれてないんだ?」と思う人もいるでしょうけど、ベストというのは単なる名称で、時系列順に選んで集めただけです。もし皆様がそれで満足していただけなければ、ぜひ過去のアルバムを買ってください(笑)。

ーーこのアルバムを起点に、どんどん過去にさかのぼっていくのもいいですし。

Jean-Ken:僕はそれが一番、能動的な音楽の聴き方だと思うんです。音楽の楽しみ方って受動的ではダメだと思うので、自分から取りに行くほうが、下手なミリオンヒットよりも大切な1曲を見つけられるんじゃないかな。

ーー先ほどの話じゃないですが、今のサブスク文化は過去を掘りやすくしていて、ある意味利点ではありますよね。

Jean-Ken:そうですね、検索しやすいという点では掘りやすくなりましたし。やっぱり、使う側がどういう感覚で使っていくかが一番大切ですね。

ーー今回のアルバムには最新シングル「Change the World」も含まれています。制作自体はコロナ前に行われたものですが、このタイミングに聴くと未曾有の事態で世界がどんどん変わっていくことにもリンクしますよね。

Jean-Ken:この事態を想定して書いたものではないですけど……今は我々含め「変えたくない」だとか「変わらなくちゃいけない」だとか、そこの天秤で揺れ動いているタイミングかと思うんですけど、その変えていく力によく「神頼み」だとか「神様の力を借りて」だとか「悪魔に魂を売って」だとか使うことがありますが、結局行動するのは人間であって。その人の意思ですべてが決まるという、そんな思いを込めて作った楽曲なんです。なので、期せずしてこの状況とリンクしたんですよね。

世界ヤ時代ガドレダケ変ワッテモ、音楽ハズットソコニアル

ーーこの10年を振り返ったときに興味深いのが、MWAMが始動した翌年に東日本大震災があり、10周年を迎えたこのタイミングに新型コロナウイルスが流行するという、世の中が変化せざるを得ない時期を節目に迎えていることなんです。そういう出来事がバンドに与える影響は少なくないと思いますが、特に今回のコロナの場合はどう受け止めましたか?

Jean-Ken:自分自身は音楽を聴く身としても届ける側としても、普通にそれを楽しめるというのは平和な日常にいたんだなということに改めて気づかされて。実際こういうことが起こってしまったときに「世界の一部として何ができるのか?」と、ものすごく悩まされた時期でもありました。ただ、ひとつだけはっきりしたのは、結果的にこういう世の中になっても耐えられるだけのアイデアや準備というのを、我々は考えていかないといけないんだなと。それってコロナに限らず、未来永劫変わらないと思うんですよ。何かが起きたときに自分たちがどう違う一手を打てるか、それによって「何にでも耐えられるんだ、僕らは生きていけるんだ」と示す姿勢が一番大事なんだなと痛感させられました。

 実際問題、我々はライブができなくなるなど痛いぐらい食らっています。もちろんライブハウスの方々が一番苦労していると思いますし、人数を集めて場所を提供するという生業である以上、今は悔しいと思いますけど、ただその伝統を守りつつも、配信などを通して新たに何かできないかと模索する心の余裕と気持ちの持ちようは、絶対に必要だなと痛感させられましたね。それは疫病だけの話じゃなくて、平和な世の中であっても一緒。海外にいるのにライブが観られないという人に向けて配信ライブをしたときに、100人のライブハウスなのに1万人視聴できるシステムを作ったら、そんなすごいことはないじゃないですか。技術とインフラばかりが先に進んじゃって、人のマインドだけが成長しないというのはおかしい話ですものね。

ーー不要不急と言われる中で、特に音楽は槍玉に挙げられることが多かったですが、だからこそ個人個人にとって何が大切かを考えた時期でもありましたし、音楽の重要さを再確認した人も少なくなかったと思います。

Jean-Ken:スティーヴン・キングが言ってましたよね、「こういうものが必要ないと言っている奴らは、自粛期間中に映画も観ず、本も読まずに過ごしてみなよ」って(笑)。本当におっしゃるとおりで、全部効率化して無駄なものを省くって、なんとも味気ないもので、生きものとして勿体ない気がする。その中で音楽というカルチャーはものすごく必要なものだと私自身思いますし、だからこそ守っていきたい、守らなければいけない場所でもあるんです。

ーーそれを10周年という節目に考えることになり、ここから先の活動に変化や進化が促されることになる気がします。MWAMとしては、この先何を示していくべきなのか、何を残していきたいと考えていますか?

