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『鬼滅の刃』累計1億部突破なるか? 最新21巻は鬼殺隊と鬼、それぞれの“正義”描く

リアルサウンド

20/7/13(月) 8:00

週間ベストセラー【コミックス】ランキング(7月7日トーハン調べ)
1位『鬼滅の刃』(21) 吾峠呼世晴 集英社
2位『鬼滅の刃』(21)シールセット付き特装版 吾峠呼世晴 集英社
3位『約束のネバーランド』(19) 白井カイウ(原作)/出水ぽすか(作画) 集英社
4位『僕のヒーローアカデミア』(27) 堀越耕平 集英社
5位『空母いぶき』(13) かわぐちかいじ/惠谷治(原案協力) 小学館
6位『鬼滅の刃』(20) 吾峠呼世晴 集英社
7位『Dr. STONE』(16) 稲垣理一郎(原作)/Boichi(作画) 集英社
8位『ブラッククローバー』(25) 田畠裕基 集英社
9位『空母いぶき GREAT GAME』(1) かわぐちかいじ/八木勝大、潮匡人(協力)/惠谷治(原案協力) 小学館
10位『キングダム』(58) 原泰久 集英社

 よくも悪くも今回の結果は見る前からわかっていたともいえるのだが、7月7日トーハン調べの週間ベストセラーランキング、「コミックス」のジャンルの1位・2位は、ご覧のとおりの『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴)21巻の通常版と特装版である(いずれも7月3日発売)。なんでも同書の特装版を含めた初版発行部数は300万部で、電子版を含めたシリーズ累計発行部数は8000万部を突破したのだという。この勢いを持続できれば(するだろう)、最終巻となる23巻が出る頃には、累計1億部突破も夢ではないかもしれない。

 また、同日に発表された「ノベルス」のランキングでは、『鬼滅の刃 風の道しるべ』(吾峠呼世晴[原作]/矢島綾/集英社)が1位、「児童書」のランキングでは、『鬼滅の刃 ノベライズ~炭治郎と襧豆子、運命のはじまり編~』(吾峠呼世晴[原作]/松田朱夏/集英社)が同じく1位と、他のジャンルでも「鬼滅ブランド」の強さをあらためて世に知らしめる結果となった(「総合」ランキングでも前者は1位、後者は7位である)。

※以下、『鬼滅の刃』21巻のネタバレあり

 さて、話を『鬼滅の刃』の21巻に戻すが、この巻を読んでもっとも印象に残るのは、鬼舞辻󠄀無惨というキャラクターの“悪の魅力”ではないだろうか。前巻までは珠世によって動きを封じられていた彼が、ついに今巻では解き放たれる。

関連:【画像】鬼舞辻無惨と炭治郎が表紙に登場した2巻

 そして無限城の一角で、主人公の竈門炭治郎と「水柱」の冨岡義勇にこんなことをいうのだった。「お前たちは 生き残ったのだから それで充分だろう(中略)私に殺されることは 大災に遭ったのと 同じだと思え」と。つまり、自分は天変地異のようなものであり、地震や台風によって身内が殺されたとしても、それを恨む人間などいないだろうというわけである。これはかなり強引な「悪の論理」ではあるが、一理ある、といえないこともない。そして、無惨はさらにこんな言葉を炭治郎たちに突きつけるのだった。「鬼狩り(鬼殺隊)は異常者の集まり」であると。

 この言葉を聞いた炭治郎は怒り、無惨のことを「存在してはいけない生き物だ」と思うが、読者の心はわずかに揺らぐことだろう。たしかに、「狩られる側」にしてみたら、復讐の鬼と化し、怪しげな呼吸法を使い、異形の刀で自分たちの首を切りにくる鬼殺隊の剣士たちは、血に飢えた殺戮者――つまり「異常者」にしか見えないかもしれない。

 それでは、ここで無惨がいっていることはすべて正しいのかといえば、そんなこともあるまい。なぜならばそもそも彼は大災などではないからだ。そう――鬼舞辻無惨という「最初の鬼」は、あくまでも殺意を持って人間を食らう悪の根源である(いうまでもなく、地震や台風には殺意も悪意もない)。そして、一方の鬼殺隊の剣士たちだが、ある意味では彼らも「人であること」を捨てた「人外の者」だといえなくもないのだが、かといって「人の心」まで失っているわけではない。少なくとも「異常者」ではないだろう。鬼狩りでありながら、人の心を捨て、鬼になってしまった黒死牟や獪岳を除いて……。

 なお、この点――すなわち「正義と悪」や「正常と異常」の線引きについては、吾峠呼世晴は明確なビジョンを持ってクライマックスシーンを描いており(詳しくは最終巻となる23巻を読まれたい)、それがこの『鬼滅の刃』という作品を、近年よくある、“本当の悪”が誰なのかわからないまま終わる物語とは一線を画す傑作にした。

 いずれにせよ、この21巻は、あらためて「狩る側」と「狩られる側」のそれぞれの“正義”を読者に突きつけたという意味で、極めて興味深い巻であるといえるだろう。

(文=島田一志)

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