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J-POPと洋楽、一番の違いは? 亀田誠治とJUJUが“大サビ”の効果を語る

リアルサウンド

13/12/2(月) 8:00

 音楽プロデューサーの亀田誠治がJ-POPのヒット曲を分析するテレビ番組『亀田音楽専門学校』(NHK Eテレ)の第9回が11月28日、23時25分より放送された。

 同番組は、亀田が校長、小野文惠NHKアナウンサーが助手を務め、毎回さまざまなアーティストがゲスト出演する全12回の教養番組。今回のゲスト講師にはシンガーのJUJUが登場。亀田とともに「ダメ押しのメロディー学」について講義した。

 小野が、長く海外で過ごした経験を持つJUJUに、海外から見た” J-POP”像を尋ねると「ポピュラー・ミュージックは世界中にあるけれど、ジャパニーズ・ポピュラー・ミュージックは日本でしか作れない、独特な音楽だと思います。だから大好きです」と、J-POPの特殊性に触れた。

 亀田は、そんなJ-POPには「ダメ押しのメロディー」というべき巧妙なテクニックがあると言い、そのひとつである「大サビ」の説明を開始した。

ダメ押しのメロディー学その1:大サビ

 大サビとは曲の後半で、最後のサビの前に挿入される、独自のメロディーのこと。繰り返し出てきたサビとは違う、新しいメロディーが出てくることで、最後のサビをより新鮮に、印象的に聴かせられるテクニックだ。いきものがかりの「風が吹いている」では、「たくされた“今”がある 歩むべき道がある」という歌詞のところが大サビにあたる。

 亀田によると大サビは「結婚式でいうところのお色直し」で、起承転結の転にあたる部分。音楽番組だと演奏時間が短いため、大サビはカットされることがままあり、有名曲でも意外とその存在に気付かないことも多いのだとか。また、JUJUは「曲っていうひとつの物語を読み進めていくにあたって、一番のサビと最後のサビって感情が違ってくるんですよね。どんどん盛り上がっていく。大サビで繰り返しじゃない、違うメロディーで歌うことによって、最後のサビでドーンと盛り上がれる。すごい大きな跳び箱を飛ぶ時の、踏み切り台のようなもの」と、その効果を語った。

 また、J-POPの「基本構造」として、以下の形を提示。

1番(平歌+サビ)→2番(平歌+サビ)→大サビ→最後のサビ

 このようにJ-POPでは1番から最後のサビまで“起承転結”がしっかりと作られている。いっぽう洋楽だと「基本構造」は以下になる。

バース(verse、平歌にあたる)→コーラス(chorus、サビや大サビにあたる)

 洋楽は、以上の2つのメロディーラインを繰り返すシンプルな曲がほとんど。亀田は洋楽の特徴として「合理的に作られていて、まずバースの部分で、J-POPならサビで言うようなことをすべて言いきっちゃっている。そしてコーラス部分には、大サビに当たるような“別のメロディー感”がある」と説明。J-POPでは「コーラスの持つ“別メロディー感”を、大サビに持ってきて、(最後のサビへの)ジャンプ台として開発しなおした」として、そのきめ細かな手法を称えた。

JUJUが選ぶ「大サビ」の名曲

 JUJUは大サビの名曲としてまず、Mr.Childrenの「Tomorrow never knows」を選択。「大サビの効用ってなんだろうって考えると、まずは自分がカラオケで歌っていてアガる曲なんですよね。この曲はカラオケで歌っていて、大サビが来ると“うわーっ!”てなる」と、身振り手振りを交えながら力説した。亀田は「いい大サビの定義は、ちゃんとジャンプ台になっていること。アガった後にすごくしっとり聞かせる場所があるとか、そこに大サビを置いた意味があるといい」と、補足した。

 続いては、椎名林檎の「ギブス」を紹介。同曲の大サビについて「それまで4月のことなんか歌っていないのに、大サビで『また4月が来たよ。同じ日のこと思い出して』って歌うのが印象的。すごく抽象的な表現なんですけど、そこに込められた思いがメロディーとともに襲い掛かってくる」と、含みを持たせた表現を絶賛した。また、小野が「こういう素敵な曲から、もしも大サビがなかったら……」というと、JUJUは「なんて寂しいことを思いつくんですか!? 大サビがあることによって、魅力が250%くらいになっているのに」といって、“大サビ抜き”で同曲を実演することを拒否。感情たっぷりに大サビを歌い上げ、小野に「もしこの大サビがなかったらっていうのは、もういいです」といわしめた。

 最後はYUKI の「JOY」を紹介。JUJUは「この曲の歌詞には『ああしたい、こうしたい』っていう、直接的な表現が多い。でも大サビで急に抽象的になる。『かしの木が揺れる日は、すぐに思い出してね、あたしを』って。なにがあったんだろう、と思わせる。わたしはこの曲で、何回も泣いたことがある」と説明。亀田は「それまでキャッチ―な言葉で歌っていたのが、大サビにきたら急に抽象的なことを言って、聴き手に考えさせることで曲に引き込んでいる」と同曲の大サビを解説した。

ダメ押しのメロディー学その2:一行返し

 亀田は、ダメ押しのメロディー学の2つめのテクニックとして、「一行返し」について解説。DREAMS COME TRUEの「未来予想図II」の最後のフレーズ、「ほら 思ったとうりに かなえられてく」が、同じメロディーで二度繰り返されていることを指摘した。

 小野が、J-POPで頻出するこの手法について「こういうのってよくありませんか?」と訊くと、亀田は「先ほど大サビを“お色直し”っていったけど、同じように結婚式で例えると、一行返しは、新婦が最後に両親にお手紙と花束を渡すシーンと同じで、一番の泣かせどころなんです」と、この手法が鉄板である理由を説明した。また、JUJUは「一回目の時は相手に伝えるんですけど、二回目の時は自分の中の決意として歌っています」と、一行返しに込めた思いを語った。

 番組の後半では亀田がベース、JUJUがボーカルを務めるスペシャルバンドでJUJUの「やさしさで溢れるように」を披露、大サビと一行返しの効果をしっかりと確認できる演奏となった。

 亀田は総括として「ダメ押しのメロディー学として、大サビと一行返しを説明しましたが、サビのために大きなメロディを付けて、最後のサビをもう一度美味しく味わっていただきたいという大サビは、やはり日本人ならではのおもてなし。一行返しには、最後の一行を、心をこめてしっかりと伝えようという思いがあります。この2つがあると名曲度があがりますよね」と語った。

 亀田音楽学校、次回12月5日の放送では「玉手箱のマイナー術」について講義する予定だ。
(文=編集部)

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