Jean-Ken:先ほど言っていたシステムや仕組み、脆弱な部分を取っ払うアイデアというのは、バンドとしてだけではなく、どちらかというとひとつの生きものとしてやっていくべきだなと考えていることでもあるので……音楽としてやっていくことは、僕は変わらないと思います。一度たりとも変わったことはないですしね。世界や時代がどれだけ素知らぬ顔で変わっていったとしても、音楽はずっとそこにある。僕が知っている感覚の中では、「永遠」という言葉に一番近いかもしれませんね。

 とはいえ、いきなりジャズやボサノバをやっているかもしれませんが(笑)。でも、そのへんは大した差ではないんですよ。それはあくまで側(がわ)なので。「ジャンルが変わった」だとか「歌い方が変わった」だとか、結局そういう変化は単なる側であって、自分自身の心が震えるものを人に届けているだけなので、その本質は未来永劫変わらないと思います。

ーーでは、歌詞やメッセージに関してはいかがですか?

Jean-Ken:変わっていくのかもしれないけど、自分自身で分析すると意外と変わりようがないのかなと思います。それはなぜかというと、今回のベストアルバムを聴いたときに、自分が一番強く打ち出しているメッセージって結局、音楽であったり友人であったり何かしらに受けた影響に対する憧憬や「こうあってほしい」という思いだったりするので、変わりようがないんですよ。なぜなら、思い出だから。「その瞬間の感動というのは、ものすごく美しいものなんだよ」ということを、この10年間たくさん歌ってきたし、そのテーマって変わりようがない普遍なものですからね。

『MAN WITH A “BEST” MISSION (Deluxe Edition)』

■配信情報
デジタル限定アルバム
『MAN WITH A “BEST” MISSION (Deluxe Edition)』
7月15日(水)配信リリース
01. Change the World(2020 NHKサッカーテーマ曲)
02. Rock Kigdom feat. 布袋寅泰
03. Remember Me
04. Raise your flag
05. Take Me Under
06. Memories
07. Get Off of My Way
08. higher
09. FLY AGAIN 2019
10. Dive
11. Emotions
12. Hey Now
13. database feat.TAKUMA(10-FEET)
14. Dead End in Tokyo
15. Take What U Want
16. Seven Deadly Sins
17. My Hero
18. Dark Crow *デジタル限定収録
19. Find You *デジタル限定収録
20. Out of Control *デジタル限定収録

■番組情報
【MAN WITH A MISSIO10周年特別番組(無料配信)】
配信日時:2020年7月15日(水)21:00配信予定
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MAN WTH A MISSION YouTube
SPACE SHOWER TV YouTube

■リリース情報
『MAN WITH A “BEST” MISSION』
2020年7月15日(水)発売
【初回生産限定盤】(特典DVD付):3,429円(+税)
【通常盤】(CDのみ):2,929円(+税)

<CD> (初回生産限定盤・通常盤共通)
01. Change the World(2020 NHKサッカーテーマ曲)
02. Rock Kingdom feat. 布袋寅泰
03. Remember Me
04. Raise your flag
05. Take Me Under
06. Memories
07. Get Off of My Way
08. higher
09. FLY AGAIN 2019
10. Dive
11. Emotions
12. Hey Now
13. database feat.TAKUMA(10-FEET)
14. Dead End in Tokyo
15. Take What U Want
16. Seven Deadly Sins
17. My Hero

<DVD>(初回生産限定盤のみ)
Chasing the Horizon World Tour 2018/2019 ~JAPAN Extra Shows~
2019.05.22 @ 横浜アリーナ

01. Take Me Under
02. database
03. Dog Days
04. DON’T LOSE YOURSELF
05. Left Alive
06. Remember Me
07. FLY AGAIN 2019

TOWER RECORDS全店(オンライン含む/一部店舗除く)
オリジナルdポイントカード+オリジナルA5サイズノート
初回生産限定盤
通常盤

HMV全店(HMV&BOOKS online含む/一部店舗除く)、全国のローソン・ミニストップ店頭Loppi端末
オリジナルマルチクリアポーチ
初回生産限定盤
通常盤

TSUTAYA RECORDS(一部店舗除く)/TSUTAYAオンラインショッピング(予約のみ)
オリジナルカレンダー入りB3ポスター
初回生産限定盤
通常盤

楽天ブックス
オリジナルアクリルキーホルダー
購入はこちら

▼楽天ブックス(ファミリーマート受け取り限定)
オリジナルレコード型コースター ※楽天ブックス特典のオリジナルアクリルキーホルダーは対象外となります
購入はこちら

Sony Music Shop
オリジナルクリアファイル
初回生産限定盤
通常盤

Amazon
初回生産限定盤(特典なし)
通常盤(特典なし)

応援店特典
オリジナルステッカー
対象店舗はこちら

映画『MAN WITH A MISSION THE MOVIE -TRACE the HISTORY-』
2020年8月19日(水)発売
【Blu-ray】¥5,556(+税)
【DVD】¥5,093(+税)

<収録内容>Blu-ray/DVD共通
本編78分+特典10分
■本編
■特報、予告編
■映画『MAN WITH A MISSION THE MOVIE -TRACE the HISTORY-』公開記念ナビ
狼たちの10年の軌跡に迫る見どころ徹底ガイド

<先着予約購入特典>
チケットホルダー
※特典は無くなり次第終了となりますので、お早めにお求めください。

■関連リンク
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