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マックス・チャンがMVP!? 『大脱出3』から感じるシルヴェスター・スタローンら作り手たちの意地

リアルサウンド

19/9/26(木) 20:00

 我らがスタローンの最新作が見参! 衝撃の『大脱出3』(2019年)である。自ら監獄に囚人として潜入・脱獄してしまうことで、逆に刑務所のセキュリティの問題点を指摘する“脱獄コンサルタント”のレイ・ブレスリン(シルヴェスター・スタローン)。シュワちゃんとW主演でハイテク監獄から脱獄した『大脱出』(2013年)、そして謎のサイバーパンク刑務所に挑んだ『大脱出2』(2018年)。今回は東欧の通称“悪魔砦”に人質奪還のため突撃する! 相棒は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)のデイヴ・バウティスタ、そして現在香港で最も輝いている功夫スター、『イップ・マン外伝 マスターZ』(2018年)のマックス・チャン! 悪魔砦がナンボのもんか! こっちは最強の3人やぞ!

参考:『大脱出2』は「!?」が連発する謎の映画? シルヴェスター・スタローンの転がる人生を再確認

 ……と、いきなり話が変わってくるのだが、今回はもう脱出ですらない。謎のロボット“ガリレオ”と対決した『2』の時点で、これは相当にキテいるなという感じはあったが、今回は完全に吹っ切れている。作ってる人たち、そして何よりスタさんの「とにかく終わらせるぞ!」という決意、「何とか見せ場を作るぞ!」という映画人としての矜持が画面から伝わってくるようだ。マックス・チャンの起用も作り手の決意の表れだろう。本作はスタローン主演だが、個人的にMVPはマックス・チャンだったように思う。

 マックス・チャンは日本での知名度はまだ低いが、今の香港で最も熱いアクション・スターだ。あの宇宙最強ドニー・イェンと互角に渡り合える動きもさることながら、女性のスタントを務めていた経験があるほど細いシルエット、顔がイイとしか言いようがない顔面偏差値の高さで、これから世界的にブレイクすることは必至だろう。本作のスタッフたちも、そんなマッチャンのポテンシャルに映画を何とかする活路を見出したのだろう。「とにかくこのメチャメチャ動ける顔がイイ人をカッコよく撮るばい! そしたらきっと何とかなるけん!」と言わんばかりに、本作はマッチャンが予想以上に暴れまわる。

 登場から、蝶ネクタイに黒のスーツ、武器は傘という100点満点のマッチャン的スタイリッシュ扮装で登場。軽いアクションを披露してスタローン/バウティスタと合流し、悪魔砦へ突撃。現地にはマッチャンと戦うために生まれてきたような、ガタイがよくて動ける人が待機していた。ちなみに演じているのはダニエル・バーンハード。『マトリックス リローデッド』(2003年)のエージェント・ジョンソン役や、『ジョン・ウィック』(2014年)でキアヌと戦った格闘スターだ。ここでマッチャンVSバーンハードのタイマンを見ることができるのだが、これがまぁ~~カッコいい。『マスターZ』は詠春拳という「直線」の動きを重視した拳法を使っていたのだが、本作では「円」の動きを使って体格で勝る相手を翻弄・破壊していく。相手の動きを華麗にさばくマッチャン、前髪が垂れるマッチャン、綺麗な蹴りを打つマッチャン……。そしてブルース・リー時代からの伝統であり、全功夫スターの憧れムーブ“かかってこいの手招き”を決めるマッチャン。ここはスタッフやマッチャンの「やるなら今しかねぇ」という熱量を感じるファイト・シーンに仕上がっている。

 もちろんスタさんも、マッチャンに映画を任せっぱなしではない。「向こうがマスターZなら、オレはランボーでロッキーさ」と言わんばかりに、ナイフ片手の残虐ゲリラ戦&鉄拳説教で魅せてくれる(バウティスタも打った相手が全焼する超強力銃をブッ放す)。最後のスタさんの台詞も味わい深い。最大の問題点として、こうした個性豊かな大暴れが始まるのが映画の終盤なので、その間けっこうな“待ち”が発生することだが……律儀にずっと出演してくれる50CENTことカーティス・ジャクソンに免じて、今回は目をつぶろうと思った。

 本作はいろいろな意味で問題がある映画だ。現場で何かが起きていたのは間違いないだろう。しかし、そんな混乱の中だからこそ「ばってん、ここだけは絶対に守るばい!」というスタさんを筆頭にした作り手たちの意地を強く感じる。楽な仕事なんてない。仕事が上手くいくとも限らない。けれども頑張った跡は残る。日々の生活で忘れがちなことを垣間見たような気がした。(加藤よしき)

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